どこか、安心したみたいな声へ。
虹色と金色の光が、激しく重なり合う。
──ドクン。
春と結衣の心が、直接響き合った。
結衣の苦しさ。
怖さ。
そして。
“春を失いたくない”という想い。
全部、春へ流れ込んでくる。
春は息を呑んだ。
こんなにも。
自分のことを想ってくれていたなんて。
結衣は涙をこぼしながら、春の服を握る。
「……もう嫌なの」
声が震えていた。
「春くんが傷つくの見るの」
春は胸が締め付けられる。
結衣は泣きそうな顔のまま続けた。
「一人で無茶して」
「平気な顔して」
「でも本当は、ちゃんと痛いのに……!」
春は言葉を失う。
見抜かれていた。
ずっと。
結衣は春を見ていた。
誰よりも近くで。
結衣は涙を拭う。
「もっと頼ってよ……」
その言葉が。
まっすぐ春の心へ刺さった。
春はずっと、“守る側”でいようとしてた。
一人で抱え込んで。
誰にも心配かけないように。
でも。
結衣は違った。
傷ついた春を見るたび、苦しくなっていた。
春はゆっくり笑う。
少し困ったみたいに。
でも。
すごく優しい顔で。
「……ごめん」
結衣は首を振る。
「謝ってほしいんじゃない」
涙目のまま、春を見る。
「隣にいてほしいの」
静かな声。
でも。
その一言だけで、春の胸が熱くなる。
春はゆっくり、結衣の頭へ手を置いた。
「……いるよ」
結衣の瞳が揺れる。
春は続けた。
「ちゃんと隣にいる」
その瞬間。
結衣の涙が、ぽろっと落ちた。
嬉しかった。
怖かった心が、少し軽くなる。
その時。
水竜が再び苦しそうに暴れた。
──グォォォォ!!
黒いコードが、さらに侵食していく。
ゼルヴァが叫ぶ。
「限界だ! 完全暴走するぞ!」
ミアも焦る。
「今止めなきゃ、第二の鍵ごと壊れる!!」
春は剣を握る。
結衣も杖を構える。
そして。
二人は自然に手を重ねた。
今度は、迷いなく。
暖かい。
お互いの鼓動が伝わる。
《感情共鳴率──最大到達》
《新術式解放》
結衣の魔導書が、まばゆく輝いた。
ページへ浮かぶ文字。
《Twin Bloom》
《Heart Resonance》
エリシアが目を見開く。
「心の完全同期……!?」
春は結衣を見る。
結衣も、春を見る。
怖い。
でも。
今なら、乗り越えられる。
一緒なら。
春が笑った。
「行こう」
結衣も涙を拭いて笑う。
「うん!」
その瞬間。
虹色と金色の光が、水面いっぱいへ広がった。
花が咲く。
星が舞う。
優しい光が、水竜を包み込む。
水竜の黒い瞳が揺れる。
『……ア……』
春が叫ぶ。
「もう苦しまなくていい!!」
結衣も叫ぶ。
「絶対助けるから!!」
巨大な光が、空へ駆け上がった。
そして。
水竜を縛っていた黒いコードが、少しずつ砕け始める。
──パリン。
──パリン。
光の粒が、水面へ落ちていく。
水竜の咆哮が、少しずつ変わった。
苦しみじゃない。
どこか、安心したみたいな声へ。




