リリィ「プロポーズですぅぅぅ!?」
翌朝。
春たちは、クロノアの中央広場へ集まっていた。
空にはまだ、薄く亀裂が残っている。
完全には消えていない。
でも。
昨日より少しだけ、小さくなっていた。
リリィが空を見上げる。
「閉じてきてるです?」
ミアが腕を組む。
「たぶん、“七つの鍵”が関係してる」
結衣は魔導書を抱えながら、不安そうに聞いた。
「その鍵って、どこにあるの?」
魔導書がひとりでに開く。
ページへ、地図が浮かび上がった。
世界各地へ散らばる、七つの光点。
その一つが、赤く点滅している。
レオナがニヤリと笑う。
「最初の目的地ってわけだ」
春が地図を見る。
場所は──。
《花霧の森》
クロノアから北にある、巨大森林地帯。
でも。
ゼルヴァの表情は険しかった。
「……厄介な場所だな」
春が聞く。
「知ってるのか?」
ゼルヴァは頷く。
「あそこには、“幻花の魔女”がいる」
リリィが震える。
「魔女ですぅぅ!?」
レオナは逆にワクワクしていた。
「強そう!」
「戦う前提やめて!?」
結衣は春へ小声で聞く。
「いつもこんな感じなの?」
春は苦笑する。
「だいたい」
結衣は少し笑った。
まだ怖い。
でも。
この騒がしい空気が、不思議と安心できた。
その時。
春の腕の中で寝ていた黒猫ルナが、ぴくっと耳を動かした。
「……来る」
全員が止まる。
次の瞬間。
──ゾワッ。
森の方角から、とんでもない魔力が流れてきた。
花びらが舞う。
風が止まる。
そして。
遠くの空へ、巨大な紫色の花が咲いた。
ミアが顔色を変える。
「嘘……」
ゼルヴァが低く呟く。
「もう始まってる」
その瞬間。
結衣の魔導書が勝手に開いた。
ページへ、血みたいな赤文字が浮かぶ。
《第一の鍵、覚醒》
《適合者確認》
《花霧の魔女──エリシア》
春が目を見開く。
「適合者?」
その時だった。
広場へ、一人の少女が現れる。
いつの間にか。
誰も気づかなかった。
長い銀髪。
紫色の瞳。
黒いドレス。
そして。
頭には、小さな花冠。
少女は静かに笑った。
「やっと見つけた」
その視線は、真っ直ぐ春へ向いていた。
結衣が少しムッとする。
「……誰?」
少女は優雅にお辞儀した。
「私はエリシア」
風が舞う。
花びらが揺れる。
そして。
彼女は微笑みながら言った。
「世界樹の継承者様」
「私と結婚してください♡」
──沈黙。
春「…………へ?」
結衣「は?」
レオナ「ぶはっ!!」
ミア「急展開すぎる!!」
リリィ「プロポーズですぅぅぅ!?」
ゼルヴァは無言で空を見上げた。
「面倒になったな……」




