新たな冒険が、再び始まった。
「「リンク・ブルーム!!」」
──パァァァァァァァ!!!
虹色と金色の光が、夜空いっぱいへ広がった。
巨大な花の魔法陣。
その中心で。
春の世界樹剣と、結衣の星杖が共鳴する。
魔物が苦しそうに叫ぶ。
『アァァァァ!!』
黒いコードが暴れ出す。
だが。
今度の光は違った。
破壊じゃない。
暖かい。
優しい光だった。
結衣が杖を握りながら叫ぶ。
「大丈夫だから!!」
涙目なのに、必死だった。
「もう苦しまなくていいから!!」
春も剣を振る。
「深淵なんかに負けるなぁぁ!!」
その瞬間。
光が魔物を包み込んだ。
──パァァァ……
黒いコードが、一つずつ消えていく。
魔物の赤い瞳が揺れた。
『……ア……』
巨大だった身体が、少しずつ縮んでいく。
闇が剥がれ落ちる。
そして。
最後に残ったのは。
小さな黒猫だった。
「……え?」
全員が固まる。
黒猫はふらふらしながら地面へ落ちる。
春が慌てて受け止めた。
「猫!?」
リリィが飛びつく。
「かわいいですぅぅぅ!!」
レオナが笑い転げる。
「ラスボス感どこいった!?」
ミアも困惑していた。
「深淵魔獣が……猫?」
黒猫は弱々しく春を見る。
赤かった瞳は、綺麗な蒼色へ変わっていた。
そして。
小さな声で呟く。
「……たすけてくれて、ありがと」
全員沈黙。
春が目を丸くする。
「喋った」
「喋ったですぅぅ!!」
黒猫は疲れたみたいに、春の腕の中で丸くなった。
結衣がしゃがみ込む。
「この子……深淵に操られてたんだ」
ゼルヴァが静かに頷く。
「恐らくな」
黒猫は目を閉じる。
「ボクの名前……ルナ……」
そのまま眠ってしまった。
春は苦笑する。
「なんか増えたなぁ……」
レオナがニヤニヤする。
「お前、主人公体質すぎるだろ」
結衣が小さく笑った。
そして。
ふと春を見る。
春は黒猫を優しく撫でていた。
戦う時はかっこいいのに。
こういう時、すごく優しい。
結衣の胸がまたドキッとする。
春が気づく。
「ん?」
結衣は慌てて目を逸らした。
「な、なんでもない!」
レオナがニヤァっと笑う。
「青春だなぁ〜」
「うるさい!!」
街には少しずつ笑顔が戻り始めていた。
でも。
空の亀裂は、まだ完全には閉じていない。
ゼルヴァが夜空を見上げる。
「……門は広がっている」
ミアも真剣な顔になる。
「深淵界とこの世界の距離が近づいてる」
空気が静かになる。
まだ終わっていない。
むしろ。
本当の戦いはこれからかもしれない。
その時。
結衣の魔導書が静かに光った。
ページがひとりでに開く。
そこに浮かび上がった文字。
《星花の巫女へ告ぐ》
《七つの鍵を集めよ》
《さもなくば、世界は深淵へ沈む》
春たちは顔を見合わせた。
レオナが頭を抱える。
「また旅かよ!?」
リリィが元気よく飛び上がる。
「冒険ですぅぅ!!」
結衣は不安そうに春を見る。
「……どうするの?」
春は少しだけ驚いた。
でも。
すぐに笑う。
「決まってる」
世界樹剣を肩へ担ぐ。
仲間たちを見る。
みんな、もう同じ気持ちだった。
春は空を見上げた。
夜空の向こう。
まだ見ぬ世界が広がっている。
怖い。
でも。
ワクワクしていた。
春は結衣へ手を差し出す。
「行こう」
結衣はその手を見る。
少しだけ照れながら。
でも。
嬉しそうに笑った。
「……うん!」
そして。
“世界樹の継承者”と“星花の巫女”。
新たな冒険が、再び始まった。




