──パァァァァァン!!
──パァァァァァン!!
金色の魔力が丘いっぱいに広がった。
風が吹き荒れる。
花びらが舞う。
春たちは思わず目を覆った。
リリィが転がる。
「飛びますぅぅぅ!!」
レオナが笑いながら踏ん張る。
「すげぇぇ!!」
そして。
光が収まる。
そこには──。
尻もちをついた結衣がいた。
髪が少しふわふわになっている。
制服も、ところどころ白銀の魔法衣へ変わっていた。
でも本人は半泣きだった。
「なにこれぇぇぇぇ!!」
春が吹き出す。
「ははっ!」
結衣が真っ赤になる。
「笑わないでよ!!」
その瞬間。
漆黒の魔物が飛びかかってきた。
『紋章保持者、確保』
春が剣を構える。
「来るぞ!」
だが。
結衣の杖が勝手に光った。
《初級術式:スター・フラワー》
結衣が慌てる。
「え!? ちょっ──」
──ドォォォォン!!
巨大な光弾が発射された。
魔物へ直撃。
大爆発。
丘の木々が吹き飛ぶ。
全員が沈黙した。
黒煙の向こう。
魔物が地面へ埋まっていた。
レオナが口を開ける。
「……初心者?」
ミアも引いていた。
「火力おかしい」
結衣本人が一番驚いていた。
「わ、私がやったの!?」
リリィが目をキラキラさせる。
「すごいですぅぅ!!」
結衣は完全に混乱していた。
「いやいやいや!! 私ただの高校生なんだけど!?」
春が苦笑する。
「俺も最初そうだった」
「えっ」
結衣は春を見る。
その目に、少し安心が浮かんだ。
同じなんだ。
春も、突然ここへ来たんだって。
その時。
埋まっていた魔物が、ゆっくり立ち上がった。
身体が再生していく。
黒いコードが蠢いていた。
ゼルヴァが低く呟く。
「厄介だな」
魔物が結衣を睨む。
『星花の魔導書』
ミアがハッとする。
「まさか……!」
結衣の杖と魔導書を見る。
古代紋章。
金色魔力。
ミアの顔色が変わった。
「それ、“星花の巫女”の力だよ」
結衣が固まる。
「……巫女?」
レオナが肩をすくめる。
「また面倒そうなの来たな」
「またって言わないで!?」
結衣がツッコむ。
少しだけ。
空気が和らいだ。
だが。
ゼルヴァだけは険しい顔をしていた。
春が気づく。
「どうした?」
ゼルヴァは黒いコードを見る。
「あれは深淵王の残滓だ」
空気が変わる。
春の顔から笑みが消える。
世界を滅ぼしかけた存在。
その欠片が、まだ残っている。
魔物は不気味に笑った。
『星花の巫女を回収する』
『世界樹と星花が揃えば、門は再び開く』
春が目を見開く。
「門……?」
その瞬間。
結衣の魔導書が勝手にページを開いた。
そこに浮かぶ、一枚の絵。
黒い宇宙。
巨大な“扉”。
そして。
扉の向こうから伸びる、無数の黒い手。
ノアが震える。
「これ……」
ミアが小さく呟く。
「深淵界」
静寂。
風だけが吹いていた。
結衣は不安そうに春を見る。
「……私、どうなるの?」
その声は。
強がってたけど、震えていた。
知らない世界。
突然の力。
化け物。
普通の女子高生なら、怖くて当然だった。
春は少しだけ昔の自分を思い出す。
異世界に憧れていた頃。
でも。
実際に来てみたら。
怖いことばかりだった。
何度も泣きそうになった。
それでも。
仲間がいたから、ここまで来れた。
春は結衣へ手を差し出す。
「大丈夫」
結衣が春を見る。
春は笑った。
優しく。
でも、強く。
「俺たちがいる」
その瞬間。
結衣の目から、ぽろっと涙がこぼれた。
「……っ」
怖かった。
ずっと。
でも。
その言葉だけで、少し救われた。
リリィが慌てる。
「わわ!? 泣かないでですぅぅ!」
レオナが笑う。
「歓迎会でもするか!」
「この状況で!?」
ミアがツッコむ。
ゼルヴァはため息をついた。
「騒がしい連中だ」
でも。
その口元は少しだけ笑っていた。
夕日が、花畑を赤く染める。
世界はまだ平和じゃない。
新しい脅威も現れた。
だけど。
春は思った。
きっと大丈夫だと。
一人じゃないから。
そして。
“世界樹の継承者”と、“星花の巫女”。
新たな物語が、静かに始まろうとしていた。




