春は完全に固まっていた。
春は完全に固まっていた。
「……結衣?」
結衣も目を丸くする。
「春くん!?」
しばらく、お互い動けない。
リリィが小声で聞く。
「知り合いです?」
春は頷く。
「同じクラスのやつ……」
レオナがニヤニヤする。
「へぇ〜?」
「その顔やめろ!!」
春がツッコむ。
結衣は混乱していた。
制服姿のまま、辺りを見回す。
花畑。
異世界の街。
空飛ぶ列車。
そして。
春の隣に並ぶ個性的すぎる仲間たち。
「え、え、え!? なにこれ!? コスプレ!? 映画!?」
ミアが呟く。
「反応が普通だ……」
結衣は春の肩を掴む。
「春くん! ここどこなの!?」
春は困った顔になる。
「説明が難しいんだけど……異世界?」
結衣が真顔になる。
「現実逃避?」
「違う違う違う!!」
その時。
結衣の胸の紋章が強く輝いた。
──パァァァ!!
風が吹き荒れる。
結衣が苦しそうに胸を押さえる。
「っ……!」
春が驚く。
「結衣!?」
紋章から、金色の光が溢れた。
そして。
空中へ、一冊の巨大な本が現れる。
古びた魔導書。
ページが勝手に開いていく。
リリィが目を丸くする。
「本が浮いてますぅぅ!?」
ゼルヴァが目を細めた。
「……召喚書」
結衣は完全にパニックだった。
「えぇぇぇぇ!?」
ページが光る。
すると。
空から大量の光文字が降り始めた。
古代文字。
魔法陣。
結衣の周囲を回転する。
ミアが青ざめる。
「ちょっと待って……この魔力量……!」
次の瞬間。
──ドォォォォン!!
丘の向こうで大爆発が起きた。
全員が振り向く。
空間が裂けている。
黒い穴。
そこから、巨大な魔物が這い出てきた。
四足。
漆黒の毛。
赤い瞳。
咆哮だけで木々が揺れる。
リリィが涙目になる。
「平和終わりましたぁぁ!!」
レオナが槍を構える。
「早ぇよ!!」
魔物は真っ直ぐ結衣を見た。
『発見』
機械みたいな低い声。
春が目を見開く。
「喋った!?」
魔物の身体には、黒いコードが絡みついていた。
ゼルヴァの顔が険しくなる。
「……深淵の残滓か」
深淵王は消えた。
だが。
その力の欠片が残っている。
しかも。
そいつは結衣を狙っていた。
結衣が震える。
「な、なんなの……」
春は前へ出る。
世界樹剣を抜いた。
「大丈夫」
結衣の前へ立つ。
「今度は俺が守る」
結衣は春を見上げる。
高校では、どこか夢見がちで。
少し変わってた春。
でも。
今の春は違った。
本当に戦ってきた人の目をしていた。
魔物が咆哮する。
『紋章保持者を回収する』
結衣の魔導書がさらに輝く。
ページが高速でめくれる。
結衣が涙目で叫ぶ。
「どうしたらいいのぉぉ!?」
その瞬間。
魔導書のページが止まった。
そこに浮かび上がる文字。
《契約開始》
春たちが息を呑む。
結衣の金色の紋章が輝く。
そして。
魔導書から、巨大な光の魔法陣が展開された。
結衣が無意識に手を伸ばす。
すると。
光の中から、一振りの杖が現れた。
白銀の杖。
花の装飾。
そして。
先端には、小さな星が輝いていた。
結衣はぽかんと呟く。
「……え?」
その瞬間。
魔力が大爆発した。
──パァァァァァン!!】




