それから
それから──。
世界は少しずつ変わっていった。
機械に支配されていた都市は解放され。
クロノアの街にも、人々の笑顔が戻ってきた。
壊れた建物は、みんなで直した。
空中レールも復旧され。
スカイライン・ゼロは、今日も元気に空を走っている。
ガルドが叫ぶ。
「新型エンジン完成だぁぁ!!」
ミアが頭を抱える。
「また爆発しないでしょうね!?」
──ドォォォン!!
「したぁぁぁ!?」
相変わらずだった。
リリィは街で人気者になっていた。
小さな子供たちに囲まれている。
「リリィちゃん飛んでー!」
「いきますぅぅ!!」
くるくる飛び回るたび、歓声が上がる。
レオナは訓練場で大暴れしていた。
「もっと来い!!」
兵士たちが泣いていた。
ユナは静かに剣を教えている。
アイリスは花畑を作っていた。
黒花と虹花が混ざる、美しい庭園。
そして。
ゼルヴァは──。
「働け」
「えぇぇぇ!?」
なぜか復興作業をしていた。
春が笑う。
「元魔王なのに?」
ゼルヴァは真顔で答える。
「人手不足だ」
レオナが爆笑する。
「似合わねぇぇ!!」
でも。
ゼルヴァも少しだけ笑っていた。
そんなある日。
春は、街外れの丘へ来ていた。
風が気持ちいい。
花畑が揺れている。
ノアも隣に座っていた。
青空を見上げながら、小さく呟く。
「平和だね」
春は頷く。
「ああ」
しばらく沈黙。
そして。
ノアが春を見る。
「……元の世界に帰りたい?」
春は少し驚く。
元の世界。
16歳の高校生だった頃。
異世界に憧れていた、普通の少年。
春は空を見上げた。
「前は帰りたいって思ってた」
でも。
今は違う。
仲間がいる。
守りたい世界がある。
春は笑った。
「もう少し、ここにいたいかな」
ノアも優しく笑う。
その時だった。
──パァァ……
春の胸の紋章が、突然光った。
「!?」
ノアが驚く。
空に巨大な花の紋章が浮かび上がる。
そして。
空間がゆっくり裂けた。
ゼルヴァたちも駆けつけてくる。
ミアが目を見開く。
「次元反応!?」
裂け目の向こう。
見えたのは──。
“現代日本”。
車。
ビル。
信号。
見慣れた世界だった。
春は息を呑む。
「……日本」
リリィがぽかんとする。
「はわわ……」
レオナは興味津々だった。
「未来都市じゃねぇか!」
「いや俺の世界では普通なんだよ!?」
その時。
裂け目の奥から、一人の少女が落ちてきた。
「きゃぁぁぁ!?」
春は慌てて受け止める。
制服姿。
黒髪。
どう見ても日本人の女子高生だった。
少女は涙目で周囲を見る。
「え……ここ、どこ?」
春たちは顔を見合わせる。
少女は春を見た。
そして。
驚いたように呟く。
「……え?」
春も固まる。
なぜなら。
その少女は。
春のクラスメイト──。
朝比奈 結衣だったからだ。
そして。
結衣の胸にも、小さな“光る紋章”が浮かんでいた。




