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静寂。

静寂。


世界が、止まったみたいだった。


さっきまで空を覆っていた黒い闇は消え。


崩壊していた空間も、少しずつ光へ戻っていく。


虹色の花びらが舞っていた。


リリィがぽかんと口を開ける。


「……勝った?」


レオナが笑う。


「みたいだな」


その瞬間。


世界樹神装機の各部から火花が散った。


──バチバチッ!!


ミアが顔色を変える。


「まずい!! 機体限界!!」


警報が鳴り響く。


『WORLD BLOOM反動により、機体崩壊開始』


春が目を見開く。


「えぇぇ!?」


レオナがツッコむ。


「最後までそれかよ!!」


オメガの声が静かに響く。


『皆さんは脱出してください』


春がハッとする。


「お前は!?」


少し沈黙。


そして。


オメガは優しく答えた。


『私はアーク・ギアと一体化しています』


ミアが震える。


「そんな……」


ノアが涙を流した。


「嫌だ!!」


オメガは静かだった。


でも。


その声はもう、冷たくなかった。


『私は長い間、間違え続けました』


巨大な機械都市が崩れ始める。


歯車が停止していく。


『ですが最後に、“繋がる意味”を知れた』


春は拳を握る。


「なら一緒に帰ろう!!」


オメガは少し笑った。


『ありがとうございます』


その瞬間。


中枢空間の奥に、巨大な脱出ゲートが開いた。


『脱出ルートを確保しました』


ゼルヴァが低く言う。


「時間がない」


春は悔しそうに歯を食いしばる。


ノアは泣きながら叫ぶ。


「お兄ちゃん!!」


オメガは静かにノアを見た。


その銀色の瞳が、優しく細くなる。


『……すまなかった』


ノアは首を振る。


涙が止まらない。


「違う!!」


春はオメガを見る。


本当は助けたい。


でも。


もう機体全体が崩壊していた。


ゼルヴァが春の肩へ手を置く。


「託されたんだ」


春は俯く。


悔しい。


でも。


オメガは最後に笑った。


『春』


春が顔を上げる。


『世界を、咲かせてください』


その瞬間。


中枢空間が大きく崩壊した。


──ゴゴゴゴゴ!!


ミアが叫ぶ。


「脱出するよ!!」


春たちは走り出す。


ノアも涙を流しながら前へ進む。


背後では。


世界樹神装機が静かに崩れていく。


そして。


オメガの声が最後に響いた。


『ありがとう』


──ドォォォォォォォン!!!!


巨大な光。


アーク・ギア全体が、虹色へ包まれた。


春たちは脱出ゲートへ飛び込む。


光。


浮遊感。


そして──。


次に目を開けた時。


春たちは、青空の下へ倒れていた。


暖かな風。


広い草原。


静かな空。


黒い侵食は、どこにもない。


リリィが空を見上げる。


「……終わったです?」


ミアも呆然としていた。


空にはもう、赤い機械空間はない。


ただ青空だけが広がっている。


レオナが寝転がりながら笑う。


「生きてるなぁ……」


ユナは静かに目を閉じた。


アイリスも小さく微笑む。


ノアだけは空を見上げて、涙を流していた。


春はゆっくり立ち上がる。


風が吹く。


その時。


空から、一枚の銀色の花びらが落ちてきた。


春はそれを掴む。


暖かかった。


まるで。


「……オメガ」


春が呟くと。


花びらは、優しく光って消えた。


そして。


世界には、静かな朝が訪れた。


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