春は最後のレバーを引いた。
春は最後のレバーを引いた。
──ガコン。
その瞬間。
世界樹神装機の全身へ、虹色の光が走る。
──ドクン。
まるで巨大な心臓が脈打ったみたいだった。
オメガの声が響く。
『WORLD BLOOM──起動』
次の瞬間。
機体の背中が展開した。
巨大な光の花弁。
一枚。
また一枚。
空いっぱいへ広がっていく。
深淵王の無数の目が揺れる。
『……何だ、それは』
春は操縦桿を握る。
全身へ、とんでもない力が流れ込んでいた。
熱い。
苦しい。
でも。
暖かい。
仲間たちの想いが繋がってくる。
リリィの優しさ。
レオナの熱さ。
ユナの強さ。
ミアの願い。
ノアの涙。
ゼルヴァの孤独。
全部。
全部が、一つになっていく。
世界樹神装機が、静かに剣を掲げた。
巨大な虹色の花が咲く。
深淵王が怒号を響かせた。
『やめろォォォォ!!』
無数の黒腕。
黒槍。
闇の津波。
全てが襲いかかる。
だが。
世界樹神装機の周囲へ、光の花びらが舞った。
──パァァァ……
闇が消えていく。
侵食が止まる。
腐った空間が、修復されていく。
深淵王が初めて恐怖を見せた。
『何故だ』
『何故、世界は壊れぬ』
春は叫ぶ。
「誰かが支えてるからだ!!」
世界樹剣が限界まで輝く。
ゼルヴァが静かに言った。
「行け、春」
レオナが笑う。
「ぶちかませ!!」
ユナが頷く。
「終わらせよう」
ミアも叫ぶ。
「未来を取り戻せぇぇ!!」
ノアは涙を流しながら願う。
「みんなを……!」
春は立ち上がった。
巨大な世界樹神装機も、同時に立ち上がる。
虹色の翼が広がる。
その姿は。
まるで、本当に世界樹の化身だった。
深淵王が絶叫する。
『私は終焉だ!!』
巨大な黒球を生み出す。
惑星サイズ。
世界を消すための闇。
春は前を見た。
怖い。
でも。
もう逃げない。
春は叫んだ。
「終焉なんかに負けるかぁぁぁぁ!!」
世界樹神装機が突撃する。
虹色の光が尾を引く。
深淵王の闇と衝突。
──ドォォォォォォォォン!!!!
宇宙みたいな空間が崩れる。
光と闇がぶつかり合う。
春は歯を食いしばる。
「うおおおおおお!!」
押し返せない。
強すぎる。
その時。
仲間たちの声が重なった。
「春!!!」
世界樹が脈打つ。
さらに光が溢れる。
そして。
春の胸の紋章が、完全な形へ変化した。
《開花》。
春は目を見開く。
世界が見えた。
傷ついた人たち。
笑顔。
泣き顔。
希望。
全部。
全部が繋がっていた。
春は涙を浮かべながら叫ぶ。
「これが……世界だぁぁぁ!!」
その瞬間。
世界樹神装機の剣が、巨大な花へ変わった。
《WORLD BLOOM》
虹色の光が宇宙みたいな空間を埋め尽くす。
そして。
──ズァァァァァァァァァァァン!!!!
一閃。
深淵王を、真っ二つに切り裂いた。
深淵王が絶叫する。
『ァァァァァァァァ!!!』
黒い闇が崩壊する。
無数の目が砕け散る。
世界を覆っていた深淵が、光へ還っていく。
そして最後に。
深淵王は、どこか寂しそうに呟いた。
『……暖かい』
その身体が、静かに消えていった。




