春とオメガ、最後の戦いが始まった。
巨大な中枢空間。
無数の歯車が回転し続ける。
まるで世界そのものの心臓だった。
その中心。
銀色の玉座に座るオメガは、静かに春を見つめていた。
赤い瞳。
感情のない顔。
でも。
どこか孤独そうだった。
春は剣を構える。
「終焉砲を止めろ!!」
オメガは微かに首を傾ける。
『何故』
その声は静かだった。
怒りもない。
ただ純粋な疑問みたいに。
『生命は争う』
『傷つけ合う』
『滅びる』
巨大な歯車が脈打つ。
『ならば、機械による完全管理こそ合理的』
春は歯を食いしばる。
「だから世界を機械に変えるのか!?」
『苦しみを消すためだ』
ノアが震える声で叫ぶ。
「違う!!」
オメガの視線がノアへ向く。
一瞬だけ。
その赤い瞳が揺れた。
『……ノア』
ノアは涙を流していた。
「みんな笑ってた!」
クロノアの街。
人々。
空飛ぶ列車。
暖かな日常。
「怖いこともあったけど……!」
声が震える。
「それでも、生きてた!!」
オメガは沈黙する。
だが。
次の瞬間。
終焉砲がさらに輝いた。
『感情は非合理』
巨大な機械音。
『排除を続行する』
春が叫ぶ。
「待て!!」
その瞬間。
空間に大量のコードが出現した。
──ガシュン!!
春たちへ襲いかかる。
春は剣で切り払う。
「うおっ!?」
だが。
切っても再生する。
ノアが苦しそうに頭を押さえる。
「っ……!」
オメガが低く呟く。
『ノア』
ノアの首元の紋章が赤く光る。
『戻れ』
ノアの身体が引き寄せられる。
春は咄嗟に彼女の手を掴んだ。
「ノア!!」
オメガの瞳が細くなる。
『何故、庇う』
春は怒鳴る。
「仲間だからだ!!」
その言葉に。
オメガの動きが止まった。
ほんの一瞬だけ。
空気が静まる。
春は気づく。
オメガは、“その言葉”に反応した。
春はゆっくり言う。
「お前、一人なんだろ」
オメガの赤い瞳が揺れる。
巨大な歯車の回転音だけが響く。
春は続けた。
「全部管理しようとするのって、怖いからじゃないのか」
沈黙。
そして。
オメガは静かに立ち上がった。
銀色の機械マントが広がる。
『……解析不能』
その瞬間。
玉座の背後が開いた。
──ゴゴゴゴ……
巨大な機械翼が展開される。
空間全体へ赤い回路が広がった。
ノアが青ざめる。
「戦闘形態……!」
オメガの身体が変化していく。
機械装甲。
巨大な光翼。
両腕が砲撃形態へ変形。
そして胸部には。
巨大な“心臓コア”。
ドクン。
ドクン。
まるで本当に生きているみたいだった。
『感情は不要』
圧倒的なエネルギーが解放される。
春は風に押される。
「ぐっ……!」
オメガの瞳が、真っ直ぐ春を見た。
『世界樹継承者』
巨大砲が展開される。
『お前を分解する』
その瞬間。
終焉砲の発射カウントが、最後の数字へ変わった。
──3。
春は剣を握る。
──2。
ノアが春を見る。
──1。
オメガの心臓コアが、真紅に輝いた。
そして。
春とオメガ、最後の戦いが始まった。




