その瞳には、もう迷いはなかった。
爆炎が夜空を染める。
黒花のシルエットは、しばらく静かに浮かんでいた。
だが。
次の瞬間。
──ズァァァァン!!
巨大な黒い斬撃が爆炎を切り裂いた。
リリィが目を輝かせる。
「ゼルヴァですぅぅ!!」
爆煙の中から。
黒コート姿のゼルヴァが飛び出してくる。
少し煤だらけだった。
でも。
普通に生きていた。
春が思わず笑う。
「マジで帰ってきた……!」
ゼルヴァは列車へ着地する。
「当然だ」
レオナが吹き出す。
「化け物かよ」
「否定はできんな」
ガルドが豪快に笑った。
「気に入ったぜ、お前ら!」
だが。
和んだ空気は長く続かなかった。
──ゴゴゴゴ……
列車が大きく揺れる。
ミアが前を見る。
その顔が険しくなった。
「……見えてきた」
春も窓の外を見る。
そして息を呑んだ。
空の果て。
巨大な機械都市。
《機械神核アーク・ギア》
惑星みたいだった。
無数の歯車。
浮遊砲台。
赤い回路。
中心には、巨大な塔が空を貫いている。
その頂上。
赤い光が脈打っていた。
春の胸の紋章が反応する。
──ドクン。
オメガ。
そこにいる。
ノアが春の腕の中で小さく震えた。
「……う……」
春が驚く。
「ノア!?」
ゆっくり目を開ける。
透き通る青い瞳。
でも。
どこか怯えていた。
ミアが駆け寄る。
「ノア!!」
ノアはミアを見る。
涙が浮かんだ。
「……お姉ちゃん」
ミアは強く抱きしめた。
「よかった……!」
春たちは少し安心する。
だが。
ノアの顔色はまだ悪い。
彼女は震えながら呟いた。
「逃げて……」
全員が止まる。
ノアは苦しそうに頭を押さえた。
「オメガは……もうすぐ……」
その瞬間。
ノアの首元に、赤い紋章が浮かび上がった。
ミアが青ざめる。
「まさか!」
ノアが苦しみ始める。
「うぁぁ……!」
赤い光。
オメガの声が響く。
『接続対象確認』
春が目を見開く。
「遠隔操作!?」
ノアの瞳が一瞬だけ赤く染まる。
そして。
彼女は震える声で言った。
「……来る」
次の瞬間。
アーク・ギア全体が変形を始めた。
──ガコン、ガコン、ガコン!!
巨大都市の外壁が開く。
その内部から。
超巨大砲が現れた。
リリィが固まる。
「……え?」
砲口のサイズが異常だった。
街どころじゃない。
山一つ吹き飛ばせそうな規模。
ガルドの顔から笑みが消える。
「終焉砲……」
ミアが震える声で呟く。
「あれを撃たれたら、この空域全部消える……!」
オメガの声が冷たく響く。
『反抗因子を完全排除します』
巨大砲へエネルギーが集まり始める。
空が赤く染まる。
春は歯を食いしばった。
間に合わない。
逃げ切れない。
その時。
ノアが春の服を掴んだ。
「……中枢へ」
春が彼女を見る。
ノアは涙を流していた。
「オメガには……“心臓”があります」
ゼルヴァが目を細める。
「心臓?」
ノアは頷く。
「そこを止めれば……全部止まる」
ミアがハッとする。
「中枢核……!」
ガルドが前を睨む。
「だが、どうやって突っ込む?」
その瞬間。
スカイライン・ゼロの警報が鳴った。
──WARNING WARNING.
前方。
大量の敵影。
機械戦艦群。
空を埋め尽くすほどの大軍勢だった。
レオナが笑う。
「ははっ」
槍を回す。
「派手になってきたな」
春は世界樹剣を握る。
空には終焉砲。
前には大艦隊。
そして。
その奥に、オメガ。
春は静かに息を吸った。
「突破するぞ」
その瞳には、もう迷いはなかった。




