リリィが絶叫する。
「行くぞぉぉぉ!!」
春は空中へ飛び出した。
風が身体を叩く。
遥か下にはクロノアの街。
落ちれば終わり。
でも。
怖くなかった。
仲間がいる。
春は世界樹剣を握りしめる。
虹色の光が夜空へ広がった。
機械竜が赤い瞳を光らせる。
『脅威対象接近』
胸部コアが開く。
巨大砲撃。
──ズゴォォォ!!
春は空中で剣を振る。
「はぁぁぁ!!」
風の斬撃。
砲撃を切り裂く。
爆炎の中を突き進む。
だが。
機械竜の速度も異常だった。
鋼鉄の翼が振るわれる。
──ガギィィン!!
春は剣で受け止めた。
重い。
腕が痺れる。
「ぐっ……!」
その時。
レオナが列車の上から飛び出した。
「一人でカッコつけんな!!」
炎槍が機械竜の顔面へ突き刺さる。
──ドォォン!!
機械竜が怯む。
ユナも空中レールを駆け上がった。
蒼い剣閃。
「右翼を斬る!」
──ザシュ!!
鋼鉄の翼が裂ける。
機械竜がバランスを崩した。
ミアがライフルを構える。
「春!! 今!!」
青雷弾。
──バシュゥゥン!!
胸部装甲へ直撃。
コアが露出する。
赤い光。
脈打つ巨大心臓みたいだった。
春の紋章が反応する。
──ドクン。
その瞬間。
春の頭へ、声が流れ込んだ。
──たすけて。
春が目を見開く。
「え……?」
機械竜の中から。
誰かの声。
苦しそうな少女の声だった。
機械竜が突然暴れ始める。
『エラー』
『精神波混線』
ゼルヴァが気づく。
「内部に誰かいる!」
ミアの顔色が変わる。
「まさか……!」
春は叫ぶ。
「操縦されてるのか!?」
ミアが悔しそうに頷いた。
「オメガは人を機械へ繋ぐんだ!」
春の胸が締め付けられる。
まただ。
また誰かが苦しんでいる。
機械竜の赤い瞳から、涙みたいな光が零れた。
──たすけて。
春は剣を握る。
壊すだけじゃ駄目だ。
助けないと。
その時。
世界樹剣が強く輝いた。
フローラの声。
──繋いでください。
セレスも続ける。
──命を切るのではなく、解放するのです。
春は息を呑む。
「解放……」
機械竜が再び熱線を放とうとする。
時間がない。
春は空中で剣を構えた。
虹色の花びらが舞う。
ゼルヴァが目を細める。
「春?」
春は笑った。
「ちょっと、新しいことやる!」
レオナがニヤリとする。
「いい顔してんな!」
春は一直線に機械竜へ突っ込んだ。
機械竜が咆哮する。
『排除!!』
巨大な口が開く。
だが。
春は止まらない。
「届けぇぇぇぇ!!」
世界樹剣が虹色に咲いた。
その斬撃は。
機械竜を“切らなかった”。
胸部コアへ、優しく突き刺さる。
──パァァァァ……
暖かい光。
そして。
機械竜の赤い瞳が、大きく揺れた。
『……エラー』
『接続解除』
コアから黒いコードが弾け飛ぶ。
悲鳴。
機械竜の中から、一人の少女が浮かび上がった。
白い髪。
機械の拘束具。
眠るような顔。
春は目を見開く。
「!!」
ミアが叫ぶ。
「ノア!!」
その瞬間。
機械竜の身体が崩壊を始めた。
──WARNING.
『制御喪失』
『墜落開始』
リリィが絶叫する。
「今度は落ちますぅぅぅ!!」




