『排除を開始する』
「逃げるよぉぉぉ!!」
ミアの叫びと同時。
──ゴゴゴゴゴ!!
地下通路が大きく傾いた。
天井が崩れる。
蒸気管が爆発し、熱風が吹き荒れる。
「うわぁぁ!?」
春たちは全力で走り出した。
リリィは半泣きで飛び回る。
「毎回逃げてませんかぁぁ!?」
「気のせいだ!!」
春も叫び返す。
その瞬間。
後方で大爆発。
──ドォォォン!!
衝撃波が迫る。
ゼルヴァが黒花結界を展開した。
「急げ!」
ユナが先頭で道を切り開く。
落下する鉄骨を斬り飛ばす。
レオナは炎で瓦礫を吹き飛ばした。
ミアが叫ぶ。
「出口まであと少し!!」
だが。
最後の直線で。
──ガァァァン!!
巨大な鉄扉が落下した。
完全封鎖。
リリィが絶望する。
「終わりましたぁぁ……」
その時。
春が前へ出た。
「いや、終わってない!」
世界樹剣が虹色に輝く。
ゼルヴァが隣に立つ。
「合わせろ」
春は頷いた。
二人同時に剣を構える。
「「はぁぁぁぁ!!」」
虹色と黒花。
二つの斬撃が交差する。
──ズバァァァン!!
巨大鉄扉が真っ二つに裂けた。
「行けぇぇ!!」
全員が飛び込む。
その瞬間。
背後の地下空間が完全崩壊した。
──ドォォォォォォン!!!
春たちは地上へ転がり出る。
「ぐはっ!?」
アスファルトの上。
夜風。
蒸気。
全員が息を切らしていた。
しばらく誰も動けない。
そして。
リリィがぽつりと呟く。
「……生きてます?」
レオナが笑った。
「生きてるな」
春も苦笑する。
「ほんと毎回ギリギリだな……」
その時。
街の遠くで歓声が上がった。
春たちが顔を上げる。
地下からの爆発が止まり。
空を覆っていた警報灯も消えていく。
ミアが静かに息を呑む。
「……止まった」
彼女の瞳が震える。
「バルディオンが管理してた制圧区画……解放されたんだ」
すると。
周囲の建物の扉が、少しずつ開き始めた。
中から人々が出てくる。
怯えた顔。
疲れ切った顔。
でも。
みんな、空を見上げていた。
赤い警報が消えた夜空を。
一人の子供が呟く。
「……助かったの?」
ミアは涙を堪えるように笑った。
「ああ」
その瞬間。
街中から歓声が広がった。
春たちは少し驚く。
自分たちが、誰かを救えた。
その実感が、ようやく湧いてきた。
だが。
ゼルヴァだけは、静かに空を見ていた。
春が気づく。
「どうした?」
ゼルヴァは目を細める。
「……来る」
その瞬間。
空が真っ赤に染まった。
──WARNING.
巨大な機械音声が、世界中へ響き渡る。
ミアの顔色が変わる。
「まさか……!」
空の雲が裂ける。
その奥から。
超巨大な“目”が現れた。
赤い機械の瞳。
都市より巨大。
歯車の輪が何重にも回転している。
無機質な声が響いた。
『反乱因子を確認』
『世界樹継承者を確認』
春の胸の紋章が反応する。
──ドクン。
ミアが震える声で呟いた。
「……オメガ」
機械の魔王。
ついに、その存在が姿を現した。
巨大な機械の目が、春を見下ろす。
そして。
『解析完了』
冷たい声。
『排除を開始する』
その瞬間。
空そのものが、機械へ変わり始めた。




