「魔王は無茶をする生き物だ」 「勝手に種族化するな!!」
──ドォォォォォォォン!!!
凄まじい爆発。
赤い光が地下空間を飲み込んだ。
衝撃波で壁が砕け、蒸気管が破裂する。
「きゃぁぁ!?」
リリィが転がる。
春は咄嗟にアイリスを庇った。
熱風。
閃光。
そして。
数秒後。
煙の向こうで、巨大な影がゆっくり崩れ落ちた。
──ズゥゥゥン……
機神将バルディオン。
その赤い瞳が消えていく。
『機能……停止……』
最後にそう呟き。
巨体は完全に沈黙した。
静寂。
ミアが呆然と口を開ける。
「……倒した」
レオナが笑う。
「やるじゃねぇか!」
リリィは泣きながら飛び回っていた。
「生きてますぅぅぅ!!」
春は息を切らしながら剣を下ろす。
ゼルヴァも静かに黒花解放を解除した。
鎧が霧のように消えていく。
ミアはまだ信じられない顔だった。
「バルディオンを……本当に……」
その時。
──ピキッ。
嫌な音。
春が顔を上げる。
「……え?」
バルディオンの胸部コア。
完全に砕けたはずのそこが、赤く点滅していた。
ミアの顔色が変わる。
「まずい!!」
『自爆シークエンス起動』
地下全体へ警報が鳴り響く。
──WARNING WARNING.
『炉心暴走まで残り120秒』
リリィが絶叫する。
「最後っ屁ですぅぅぅ!!」
地下通路が崩れ始める。
蒸気が噴き出し、天井に亀裂が走る。
ミアが叫ぶ。
「急いで!! このままじゃ都市区画ごと吹き飛ぶ!!」
春は周囲を見る。
出口は遠い。
間に合わない。
その時。
ゼルヴァが静かにコアを見る。
「……なるほど」
春が嫌な予感を覚える。
「ゼルヴァ?」
ゼルヴァは小さく笑った。
「暴走エネルギーを、別空間へ飛ばせばいい」
ユナが目を見開く。
「そんなこと可能なのか!?」
「理論上はな」
でも。
ゼルヴァの顔色は少し悪い。
春は気づく。
「無茶だろ、それ」
ゼルヴァは肩をすくめた。
「魔王は無茶をする生き物だ」
「勝手に種族化するな!!」
レオナがツッコむ。
だが。
時間がない。
残り90秒。
地下の崩壊が加速する。
ミアが悔しそうに拳を握る。
「私たちじゃ止められない……!」
春はコアを見る。
暴走する赤い光。
その時。
胸の紋章が反応した。
──パァ……
春はハッとする。
世界樹の力。
“繋ぐ力”。
春はゼルヴァを見る。
そして笑った。
「一人でやるなよ」
ゼルヴァが少し目を見開く。
春は世界樹剣を掲げた。
「みんなでやるぞ!!」
レオナが笑う。
「それでこそだ!」
ユナも頷く。
「力を合わせる」
アイリスが春の隣へ立つ。
リリィも飛び上がる。
「いきますぅぅ!!」
ミアもライフルを握り直した。
「……ほんと変な連中」
でも。
彼女も笑っていた。
春たちは円陣のように立つ。
中心には暴走コア。
春は剣を突き立てた。
「世界樹よ!!」
虹色の光が広がる。
ゼルヴァの黒花魔力。
ユナの蒼光。
レオナの炎。
アイリスの黒花。
リリィの精霊光。
ミアの雷光。
全部が、一つへ繋がっていく。
そして。
空間に巨大な花の紋章が咲いた。
『炉心暴走まで30秒』
春は叫ぶ。
「押し返せぇぇぇ!!」
全員の力が解放される。
──パァァァァァァン!!!
暴走コアが光へ包まれた。
空間が裂ける。
その向こうに、星空みたいな異空間が見えた。
ゼルヴァが低く呟く。
「今だ」
春は歯を食いしばる。
「うおおおおお!!」
そして。
暴走エネルギーが、異空間へ吸い込まれていく。
──シュゥゥゥゥ……
赤い光が消える。
警報が止まった。
静寂。
その直後。
地下全体が崩れ始めた。
ミアが叫ぶ。
「逃げるよぉぉぉ!!」




