# エピソード ## 「世界樹の光」
# エピソード
## 「世界樹の光」
黒雪が空を覆う。
祭りの灯りは消えた。
人々は震えている。
子どもたちは泣いている。
誰もが空を見上げていた。
巨大な黒い魔法陣。
まるで夜空そのものが落ちてくるようだった。
ヴァルグは静かに言う。
──『終わりだ』
その声と同時に。
黒雪が降り始めた。
触れた建物が凍る。
花が枯れる。
光が消える。
絶望だった。
結衣が歯を食いしばる。
「こんなの……!」
リリィも震えている。
「止められないですぅ……!」
ミアが叫ぶ。
「街の人たちを避難させて!」
レオナは剣を握る。
だが。
誰の目にも分かった。
このままでは間に合わない。
その時だった。
春が一歩前へ出る。
静かに。
真っ直ぐ。
結衣が振り向く。
「春くん……?」
春は空を見上げる。
そして。
小さく呟いた。
「守りたい」
世界樹剣が反応する。
虹色の光。
優しい光。
暖かい光。
剣の中から声が聞こえた。
それは。
これまで春が助けてきた人たちの想い。
仲間たちの願い。
そして。
結衣の笑顔。
アリアの涙。
リリィの優しさ。
全部だった。
──ドクン。
剣が鼓動する。
ヴァルグが初めて表情を変えた。
『その力は……』
世界樹剣が空へ掲げられる。
春は叫んだ。
「俺は!」
「みんなと笑える未来を守る!!」
その瞬間。
世界が光った。
──ゴォォォォォ!!
巨大な世界樹の幻影が現れる。
祭りの街より大きい。
雪山より高い。
黄金の葉が舞う。
人々が息を呑む。
結衣の瞳が潤む。
「綺麗……」
アリアも見上げていた。
黒銀の羽根が揺れる。
リリィは涙目。
「春おにーさん……!」
世界樹の枝が広がる。
そして。
黒雪を受け止めた。
──バキバキバキ!!
黒雪が砕ける。
闇が裂ける。
ヴァルグの瞳が揺れた。
初めてだった。
深淵六王が。
驚いている。
春はさらに剣を握る。
「みんな!!」
仲間たちが頷く。
結衣が前へ出る。
「咲いて──Promise Bloom!!」
花が咲く。
アリアが羽を広げる。
『私は、ここにいる!』
黒銀の羽根が舞う。
リリィの光。
ミアの魔法。
レオナの剣。
全員の力が一つになる。
そして。
春は剣を振り下ろした。
「これが──」
「俺たちの未来だぁぁぁ!!」
虹色の光が天へ走る。
巨大な一撃。
世界樹の光。
それは黒雪を貫き。
空を裂き。
ヴァルグへ届いた。
──ズドォォォォォン!!
夜空が光に包まれた。
祭りの街。
雪の国。
すべてを照らす光。
やがて。
静寂。
雪が降る。
今度は黒雪じゃない。
白くて優しい雪。
誰もが空を見上げていた。
そして。
光の中で。
ヴァルグが静かに立っていた。
傷ついている。
だが倒れていない。
深淵六王。
その瞳は。
春だけを見ていた。
そして。
小さく笑った。
──『面白い』
その一言を残し。
黒狼と共に闇へ消えていった。
戦いは終わった。
祭りは守られた。
人々から歓声が上がる。
「助かった!」
「英雄だ!!」
「ありがとう!!」
春は力が抜ける。
その場へ座り込んだ。
結衣が駆け寄る。
「春くん!」
春は笑った。
「終わったな」
結衣も笑う。
でも。
次の瞬間。
ぽろっと涙が落ちた。
「よかった……」
怖かった。
本当に。
春は少し驚く。
そして。
優しく言った。
「ただいま」
結衣は泣きながら笑う。
「おかえり」
その様子を見て。
レオナはニヤニヤ。
ミアはため息。
リリィは号泣。
アリアは少し微笑む。
ルナだけが真顔だった。
「恋愛イベント成功」
「うるさい!!」
雪祭りの夜。
笑い声が戻る。
だが。
誰も気づいていなかった。
遠い深淵の玉座で。
さらに恐ろしい存在が。
静かに目を開いたことを――。
### 次回
## 「深淵王、目覚める」




