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# 「黒雪のヴァルグ」

# エピソード


## 「黒雪のヴァルグ」


雪祭りの空。


黒雪が吹き荒れていた。


綺麗だった灯りは消え、

人々の悲鳴だけが響く。


巨大黒狼が咆哮する。


──ガァァァァァ!!


その一撃だけで、

街の雪像が砕け散った。


リリィが震える。


「強すぎるですぅ……!」


ミアも顔をしかめる。


「あれ本当に六王……!?」


ヴァルグは退屈そうに街を見下ろしていた。


まるで。


人間なんて興味ないみたいに。


その態度が、

春は気に入らなかった。


春は剣を構える。


虹色の光が走る。


「みんな、街を守る!」


結衣が頷く。


「うん!」


アリアも羽を広げた。


黒銀の羽根が舞う。


ヴァルグの赤い瞳が、

静かにアリアを見る。


──『裏切るのか』


アリアの身体が震えた。


昔なら。


この視線だけで動けなかった。


でも。


隣に春がいる。


結衣がいる。


だから。


アリアはヴァルグを睨み返した。


『私はもう、“道具”じゃない』


黒銀の羽根が爆発的に広がる。


ヴァルグが少し目を細めた。


──『感情など、弱さだ』


春が即答する。


「違う」


ヴァルグ。


『……?』


春は剣を握る。


「誰かを守りたいって思えるから、人は強くなれる」


その言葉。


結衣が少し嬉しそうに見る。


アリアの瞳も揺れた。


ヴァルグは静かに笑った。


冷たい笑み。


──『甘いな』


次の瞬間。


黒狼が突撃。


──ドゴォォォ!!


地面が砕ける。


春が飛び込んだ。


「はぁぁぁぁ!!」


虹色の斬撃。


だが。


ヴァルグは片手で止めた。


──ギィン!!


春の目が開く。


「止めた!?」


ヴァルグはつまらなそう。


──『軽い』


そのまま春を吹き飛ばす。


「ぐっ!?」


結衣が叫ぶ。


「春くん!!」


レオナが横から斬りかかる。


「よそ見してんじゃねぇ!!」


だが。


黒雪が刃を止めた。


レオナ。


「なっ!?」


ミアが叫ぶ。


「物理干渉無効!?」


リリィが杖を掲げる。


「なら魔法ですぅ!!」


光弾が放たれる。


だが。


ヴァルグは避けもしない。


黒雪が全部飲み込んだ。


絶望的だった。


強すぎる。


祭りの人々も震えている。


その時。


小さな声が聞こえた。


「……たすけて」


泣いている子ども。


崩れた雪像の下敷きになっていた。


黒雪が迫っている。


結衣は迷わず飛び出した。


「守る!!」


金色の花が咲く。


「咲いて──Promise Bloom!!」


花々が黒雪を押し返す。


でも。


押し切れない。


ヴァルグの力が強すぎる。


結衣の手が震える。


その時。


春が立ち上がった。


傷だらけ。


それでも笑う。


「一人じゃない」


結衣の隣へ立つ。


アリアも来る。


『私も戦う』


レオナが剣を担ぐ。


「やっと燃えてきた!」


リリィが泣きそうな顔で笑う。


「みんなで勝つですぅ!!」


ミアも杖を構える。


「死ぬ気で行くわよ!」


ヴァルグは、

その光景を静かに見ていた。


仲間。


信頼。


絆。


深淵には無かったもの。


だからこそ。


少しだけ。


眩しく見えた。


だが。


ヴァルグは冷たく呟く。


──『……くだらない』


空が黒く染まる。


巨大な黒雪の魔法陣。


街全体を覆うほどの大きさ。


結衣の顔が青ざめる。


「まずい……!」


アリアが息を呑む。


『あれは……街が消える』


春は空を見上げた。


そして。


静かに剣を握る。


「なら止める」


その瞬間。


世界樹剣が、

今までにない輝きを放った。


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