応用。
猛烈な攻撃で盗賊達をぶっ飛ばした直後、エミルの身体が光を放った。同時に脳内にインフォメーションが流れる。
≪スキル『レイジングスティンガー』獲得しました≫
「…やった!!出来たッ…!!」
また一段と強くなった実感に、両拳を見て喜びを噛み締めるエミル。それを見た逸鉄が驚いていた。
「アーッハッハーッ!!あの子、凄いな!?ああいうのは言葉で聞いても、簡単に出来るモノじゃないからね!!」
「エミルは思いが強いんだよ。『信念』と言っても良い。だからこの世界での適正が高いんだ。ただ、強い相手に実戦するとなるとまだまだ難しいだろうけど…」
「キャサリンさんが『感覚』で体現してるとするなら、あの子は『信念』でスキルを体現してるって感じだな~…」
俺達が話しているとエミルが戻ってきた。
「盗賊退治、終わったけどこの後どうするの?」
エミルに聞かれたので、俺達は現在の状況を話した。フィーちゃんと魔界の最北の街に転移したが、魔界通行証を渡されて自力で魔皇城まで来るように言われた事、そしてその道中に盗賊に会った事を説明した。
「…何で転移で行かないの?」
エミルの問いに要と瑠以が答える。
「そのまま転移で行ってもつまらないかなと思って…」
「せっかくだから魔界を観光しながら言った方が良いからね!!」
「…ふーん、そう言われれば確かにそうね」
「エミルはどうする?一旦、戻って皆と訓練を続けるか?」
俺が聞くと考え込むエミル。
「…せっかく来たし、わたしも魔界を見て行こうかな…」
と言う事で、エミルも合流して魔皇城を目指す事になった。捕まえた盗賊達は次の街で引き渡す為に、布で猿轡を掛けて簀巻にして俺が引き摺っていてく事にした。
◇
その頃になってお腹が空いたのか、フラムがお昼寝から起きた。大きくあくびをして、眠そうに周りを見る。
フラムが、エミルを見る。その瞬間、フラムはおっ?と反応した。そして眠そうに目を擦った後に、エミルに笑いかける。
エミルに頭を撫でて貰うと、フラムは嬉しそうに愛嬌を見せる。フラムを撫でつつ、エミルが俺に聞いてくる。
「次の街への目途は付いてるの?」
「…いや、どこに街があるかは分からないんだ。今は取り敢えず南に向かって進んでる感じかな…」
「フラムちゃんがいるんだから、どうにかして夕方までに次の街を確認して向かった方が良いんじゃない?子供に野営はキツイと思うけど…?」
「…あぁ、そうだな」
そう答えたものの、どうするか俺は考えた。ここからどうやって周辺を探るか…だよな…。
「わたしが走ってこの先を見て来ようか?」
「…あ、待って下さい!!わたしがスキルで周辺を確認してみます!!」
走って確認して来ようとする逸鉄を止めた要がスキル『移身伝心』を発動した。
「わたしの転移スキルはプロジェクションパネルマップが出せるんです。まずはこの辺りに、街や村があるか確認してみます…」
そう言いつつ、要は目の前に50インチ程のプロジェクションパネルマップを出す。分かりやすく言うと空間に映像のパネルを出現させた感じだ。
要は慣れた手つきでパネルを操作する。そのパネルの左側を見ると、タグで分けられていて切り換えられるようだ。
星間ルート、惑星内、世界、国家、地域などに分けられている。要は地域のタグをタッチすると、この辺りのマップを表示する。
「…この先は…山岳地帯に入るみたい…」
要がパネルを出しているのが視えるのは、俺と逸鉄、瑠以だけだ。確かにこのまま道なりに進むと森に入り、山を登っていく事になりそうだ。
「…この先に何かあるけど…街、いや規模からすると村かな…?」
パネルを操作しつつ、呟く要。
「…あぁ、確かに見えるな?」
「そうだね。そこに何らかの施設がありそうだね」
俺と逸鉄の言葉に驚く要。
「えっ!?わたしのスキル、視えてるんですかっ!?」
俺と逸鉄は同時に、無言で頷く。驚いたまま、要がエミルを見ると、エミルが苦笑いを見せた。
「そこの異常な二人と一緒にしないでよ(笑)?わたしは視えてないから(笑)!!」
エミルの言葉に笑う要と瑠以。
「…さて、そこの目的地がどんな所か、確認した方が良いと思うけど…ホワイトくん、どうする?」
どうする?って言われてもなぁ…。かなりの距離があるし、山岳地帯だし…そんな事を考えているとフラムが、俺の襟元を引っ張る。
「あぅぁ、あぅぁ!!(パパ、パパ!!) 」
「ん?フラム、どうした?」
「おぉら、おう!!」
「…おぉら、おう?フラムおぉら、おうって…」
「ホワイトさん、フラムちゃんどうしたんですか(笑)?」
瑠以に問われて、フラムの言葉を反芻していた所、俺は気が付いた。
「フラム!!お空、飛ぶ!!…か!?」
俺の答えに、あぅあぅと上機嫌なフラム。
「…空を、飛ぶんですか(笑)?」
「あぁ、飛ぶって言うか『跳躍』スキルね。上に飛んで遠望スキル使ってこの周辺を確認してくるわ」
瑠以の問いに答える俺にみんな笑いが消えて真顔になる。
「…えっ?跳躍って…どこまで飛ぶ気ですか?」
真面目な顔で聞いてくる要。
「それは力の加減に寄るかなw?」
「ホワイトくん、そんなスキルも持ってるのか~(笑)?面白そうだな~。どこまで飛べるのか早く見せて欲しいな(笑)!!」
そんな中、シニスターで俺とある程度活動していた瑠以は驚くふうでもない。エミルは無言で肩を竦めて苦笑いを見せていた。
「…じゃ、ちょっと確認してくる…」
そう言うと俺はフラムを抱っこからおんぶに変える。膝を曲げてスキル跳躍を使って上空に飛んだ。力をセーブしたつもりだったが、予想以上に飛んでしまったw
上空、三百メートル程だ。目の前に見える山と同じくらいの高さだな。
そして俺はそこから『バードアイ』を使って、要のパネルに映っていた施設を確認する。
確かに小さい砦?の様な建物がいくつか見えた。
上空から見える景色に、フラムはきゃっきゃっと喜んでいる。あんまり楽しそうなのでふと、思い付いた事を実践してみる事にした。
「フラム、このままお空、飛んでみるかw?」
「うぅっ!!(うんっ!!) 」
フラムが乗り気なので、俺は墜落する前に両脚から『スピンエフェクト』を掛けた闘気を出して滑空する。
更に『旋風掌』を併用して方向を変えて、上空を飛んだ。
ある程度の出力で調整しつつ、俺とフラムはア〇ア〇マンの様に空を飛んで目的の集落?上空を旋回した。
俺の背中でフラムが、きゃっきゃっと凄く喜んでいる。上空から集落を確認すると村の様だ。
「よし、フラム。皆のとこに戻るか!!」
「うぅっ!!(うんっ!!) 」
俺とフラムは皆が待っている場所へと飛んだまま、戻った。
◇
「…跳躍だけじゃなくて普通に飛んでましたね(笑)?」
笑いながら言う瑠以。
「あぁ、フラムがすごく楽しそうだったからさ。チョイと思い付いた事を試してみたんだよw!!」
「ホワイトくん、アレどうやったのか教えてくれるかな(笑)?」
「逸鉄も飛んでみたいのかw?」
「当然さッ!!空飛ぶ正義のヒーロー…って、考えただけでカッコいいし、楽しそうじゃないかッ!?」
「…ぁ、あぁ、そうだな…」
余りにも逸鉄の食い付きが凄いので俺は困惑した。しかし禅爺とコイツに教えるとすぐ真似出来そうで怖いんだよなw
一旦、歩くのを止めて、逸鉄に説明する。
「先に断っておくけど、条件が揃わないとかなり難しいって事は理解しといてくれ」
そう言いつつ説明を続ける。
「まずは跳躍である程度の高さまで飛ぶ必要がある。で、さっき飛んで見せたアレは『滑空』だからな?高さがないと成立しない」
俺の説明をうんうんと真剣に聞いている逸鉄。瑠以はそれを見て笑っていたが要は呆れていた。
「…真似してもそんなに簡単には行かないと思うけど…?」
呟く要の隣でエミルが真剣な顔で俺の説明を聞いていた。
…オイっ!!お前も飛ぶ気かよっw!!
心の中で激しく突っ込む俺に、説明を促す逸鉄。
「…あぁ、上空に飛んだ後、『スピンエフェクト』で変形させた闘気をスクリューみたいな要領で回転させて推進力にしたんだ。逸鉄も闘気の変形は出来るよな?」
「うん。出来るよ。一度見せて貰ったからね(笑)!!」
…コイツ、マジで一回見ただけなのに闘気を変形させて闘気ハンド真似やがったからな…。クレアもそうだが、コイツも禅爺も恐ろしいのは修得が異常に早いって事だ。
俺は説明を続ける。
「…ちなみに籠手から出せる風のスキルで方向を変えたんだ。言っとくけど俺は複数のスキルを同時併用可能だから滑空できたんだ。真似するのは絶対におススメしませんw!!」
俺の忠告に笑う瑠以。要はチラッとエミルを見て言う。
「…色々条件がそろわないと出来ないから、あくまでも参考程度に聞いた方が良いと思うよ…?」
しかし、そんな要の忠告もエミルには聞こえていない。自分の中にあるスキルを確認してどうすれば上空に飛べるか?飛んだ後の推進力をどうするかを真剣に考えていた…。
逸鉄とエミルは人間的にタイプは違うが、共通点は不可能を考えていない、という事だろう。
この後、逸鉄が少し高い場所から飛行を試みて、頭から地面に突っ込んだ…。
「逸鉄さん、あの高さじゃ無理ですよ(笑)!!」
地面に突っ込んだ逸鉄を見て笑う瑠以。
「…ほらね。こうなるからやめといた方が良いよ?」
要がエミルに忠告するものの、逸鉄の失敗を見たエミルは更に考え込んでいた…。
◇
何度、失敗しても諦めない逸鉄と、それを見て自分もスキルを使って何とか飛べないかと考えているエミル。
笑いが止まらない瑠以と呆れる要。取り敢えず、二人は放っておいて瑠以と要と一緒に昼食の準備を始めた。
アイテムボックスから大きなレジャーシートを出して道の端に敷いた。その上に卓袱台を置く。ふかふか座布団を二枚重ねてフラムを座らせた。
どんな時でも、白い温かいご飯が食べられるように、炊いたご飯をパックに詰めてアイテムボックスに大量に入れてある。それを出して卓袱台の上に置いた。
後はノースラウフで買い込んだ調理済みの肉、野菜、調味料を出しておく。
更に、ご飯と同じく大量に作ってストックしてあるスープを出してカップへと入れた。
チラッと二人を見ると、まだやってる…。そんな二人に、要が呼び掛ける。
「はいはい!!二人ともそこまでにして下さい!!お昼にしますよ!!」
その言葉に、お腹が空いている事に気が付いたのか、二人とも素直に席に着いた。
「…おぉ、白いご飯か!!凄いな!!しかもスープまで付いて…これ、ホワイトくんが持って来たの?」
「そうだよ?あ、取り敢えずちゃんと合掌して頂きます、からな?」
「うんうん、分かってます。この世界で白いご飯とスープ、味付け肉?と野菜が食べられるなんて幸せよね?」
肉を食べながら、エミルが瑠以と要に話している。
教皇領にいたエミルも食事はかなり質素だったようだ。同じく、帝国でひもじい思いをしていた瑠以と要の二人も、エミルの話に同意していた。
「ところで、どうやったら飛べるかな?」
エミルのヤツ、まだそんな事言ってんのかよw!!
「何か思いついたら、またアドバイスするよ。だから今は食べる事に集中しようなw?」
「…ぁ、あぁ、そうね…」
「…あ、ホワイトん、何か分かった事があったらわたしにも教えてくれるかな(笑)?」
…コイツもかw!!
逸鉄は後ろ向きのまま、メットを外してご飯とスープ、肉と野菜を食べていた。
「ホワイトさん、この後は山岳地帯に向かうんですよね?」
「あぁ、そのつもりなんだけど、ある事を思い出したからここからは『それ』に乗って行こうかと思ってる…」
食事をしながら俺は瑠以と話をする。
「…乗っていくって事は、それって乗り物ですか?」
「うん。ご飯食べた後に持ってくるよ」
俺はフラムにご飯と肉を食べさせながら要に説明した。
「…ふーん。乗り物か…。今更、何が出て来ても驚かないけどね…」
そう言いつつ、エミルはスープを啜っていた。
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