魔界にもヤツらはいる。
俺とフラム、フィーちゃんは、逸鉄、瑠以、要を連れて、魔界大陸の北にある人狼国の街、ノースラウフにいた。
前回、ここに来た時は『神の使徒』蹴鞠御前と人狼の魔王フェンが戦闘していた為に、街は壊滅しかけていたはずだが…。
…しかし…。
俺達が転移で降り立つと街は完全に修復され、再び人狼族が集まり生活をしていた。フィーちゃん曰く、魔族の一角、魔小人族が戦闘終了後にすぐに修復を開始したそうだ。
しかし、あれだけ破壊されていたのに、この短期間で完全に修復するとは…。街を見た逸鉄も不思議そうだ。
「魔小人族は大地と木の精霊を操るでな?ついでに高位錬金術も使えるからの。それらを併有して短期間で修復するんじゃ」
…だ、そうです。
その際、三角帽子を被った小人のキャラクターが建物のあちこちに描かれているのは魔小人族の御愛嬌だそうで…。
俺達はそこから魔界の中心点、南極にある魔皇城を目指す事になった。始まりは昨日の午前中に遡る。
◇
俺達は、訓練後にフィーちゃんと話して魔界へ行く時期を相談したのだが…。
「別に行きたければすぐ行けばいいじゃろ?」
と、軽く言われたのだ。近く、魔皇城がある魔皇都『マノシュート』で音楽フェスがあるそうだ。
…魔界で音楽フェス…。そんなのあるんだ…w
ちなみに武闘大会もまだ先との事なので、取り敢えず一度、瑠以と要を連れて煉に会いに行こう、と言う事になった。
そのついでに、魔界を探検したがっていた逸鉄も連れて行く事になった。
「主!!わらわも付いて行きますぞッ!?」
クレアも付いて来る事を表明したのだが、フィーちゃんによって即、却下された。
「クレアはダメじゃっ!!」
「むッ!!フィーよ、何故なのだッ!?」
「…おんし、まさか千八百年程前に魔界で大暴れしたのを忘れとるんか?」
フィーちゃんによると、何千年か前に、クレアが魔界に現れて暴れ回ったらしい。転生前のフィーちゃんが暴れるクレアを止めたそうだ…。それ以降、クレアは魔界への出入りは禁止されているとの事ですw
…ホント、迷惑なヤツだな。そりゃ、出入り禁止にもなるわッw!!
クレアは渋々、他の皆と留守番をする事になった。
そして俺達は今、フィーちゃんに通行証を渡されて置き去りにされた状態だ。
「おんしら、自力で魔皇城まで来るんじゃ。待っておるからの!!」
そう言われて、仕方なく俺達は魔皇城を目指して南へと進む事になったのだ…。取り敢えず、俺達は食料などを買い込みノースラウフの街を出た。
俺達は道なりに南へと向かう。フラムは俺が抱っこしている間に、お昼寝を始めてしまった。俺はフラムを抱っこして歩きつつ、ふと気づいた事を要に聞いた。
「要の転移能力なら、さっきフィーちゃんのスキルの残滓を追えばすぐ行けると思うぞ?使わないのか?」
「…いや、さっきフィーアちゃんは自力で来いって言ってたから…。歩いた方が良いかなと思って…」
そんな要に、逸鉄が言う。
「一応、スキルも自力のうちに入るんじゃないかな?だから転移しても良いと思うよ?」
「…確かにそうだけど…。そのまま転移で行くと味気ないって言うか…」
「そうそう、旅は楽しんでいかないとね!!」
要に同調する瑠以。今度は要が俺に質問してきた。
「ホワイトさんこそ、長距離転移持ってますよね?それならすぐに行けるんじゃないですか?」
「あぁ、俺の転移スキルは長距離を飛ぶ事は出来るけど、一度行った事のある場所、見た事のある所じゃないと飛べないんだよ。だからこのまま歩いて行くか走るしかないんだよw」
それを聞いた瑠以が、逸鉄を見て問う。
「逸鉄さんはどうするんですか?転移スキル持ってないですよね?」
「うん、確かに転移スキルは持ってないね。わたしも走るしかないね(笑)!!」
「うわっ、それ本気ですか(笑)?」
若干引いている要。
「そうだね。人間、やる気になれば出来るもんだよ(笑)!!」
そう言いながら笑う逸鉄。その時、ふと思い出した。初めて逸鉄に会った時の事だ。確か結構、ずぶ濡れだった気がする…。
…まさかとは思うが…。
あの時は、特に気にしていなかったが今思えば…。逸鉄のこの自信のある発言。そして持っているスキルを視るとマジで走破しそうな気はするな…。
…ていうか怖くて聞けないけど、コイツは初めて魔界に上陸した時にどこから来たんだろうw?
まさか北大陸から泳いで来たとか…w?
取り敢えず俺達は話しながら、探索ついでにのんびり歩いて行く事にした。
◇
俺達が歩いていると、目の前に如何にもな格好をした魔族?が現れた。俺達の進路を塞ぐように現れたのは『盗賊』だ。
「オイッ!!お前らッ!!金とオンナとガキ置いていけッ!!」
剣を突き付けて叫ぶ人狼族。他には斧を持った牛頭族が二人、吸血族、白肌族、魔小人?が二人いる。計七人、ボロイ革装備や法衣、フードの付いたマントなどを着ている。
「…へぇ、魔族にも盗賊やるヤツいるんだな…」
呟きつつ、以前、フィーちゃんに聞いた事を思い出した。魔族にも良い子、悪い子、普通の子がいるとか行ってた気がするな…。
…さてどうするかな。瑠以と要を闘わせるわけにはいかない。だからと言って逸鉄にやらせると過剰防衛になるだろう。
「ホワイトくん、どうするんだ?」
「いや、俺達がやると目の前のチンピラが可哀そうだろ?」
「オイッ!!テメェらッ!!何余裕ぶっこいてやがんだッ、すぐに金とオンナとガキ置いていけって言ってんだろうがッ!!コラッ!!」
イキるヤツらを無視したまま。俺は盗賊達のスキルを視る。コイツらも一応『魔障気』は使えるのか?そんな事を考えていた所、ある事を思いついた。
「あ!!そうだっ!!エミル呼んで来るわw!!」
逸鉄と瑠以、要にそう言った後、俺は盗賊達に言い聞かせる。
「お前ら、そこで待ってろっ!!腕試しさせたいヤツがいるんだよ!!」
「何言ってやがるッ!!そう言ってテメェだけ逃げる気だろッ!?」
「まぁまぁ、落ち着けよチンピラ!!すぐ戻ってくるから待ってろよっ!?」
そう言い放った俺は、転移で館に戻った。
エイム、キャサリン、チャビー、レイザ、ルドルフと共に訓練するエミルに今しがたあった事を伝えた。
「…え?盗賊なんて倒しても経験値にならないと思うけど…?」
「ヤツら魔障気が使えるんだよ!!相手としては弱いかもだけど、対魔族って意味じゃ良いと思うぞw?」
「…何で笑いながらそれ言うのよ(笑)?」
「魔障気の扱いを見るチャンスだと思うんだよw英語だって日本でだけ覚えても意味ないからな?本場よw?本場!!実際、魔族が使う魔障気見たら絶対、力になるってw!!」
しばらく考えていたエミルがエイムを見る。
「良いかと思いますよ?ポイントは相手がどの部位に魔障気を集めているか?その性質などを見る事が出来ればより自らの力になるでしょう」
エイムの言葉に頷いたエミルは魔界への同行を承諾した。俺はすぐに『マルチプルゲート』を発動し、元の場所へと戻った。
「…みんなお待たせ!!エミル連れて来た…ぞ?」
俺が見ると逸鉄が七人の魔族相手に…遊んでたwダメージを与えないように攻撃を捌きつつ、軽く投げ飛ばし、足を掛けて転ばせている。それを見たエミルが俺をチラッと見て言う。
「わたしが来る意味、無かったと思うけど?…コレどうなの(笑)?」
その言葉に、要が説明してくれた。
「ホワイトさんが待ってろって言ったけど、あの人達、攻撃して来たのよ。逸鉄さんが遊んで来るって飛び出して…こうなってるんですよ(笑)」
「でも、逸鉄さんは本気で闘っていないから、今からでも代われると思うけど?」
要と瑠以の説明に、エミルは俺を見る。予想外に魔族達が弱そうなので俺はどうしようか考えた。このまま闘っても全く意味がないかもしれない…。
その時、俺は遊んでいる逸鉄を見て、面白い事を思い付いた。
「エミル、スマン。アイツらは弱すぎてお前の力にはなれない!!」
「でしょ(笑)?わたしが見てもそう思うよ(笑)?」
そう言いつつ笑うエミルに、俺は話を続けた。
「だから視点を変えよう。逸鉄は魔障気とは別に面白いスキルを発現させてるんだ。逸鉄をよく見てみろ?」
俺の言葉にエミルは逸鉄を見る。ふざけた動きをしている様にしか見えなかったが、その身体の周りに虹色に反射するものを見た。
「…あッ…アレ?アレは魔障気?でも少し違うような気が…?」
「そうだ。よく気が付いたな?アレは逸鉄が師匠の爺さんと編み出した特殊なスキルなんだよ。ざっくり言うと闘気に魔障気を混ぜたスキルなんだ」
「…ていうか逸鉄さん、手が伸びてるけど…?アレって盗賊捕まえて自分の範囲に戻してるって事?」
「そうだ。アレが『魔闘気』なんだよ。アイツとその師匠の爺さんはそれを当たり前の様に出来るんだよ!!」
「…で、何が言いたいの?」
「…つまり、『ボールは友達、怖くない』なんだよ!!」
「いや、全然意味わかんないんだけどッ!?」
突っ込んでくるエミル。苦笑いの要。そんな中、瑠以が得意気に言い放つ。
「それ!!キャプ〇ン翼ですよねっ(笑)!?」
「そう!!そうなんだよ!!つまり俺が言いたいのは…」
俺が説明しようとしていると、エミルがブツブツボヤいていた。
「…説明が一々、回りくどいのよ…まさか酔ってる訳じゃないわよね?」
「いや、酒は呑んでない。まぁ聞け!!魔障気は自分に合う『障り』を喚び込むって聞いたよな?」
「うん。それがどうしたの?」
「今までは障りを喚び込むだけだったろ?これからは呼び込んだ障りと仲良くなれば良いんだよ!!その為には自分に合う障りに呼び掛けて、常に傍にいて貰うんだ!!」
俺の持論に考え込むエミル。
「…ふーん。障りと仲良くなる、か。でもそれってホワイトさんの推測みたいなものでしょ?確証はあるの?」
「あるよ!!俺も今戻ってきた瞬間に逸鉄を視て気付いたんだよ!!俺は見えないものが視えるスキル持ってるんだ!!アイツの周りに常に虹色の障りがいるんだよ!!」
力説する俺に、エミルの眼の色が変わった。
「…障りと仲良くなってそばにいて貰う…か。分かった。やってみる!!」
「エミル、これが出来れば逸鉄やその師匠と同じく、周りのヤツらより一段、跳び抜ける事が出来る!!」
更に俺の例を上げて、話を続ける。
「俺は闘気やその他のスキルに『意志』を流す事が出来る。お前は思いや願いが強い。お前の『信念』を流して障りを喚び込んでシンクロすれば良い!!障りに感謝も忘れずにな?」
俺が一生懸命説明している前で、既にエミルは障りを喚び込んでいた。どんどん渦巻く黄色い障りが寄ってくる。
…うはっw!!やっぱりエミルはスゲェなw人間神〇嵐だw
それを見た俺はすぐに逸鉄を呼び戻す。
「逸鉄、交代だ!!次はエミルが行くからなっ!?」
「分かった、後は任せるよ!!」
そう言うと逸鉄は一気に上空にジャンプして錐揉み回転で戻ってきた。
「よしっ!!エミルッ!!ヤッって来いっ!!」
そう叫んだ俺がエミルを見た瞬間、渦巻く黄色の嵐を纏ったエミルが疾風の如く飛び出した。
「…なんだ?ヘンなヤツの次は小娘か…?」
「コイツならすぐ勝てそうだなッ(笑)!?」
笑う盗賊達。コイツら、分かってねぇなw?今から人間サイクロンが行くぜェッ!!
瞬間、上空にふわりと浮いたエミルが、体操選手の様に回転しつつ、一気に盗賊達の中に降り立つ。
ヤツらはその動きに見惚れていて動けなかった。直後に砂嵐の様な回転が盗賊達を吹っ飛ばしていく。
一瞬で右スクリューブロウを牛頭族に叩き込み、回転しながら左バックブローで吸血族を吹っ飛ばし、そのまま回転して右の正拳で白肌族を殴り倒す。
次にもう一人の牛頭族を左のリバーブローで粉砕し。更に回転してスタンスを開いて魔小人族二人を纏めて、低い位置からの右バックブローで叩きのめす。
そこから左スクリューブロウのアッパーで人狼族を、錐揉み回転で吹っ飛ばした。一度の反撃も許す事なく、完勝した。
その瞬間、エミルの全身が光を放ち、脳内にインフォメーションが流れた。
いつもアクセス、ありがとうございます。転生ミスの方も少しづつ進めております。転生ミスは次のエピソードで一章を終わりとしまして、次回からは第二章に入ります。
何卒、よろしくお願いいたします。 <(_ _)>
来週中には三話完成させて、更新したいと思っておりますw最近、気温差が激しく喉かイガイガしていますw皆さんも体調に気を付けて下されw




