第74話 支配される空間
魔術を封じる。
ミリアは、ギースと相対したときから、どうすればそれができるのかを考え続けていた。
魔術をぶつける。
それは駄目だった。
聖言を封じる。
何度か機会はあったが、気づいた時には発動している。
手が無いように思いかけてた時、この集落にきた。そしてここで気づいた。
森は霧に覆われてるのに、この集落は霧が晴れている。木々を切り開いたせいなのか、場所的な要因かはわからない。
それは閃きだった。
世界中にマナは満ちあふれている。
しかし、濃淡はある。
つまりマナにも『量』があるのだ。
また、魔術師によって集められるマナの量にも差がある。ギースとボルスのように。
……ならば
ミリアは魔力に意識を集中する。
……この集落全体のマナを私が掌握すればいい
ここにあるマナを他の術者に使わせなければいい。
魔力でマナを集め成形し、精神のありようで発動するのが魔術なら、マナが集められなければ、魔術は発動しないはず。
半ば賭けに近い確信。
ミリアは集落の中に存在するマナに手をかけていった。
人狩りの集団が、集落に続々と入っていく。
ルネイもまた、霧が立ち込める森から、澄んだ空気の集落に足を踏み入れた。
ゆっくりと辺りを見回す。
森の中にあって、落ち葉一つない道。
干された服
ほのかに香る料理の匂い
いる。ここは生きた集落だ。
思わず涎が垂れそうになる。
昨日のもてなし。思い出す。
味見が待ち遠しい。
集落の中心あたりまで足を進めたとき、前方に猫獣人族の一団が集まっているのが見えた。
こちらに向かって駆けてくる。
雌の個体……いる。
ルネイは喜びを隠せない。
ルネイは雷の第3聖言を唱える。
『地雷』
大地から空に向かって放たれる複数の雷。
威力は小さいが、当たると痺れて動けなくなる魔術。
人狩りにうってつけだ。
効果範囲に猫どもが入ってきた。
同時に聖言を唱え終わった。
目の前の人狩りの集団に、フレッドは怯む心を抑えつける。
あの人族の女、ミリアが自らを痛めつけさせて集落同士をまとめさせるきっかけとなった。
そのミリアが、魔術を封じると言った。
どうせこのままではこの辺りの集落は人狩りに脅かされるのだ。
ここにおびき寄せ、3集落の力を全てぶつければ一矢報いることくらいはできる。
半ば自暴自棄な気持ちがあったことは否定できない。それでも、ミリアはひとつの光明に見えた。
フレッドは雄叫びをあげ、人狩りの集団向かって駆けていった。後ろから、他の者達も続く。
……俺の最初の獲物は……、あいつでいい
いやらしい欲望を隠さない男。
魔術師らしく、何かを唱え始めている。
構わない。
駆ける
嘲笑うかのような表情
駆ける
何か怪訝な顔
跳ぶ
焦り、怯え、恐怖、目まぐるしく変化する目の色
フレッドの爪が、その男の首を切り裂いた。




