第71話 集落の結集
次の日、痛む身体を引きずってミリアは集落の広場に行く。他の3集落から代表者がきたのだ。
ミリアの怪我はマナでの自己治癒は殆どしてない。なくなったら困るからだ。ただ、シイラが見かねて薬草をすりおろしたものを傷ついた腕に塗り、布を巻いてくれた。
広場にいくと、それぞれ3人程を引き連れたそれぞれの集落のリーダーらしきものがいた。
そのうち一際大きい巨躯の者が、ミリアの姿をみて、飛び出してきた。誰かが制する間もなくミリアを蹴り飛ばした。
腹に重い衝撃。
「グッ!!」
息が一瞬で吐き出された。
身体が地面に転がる。
地面に倒れ伏したミリアの、傷ついた腕をその男は踏みつける。
「あ!アアアアアアッ!」
痛みに、悲鳴を上げてしまう。
「随分とやられてくれたもんだな。だが……」
鋭い爪が襟にかかる。
一息に引き裂かれた。
布が裂け、胸元が露わになる。
「……見かけって、わけじゃねぇみたいだな」
その男が見たのはミリアの鳩尾についた痣。
それを見て満足したのか、足を離す。
ミリアは服を閉じるようにして、痛みに悶絶した。この傷をつけた男と目が合う。微かな安堵と心痛。
「道具を壊して貰っては困るぞ、ゲイズ。使えなくなっては意味がなくなる」
フレッドが努めて冷たい声でその男、ゲイズを諭す。
それを無視するかのようにゲイズはミリアを見下ろしていた。
「で?こいつはどれくらいできるんだ?魔術を封じる道具といっていたが」
「答えろ」
ゲイズの問いに応えるように、フレッドがミリアに言った。
……ここまでは、ほぼ想定通り
「……こ、この集落……の範囲くらいです。……あの岩場の上から……ならですが」
弱々しくミリアは声をだす。
自然と涙が溢れる。
痛みと、羞恥と、そして演技。
ゲイズは鼻で鋭く息を吐き、他の猫獣人族の面々に向かう。
「なら、ここに誘い込む形だな……、絶好の機会だ。殲滅してやる」
その後、猫獣人族のリーダー達のみでこれからのことが話し合われている。
それでいい、そこに参加してはいけない。
あくまでこの戦いの主体は猫獣人族であるべきなのだ。
そして、ミリアは倒れ伏したままでいる。
誰も助けにはこない。
それも言い含めたことだ。
レットが唇を噛み、握った棒を震わせている。
シイラはミナとミトを抱いて家にいるはずだ。
やがて話し合いが終わったのか、他の集落の者達が去っていった。
そのまましばらくして、ゆっくりとフレッドとミリアを殴った者が近くにきた。
「大丈夫か、ミリア」
身体は痛む、呼吸も荒い。
「大丈夫よ、……鳩尾、必要だったわね」
3人は声もなく笑った。
少しして、集落の者達が集まってくる。
「人狩りへの対策だが……」
フレッドが集落間で決まったことを伝えようとしたとき、ミリアはそれを遮った。
「私は聞くべきではないわね。何かのはずみで口から出たときに、疑われるとまずいから」
そうして昨夜寝かされた家に向かう。
「出番が来たら呼んでちょうだい。……少し、休むわ」
この集落の者はミリアに何も言わない。
レットもまた、ミリアの背中をただ見つめていた。
そして、その日がやってくる。




