表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/69

第66話 英雄はもういない

聞き捨てならないことを聞いてしまった。思わず表情が歪む。


人狩りが横行している。

猫獣人族は人族の悪意に晒され続けているのだ。

奴隷として攫われているのか、趣向として命を刈り取られてるのかは分からない。


……反吐がでるわね……


種族が違えば、そんな非道なことができるのか、人族は。


ミリアは同じ人族でありながら、理解しがたい『人狩り』という行為に、激しい嫌悪感を抱いた。


「それで水場から遠い場所に集落を作ってるのね」


目の前の大人二人が頷く。


「どうしても目立つからね。他の集落との力関係もあるけど。この集落はその……、あまり良い印象を持たれてないから……」


話しにくい事情もあるようだ。

ミリアは話を変える。


「その、助けてくれたっていう男性はその後、どこに行ったかわかる?会ってみたいわ」


人族にも人狩りを許せない者がいたのだ、話してみたい。それに、過去にどうやって助けたのかは分からないが、今の猫獣人族の窮状を知ればまた駆けつけてくれるかも知れない。


女性は少し迷うような素振りをみせ、悲しそうな目でミリアを見る。


「もう、いないわ。私達を助けてくれたとき、命を落としたの。もう8年も前の話よ」


思わず発しようとした言葉が喉に引っかかった。

一瞬、視線がさまよう。


女性が俯いて続ける。

「遠い村で、奴隷にされた私を助けてくれたの。バートは何日もかけて、前に住んでた集落まで連れて帰ってくれた」


涙が膝に落ちる。

「集落、人狩りの集団に襲われてた。たった1人で、バートはやっつけたのよ。命と引き換えに」


ミリアは語る女性を見つめることしか出来なかった。淡々と語られるバートという男の人生。

胸が苦しい。

恩人を失った痛みが伝わってくるようだった。


女性は隣のレットの頭をなでる。

「集落に着く前に身籠ったのがこの子」


……ああ、やっぱり


レットの手の指は目の前の女性よりも長い

顔の毛も薄い

脚の形

だから他の集落からは良い印象が持たれてないのだろう。


またこの子達は集落を追われるのか。それとも……


「何とかできそうなの?その…、今来てる人狩り」


……私は何を言おうとしているのか


「私達にできるのは、隠れて、やり過ごすだけね。あいつら魔術使うから。爪じゃ届かない」


……貴族か、そうでなくても判別の儀をうけた魔術師が加担しているのね。なんて…


「外道ね」

「ホントにそう」


寂しく笑い、それぞれの膝にいるミナとミトを撫でる。気持ちよさそうにされるがままになっている。


……この子が攫われる未来なんて見たくないわ。


小さな家の中が静まりかえる。

外から聞こえる、子供の声。

揺れる心。今はただ受け止めろと、ミリアは自分に言い聞かせる。


その時、それまで口を閉ざしていたレットがミリアに向かって声をかける。


「なぁ、イタンシャってなんだ?」


……わからないわよね、異端者なんて子供には


「この集落を救った俺の父ちゃんは、イタンシャだったって母ちゃんが言ってた」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ