第62話 猫獣人族の親子
ミリアは思わず身じろぎする。
「…ぅな?」
胸に乗った方が小さく声を上げる。
「ぅなぅ!」
干し肉を囓っていた方は、干し肉を取られまいとしがみつく。
「えっ?ええっ!」
ミリアは声を上げるが動けない。落としてしまう。なんでこんな所に猫が、それも小さい。洞に入った時にはいなかったから、入ってきたのだろうが、こんな小さい生き物がうろつけるほど安全な場所でもないはずだ。
「あの……あなた達、どこからきたの?」
ミリアの声に2匹が反応する。
「ぅーなっ!」
「なっ!」
……なにこの、うなうな言ってるかわいい生き物は
よく見ると、猫でも無いのかも知れない。手の形や、足の形状が人っぽい。顔も心なしか人に近いようにも感じる。もしかして、この子たちは……
「あなた達、猫獣人族かしら……」
「うな?」
「ぅにゃ、にゃっにゃ」
一匹に干し肉をとられた。うれしそうに食んでいる。まだ胸にしがみついている方を撫でると、気持ちよさそうにくつろいできた。
胸に顔を埋めて、うなうなと小さな声を出している。
思わずそっと抱き上げる。フワフワの毛が気持ちいい。
知識を探る。
……猫獣人族は群れで暮らしているはずよね。人族とほとんど関わりを持たなかったと思う……
ただ、たまに奴隷として貴族が連れていることはあると聞く。違法、合法問わず。
この子達は酷い目にあってるようには見えない。
「あなた達のお父さんかお母さんが近くにいるのかな?」
抱かれている子が見上げて首をかしげる。
「なぅー」
……奴隷にされる理由がわかったわ……
思わず表情が緩む。ミリアは抱き上げながら立ち上がり、もう一匹、いや一人を持ち上げて抱きかかえる。
「あなた達のお父さんとお母さんが心配してるわよ?探しましょうね」
「うなっ!」
「ななっ!」
なんて可愛らしいことだ。川に流されたかいがあるというものだ。二人の温もりが孤独感を癒していく。
2人の暖かさを感じながら洞の外にでる。
日は差し込んでいないが、だいぶ明るい。昨日は暗くて分からなかったが、もう少し進めば崖も終わるようだ。
そちらへ向かって歩き始めたとき、上から声が飛んできた。
「ミナ!ミト!……お前!人族か!二人を離せ!!」
見上げたそこに、猫獣人族らしき少年が棒を構えていた。耳がピンと立ち、その表情は警戒を隠さない。微かに震えている。ミナとミトとは、今抱いてるこの、うなうなのことか。身内かもしれない。
「この子達の身内かしら?私、この子達のクッションにされてたの。あと干し肉も食べられたわ」
「ぅな!」
「なー!」
「……干し肉……?」
……そこに反応するの?!
「ねぇ、ここから出たいのだけど、上がれる場所、ある?」
少年はどうしたものかと迷っているようだ。構えた棒が揺れている。そこに響くもう一つの声。
「レット、ミナとミトは見つかった?……そこに何かあるの?」
大人の女性の声。
やはり群れが近いのだろう。ミナとミトと呼ばれた子をギュっと抱きしめ、敵対されないことをミリアは祈った。




