第60話 幕間 SS ドルテンのハンター
「今日から正式にハンターよ!ジル君!」
受付嬢のアレサさんの声がギルド内に響く。仲間の子ども達が嬉しそうにはやしたてる。
ミリアさんがドルテンを発って1年半、俺は15歳になり、見習いが取れて、正式にハンターとして登録された。
「依頼、どんどんこなしちゃって!」
アレサさんの言葉に、依頼書が張り出されているボードを見る。この1年半の間にだいぶ減っている。
貴族のボルスに頼まれ、一緒に少しずつ、こなして行ったのだ。
そして、そのボードを見ると、胸が痛む。
後からわかった。あの手配書を剥がしたことが、あの男、ギースを呼び寄せたのだと。
ミリアさんがあんな形で街を出ることになったのは俺のせいなのだと。
「何、暗い顔をしている、ジル。これからは私の依頼をガンガンこなしてもらうぞ!」
ボルスが側に来て背中を叩きながら言った。
このお貴族様は口は悪いし横柄だが、なんだかんだ面倒見がいいし、行動力はある。
街の外で魔獣被害が減ったのは間違いなく、ボルスの功績だ。
「俺も、ジルさんとガンガン依頼こなすよ!」
1つ下のニルスが張り切って言う。ジルが最初に剣を渡したのはこのニルスだ。といっても、ミリアさんから託された剣ではなく、新しい剣を渡した。
体に合ったものを使うべきという理由にしたが、本当はこの剣を手放したくなかっただけだ。
「お前はしばらくグラスラット狩りだよ」
ニルスは体格がいい。剣も自分より長い物を扱う。そろそろ、ミリアさんがそうしてくれたように、森へ連れて行く頃合いかも知れない。
頭を撫でながら、ボルスに向かい合う。
「ええ、まかしてください。俺はドルテンのハンターですから」
まだ、ミリアさんには及ばない。
でも、やっとこう言えるようになった。
その時、ギルドのドアから、チリンという音とともに、光が差し込む。銀髪の男を先頭に、一団が入ってきて、ボルスに近づいていく。
「こんなところに呼び出しとは、なかなか趣向がきいてますね、ボルス・ジェルナー様」
ボルスが気がついて、手を上げ応える。
「おお、来たか。クロヴィス・フレアベット。ちょっと外せない用事があってな。たった今、用は済んだから、この後、屋敷に向かおう」
フレアベット……。ミリアさんと同じ家名……。
クロヴィスと呼ばれた男を見つめる。
……似てる……ミリアさんに。
記憶の中の横顔が重なる。
思わず涙が一筋流れた。
クロヴィスはそんなジルに気づかずボルスと話している。
「いや、驚きました。3年前とは比べものにならない程、街が生き返っている。」
ボルスは得意げだ。
「そうだろう、俺の力だ。まあ、ここらにいる者たちも多少は頑張ったがな!」
それを聞いた子ども達は、不満げな顔を隠さない。ここにいるみんなにとって、それを成したのは仮面を着けた少女だ。
俺にとってもそうだ。でも、ここでミリアさんの名前を出すわけにはいかないのだ、仕方ない。
首を振って不満を吹き飛ばす。
ふと、視界に銀色の輝きが煌めいた。
目をやると、1人のメイドの髪留めだ。自分より少し下か。さすが貴族についているメイドだ、気品がある。
……なんとなく、立ち姿がミリアさんっぽいな
視線に気づいたのか、こちらを見る。
少しの間目があった。
不思議そうな顔、栗色の艷やかな髪
少し首を傾げ……
ニコリと微笑んできた。
俺の心臓がはっきりと反応した。




