第59話 幕間 SS クロヴィスさまのメイド
(これは、ミリアがドルテンを離れてから1年半後の話)
わたし、アンナ、11歳。
ミリアさまがフレアベットの御屋敷から居なくなって、1年半くらいが経った。
思い出しては涙を零してた私も、ミリアさまに再会した時に恥ずかしくないようにと、一生懸命、仕事をしている。
わたしを可哀想に思ったのか、クロヴィスさまが、専属メイドにしてくれた。
少しでもミリアさまのようになりたいと、人形に向かって下着姿で、『そのめいどふくをぬぎなさい』と言っていたら、胸の大きい先輩サーシャさんが怖い顔をしてた。
クロヴィスさまがとりなしてくれなかったら危なかった。
クロヴィスさまも優しい。けど、優しさが空回りしてる気もする。
演劇の鑑賞券よりもお菓子がほしいのに。
そんなクロヴィスさまが、社交で出かけるということで、私も同行することになった。
なぜか、先輩メイド達が同行を譲りあって、新米の私とサーシャさんが選ばれた。
聞いてみたら、あまり楽しいところではないらしい。でも、この街しか知らない私からすれば、街を出てのお出かけなんて、楽しみでしかない。
出発の日、サーシャさんは青い顔をしていた。新入りの時に、同行してたらしい。3年くらい前だとか。
クロヴィスさまに聞くと、相手の御屋敷に着くまでは外にでなくていいと言う。
そんなに酷いとこなのかな、なんでそんなとこに行くのだろう。
王都から馬車で3日程の道のり。
景色が街並みから草原、遠くに森林や山。
本でしか見たことのなかった光景。これが見れただけで、楽しいというものだ。
護衛の人が言うには、魔獣が出てこないらしい。
危険がないのはいいことだ。
そうそう、せっかくのお出かけなので、ミリアさまに頂いた髪留めをつけてきた。気分が上がる。
クロヴィスさまは、優しく似合うねと言ってくれた。その表情はミリアさまを思い出させる。
野宿も楽しい。
保存食や携帯食料の食事も、なんだか、はんたーみたいでカッコいい。
これなら、何度でも同行したいくらいだ。先輩達はぜいたくなのだ。
もうすぐ到着すると、護衛の人の声。
外を覗くとまだ青い小麦の海に街の外壁が船のように見える。
とっても綺麗、ミリアさまにも見せてあげたい。
ここはドルテンという街だと、クロヴィスさまが教えてくれた。
門を通り抜け、街の中に入る。
わたしより小さい子ども達が街を掃除しているのがそこかしこに見える。街はとても綺麗だ。
王都ほど活気はないが、見える表情は明るい。
「これは一体、どういうことだ……」
クロヴィスさまが呟いている。
何か変なところでもあったかな?
子ども達の間では、目元を覆うマスクが流行っているようだ。手作りのものから、凝った意匠のものまで多彩だ。
帰りにお土産に欲しい。売ってるのかな。
誰かが駆けてきたようで、護衛の人と話をしている。すぐにクロヴィスさまに報告にきた。
どうやら、寄り道をするらしい。
なんだかわくわくする。
先輩達、こんな楽しいお出かけを嫌がるなんて、一体何があったのだろう。
馬車が止まった。
降りると、そこはギルドを示す看板がかかっていた。




