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第56話 教会の狼、異端の虎

青く揺らめく炎を突き抜けて来た赤毛の男に、ミリアは戦慄した。


燃える服

歪んで開かれた口

煌めく金眼


これは狼だ

飛びかかってくる獣に、距離を取る暇さえなかった。


水玉、手で弾かれる

肉薄した顔が視界から消える。

下、狼の肩がミリアの鳩尾に突き刺さる。


纏ったマナが火花と共に削られていく。

逆流してくるものが口から溢れ出る。


ミリアは吹き飛ばされ、仰向けに倒れた。


意識はかろうじて繋ぎ留めている。

目が眩む

吐き出したものを吸ってしまい咳き込む。

手足が痙攣する


……くそったれ……

ここで死ぬのか。

汚い言葉がうかぶ。口からは出ない。


身を少し起こしたとき、ぼやける視界に、見下ろす赤毛の男と、揺らぐ炎の壁が目に入る。

ミリアにとっては死の象徴。揺らぐ炎が死神の鎌のようにも見える。


炎の壁から漏れ出た炎が、人の形を取る。

静かに

鋭い殺気

それはジルの姿に見えた。


赤毛の男が殺気に反応する。


「駄目!ジル!」


祈るような叫びが喉を突く。


交差する2人、ジルの剣が赤毛の男の足を裂き、男の腕がジルを薙ぎ払う。


「グガアァァァァ!」

「うわっ!グッ!」


「ジル!!」

痛みに咆哮を上げる男と、吹き飛ばされるジル。

ミリアは慌てて体を起こし、ジルに駆け寄る。


「ジル!しっかりして!」

ジルの身体を探る。火傷の他に目立つ怪我はない。息はしている。

吹っ飛ばされただけのようだが、呻きが止まらない。ミリアは赤毛の男を見据える。


肩で息をするその男は、燃えるように揺らめく瞳をジルに向け、怨嗟こもる声をかける。


「異端でない者には興味はない!さっさと立ち去れ!さもなくば…殺す!」


ジルは呻きながらも身を起こし、赤毛の男を睨みつける。

「お前こそ!どっか行けぇ!!」


ジルの身体は震えていない。強がりじゃない。

私を守るために身を危険に晒した。

覚悟を示した。

その精神は、目の前の男にも負けてはいない。


「ジル、あなた、いい手品師になれるわ」

ジルを庇うように前にでて、男を見据える。


「で、貴方の名前、聞かせていただける?

私のことは知ってるみたいだけど。私、貴方のこと、知らないの。私は手品師見習いのミリア。あなたは?」


それを聞いた目の前の赤毛の男は、目から狂気の色が失せ、面白い物を見るような喜色を浮かべる。

「これは失礼しました。ミリア嬢。私は、異端審問官ギース・ラビア。貴方を追い、始末する者ですよ。大人しく殺されてください」


ジルに切られた傷が徐々に癒えていくのが見える。

「私、怒ってるの。この子はドルテンの希望。そんな子を殴るなんて、躾のなってない獣ね」


ミリアの傷も癒えていく。

ジルが作った五分と五分、もう無駄にしない。

私も覚悟を決める。


口舐りをしていたギースの口角が上がる。

「獣とは……、ハッハッハ!私以上の獣である、貴方が言いますか………………ふふっ、……殺す」


金の眼が燃える

一瞬で、マナがギースの全身を包む

消えるギース

足音だけが接近を知らせる


「こんな美少女を獣だなんて失礼ね!」


形作られる極細のマナ

迫るギース

マナの変質

走る熱線


ミリアとギースの間に血飛沫が上がった。


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