第53話 異端と審問官の逢瀬
夜が明け、ドルテンは次第に明るさを取り戻す。
働き手の女性達がちらほらと街に現れ、数少ない男手は農地へと門を出ていく。
門には門番と、ここ数日現れるようになった少年。それから何人かの孤児。
それらの孤児は少年が門に現れるようになる前は、大通りで力無く座り込んでいた。今は少年を取り囲み何か話した後、立ち去っていった。
……ここは、花の匂いを濃く感じる。
ギースは、目を細める。
あの少年か、それとも孤児か。
ハンターらしき姿はない。
少年が手を振り始める。
相手は、商業区の方から歩いてくる人物。
群青の服に目元を隠す仮面
銀髪碧眼を隠しているようだが、その花の匂いは隠せていない。
……来た、やはりいた
ミリア・フレアベット……!
ギースは姿を隠しながら備える
昨夜もアサルカは宿に帰ってこなかった。
相当精力的に街の外に出てるらしい。
いや、張り切っているのは、ボルス・ジェルナーか。
師匠のことだ、きっとボルス・ジェルナーに手ほどきしてるのだろう。ミリアはあまり気にせず、昨日と同じように門に向かう。
門の近くで、孤児たちとすれ違う。みんなミリアの事を知っているのだ、笑顔で手を振っている。ミリアも小さく振り返して、見送った。
門の前にジルが見える。
手を振る姿が眩しい。思わず笑みが浮かぶ。
体を撫でていく風に、ふと、妙な気配を感じる。
ブッシュウルフ、もしくはそれ以上の魔獣に睨まれているような。
周りを見回すが、街の人が慌てている様子もない。むしろ、笑顔がある。門を出ていく男達も多い。師匠の働きが効いてるのかも。
そんな事を考えながら、ジルの側にまできたとき、
風が止まった気がした
空気が凍るような静けさ
マナが急速に収束する
頭上に広範囲
肌が粟立つ
上方、収束したマナが光を放つのがわかった。
……来る…!
光の雨
そうとしか言えない光景
あれは危険だ
ジルを巻き込んでしまう
一瞬の迷い、時間はない、身体が動いた
ジルを突き飛ばす
……ごめんなさい
あたりに光の雨が降り注ぐ。
雨が地面を穿ち、岩畳を砕く。
土煙が舞い、慌てふためく群衆。
唖然としたジルの顔。
ミリアは地面を蹴り、飛び退いた。
ジルを突き飛ばした手が遅れる。
その手を光の雨が貫いた。
「グッ!!……あああ!!」
腕を抑えながら、光の雨の範囲から離れる。
重い!何が!痛い!誰!師匠!
目の前の視界が揺らぐ
揺らいだ空気が、人の姿を取る
男、赤毛、金の虹彩が印象的だ。
その男が振り抜いた足が、ミリアの体を捉えた。




