第50話 露見
ジルは、あれから立て続けに、グラスラットを3匹仕留めた。ミリアが見る限り、次第に動きは滑らかに、危なっかしいところもなくなっていった。
……あれくらいの子どもは、成長も早いわね……
次第に日が昇っていく。これ以上狩ると、運ぶ時間も考えると、解体する時には暗くなってしまう。そろそろ切り上げ時か。
「ジル。今日はこれまでにしましょう。運べなくなるわ」
ジルは、振り向き、自信に溢れた笑顔で応える。丁寧に剣についた血を拭いながら叫んだ。
「はい!ミリアさん!じゃあ、運ぶやつら呼んでくるので、少し見ててください!」
……ついに敬語になったわ。ほんとに素直になったわね。
「運ぶやつら?」
聞き返す前に、ジルはドルテンの街へ走っていった。ミリアは一人残される。
「血抜きくらいしておこうかしら……いや、無理」
ただよう血の匂いに、ミリアはすぐさまあきらめた。
待っている間、魔術の練習をすることにした。
ジルの狩りを見守っていて思ったのだ。
身を守るための魔術を使えるようになるべきだと。
魔獣はまだいい。位置も動きもわかりやすい。
でも、ローゼストでのように人に、それも魔術師に狙われた時、場所を把握するまでは、一方的にやられてしまう。
「私…、随分と攻撃に偏ってたのね」
でも、どうすればいいのかわからない。
土壁でも作って見ようかとも思ったが、どういう原理で土が動かせるのか、皆目見当がつかない。
試行錯誤の間、水や火があたりを彩ることとなり、それは、ジルが年嵩の孤児をつれ荷車を引いてくるまで続いた。
「ここ、沼地でしたっけ……?」
荷車にグラスラットを載せ、ドルテンにむかう。獲物があるからか、ジルが連れてきた孤児の足取りは軽い。談笑しながら運んでいる。
今日は4匹、孤児で食べるには少し多い。
「ジル、今日の獲物はどうするつもり?」
ジルは上を向いて少し考えてから答える。
「2匹は、俺らで捌いて食べる……。2匹はそのままギルドに持っていって、売る。受付さんが、欲しいっていってたし……」
自分の考えが正しいのか迷っているようだ。
ミリアはそんなジルの様子が嬉しくなった。
自分達だけでなく、自分が生きて行く範囲に意識が拡がっている。それが受付の女性目当てだったとしても、悪いことではない。
それは、将来、ジルの助けになるだろう。
「いいと思うわよ。手に入ったお金で、肉以外の物も買って食べなさい。野菜とかも食べなきゃ駄目よ?」
肯定されたことが嬉しかったのか、笑顔になる、が、すぐ渋い顔になる。
「野菜……嫌いだ。草だろ、あれ」
ちょっと前まで草を食んでいた少年らしい言い分に、孤児とミリアの笑い声が空に響いた。
同じ日、ローゼストの夜
キギリス教ローゼスト王都教会。
1人の神官が、審問官の部屋に入る。
「ギース、ドルテンから早馬だ。お前宛に知らせがきている」
部屋の奥で座っていた男の口が歪んだ。




