第48話 甘酸っぱさと不穏さの混線
小さな家
小さい子がはしゃぎ回る
肉の焼ける匂い
孤児達の笑い声
ジルは少し前まで、肉を焼き、分配し、食べていた。涙を浮かべながら肉を受け取る女の子に、思わず自分の目にも涙が浮かんだ。
昨日とは違う光景。
昨日は誰もが空腹を抱えていた。
まだ日のある時間に、ミリアが座っていた場所。
ジルはそこに腰を下ろし、孤児達を見つめていた。
……ミリアさんが、変えてくれた。自分を、みんなを、たった2日で。
ジルの脳裏によぎる光景。
マスクを外してあらわになった顔
見つめてくる碧眼
マントを翻して構える姿
グラスラットに立ち向かう凛々しい表情
風に靡き、光を纏うかのように舞う銀髪
ジルは懐に手をいれ、手配書を取り出す。
丁寧に開いたそこには、似ていないがミリアの姿絵。
……本物はもっとキレイだ
でも、これはミリアを示すものだ。
胸元の服を握りしめる。
心の奥が暖かくなる。
明日もまた、門にいけば会える。
ジルは、取り出した時のように手配書を丁寧にたたみ、懐に入れた。
膝を抱え、頭を伏せ、目を閉じる。
……早く朝にならないかな
同じ夜、ギルドに1人の神官が立ち寄った。
いつまでこんな事を続けないといけないのか、そう言いたげな表情でギルドの中に入っていく。
受付には1人だけ男が残っていた。夜番なのだろう、この街に夜に訪れるようなハンターはいない。退屈そうだ。そこに向かい、声をかけた。
「ミリア・フレアベットの護衛依頼はでてないか?」
ギルドの男性職員は、面倒臭そうに依頼の一覧を調べる。
「今のところ出ている依頼は、ジェルナー様のところからでてる魔獣の討伐依頼だけですよ、神官様。こんな寂れた街に貴族のご令嬢なんて来ないんじゃないですか?」
神官はこちらも面倒臭そうに答える。
「ないならそれでいい。こっちも仕事だ。邪魔したな」
確認が終われば今日の仕事は終わりだ。早く帰ってエールでもあおりたい。
そう思いながら踵を返して立ち去ろうとしたとき、依頼書のボードが目にはいる。
違和感を感じ、目を細める。
「……ないな」
2日前に自分が貼った手配書。それが無くなっている。
誰かが見つけて教会に通報したか?
いや、自分のところに連絡はない
いつ無くなった
本人か、匿っている協力者が剥がした。
どちらにせよ、ミリア・フレアベットがこの街にいることを示しているのではないか。
神官はそう思い至った。
足早にギルドを後にし、教会に戻っていった。
その夜、教会からドルテンの外へ、早馬が走っていった。
王都へ
ギースへ




