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第42話 未来へつなぐ剣

ギルドのドアを抜けて正面にある建物は、とても武器屋には見えなかった。少なくともミリアには。


外にも武器とか防具とか、これ見よがしに並べてるものだとばかり思っていたわ。


ただ一つ、簡素な看板だけが武器屋であることを主張している。それ以外は普通の民家にしかみえない。


重いドアを開け、ミリアとジルは中に入る。チリンとドアにつけた鈴の音が響いた。


中に入れば、紛うことなき武器屋だ。

壁に剣がかけられ、床に防具が雑多に並べられている。


ランタンの光を受け、いたるところで鈍い光を放ち、その物騒な存在感をだしている。


ミリアの踏みしめた床が鳴る音に、奥から野太い声が応える。

「女子供が来るような店じゃないぜ」


そうだろう。こんな物騒な空間、初めてだ。

でも、たじろいでる暇はない。


「客よ。この子が使う武器、見繕って。今日、ハンター初陣なの」


男は胡乱げに、ミリアとジルをみる。

「身体、小せぇなぁ。もっと鍛えにゃまともに振れやしねぇぞ」


その鍛える機会も余裕もジルにはなかったのだ。それはこの街のせいだろう、と少し苛立ったが、ぐっと飲み込む。


「これから大きくなるわよ。で、この子が使えそうなの、ある?」


怯まないミリアの声に、男は少し口角をあげた。

その時、ジルが突然声をあげた。

「剣がほしい、短めの。あとナイフ」


男は感心したように、顎に手をやる。

「わかってんな、坊主。だがな、度胸は必要だぞ?相手の懐に飛び込んで使う武器だからな」


ジルも引かない。

ただ男を見据え、脅しを怒りに変えている。


「……いいだろう、見繕ってやる。簡単な胸当てくらいは必要だろ?それもだな。」


男は店内を彷徨きまわり、何本かの短剣とナイフ、胸当てを机に並べた。

「持ってみろ。1番しっくりくるやつを選べばいい。品質はどれも変わらんから、こういうのは勘でいい」


ジルは一本ずつ持っては構えを繰り返す。

心なしか、目に楽しさが見える、


「なあ、嬢ちゃん。あれはあんたの弟かなんかか?随分となりが違うが」


ミリアは男をチラリと見た。

「ジルは私の身内ではないわね。ドルテンの孤児。言うなればこの街の身内じゃないかしら」 


男は少し苦い顔をする。

「……言いたいことはわかるけどな。何であんたが面倒みてる?あいつにはこれ、払えんだろう」


「……さあね。草じゃないもの食べさせたいだけかも。で、いくら?」


男がしばし黙る。計算しているようだ。

「…全部で15,000リーズでいい。ちょっとまけてやってる」


この男も誠実なのだろう。この街は、少なくとも平民は腐っていない。必死に生きてるだけで、優しさが無いわけではないのだろう。


しかし、これまでに稼いだ金では、全然足りない。それは分かってた。

ただ、懐には父から受け取った金貨袋がある。


……お父様なら、この使い方には反対しないだろう。お兄様は眉をひそめそうだけど


懐から小金貨1枚を抜き出す。

「まけてくれてありがと」



お釣りと武器、防具を受け取りミリアとジルは外にでる。ジルが何か言いたげにこちらを伺っている。

「何よ、何かいいたいことがあるなら、今言いなさい」


ジルは、言葉を選ぶように話しだした。

「何で、俺に武器、買ってくれたんだ……?施し……か?」


ああ、そうだよね。実際はそれに近いしね。


「あなたに買ってあげたんじゃないわよ」


「じゃあ、なんだっていうんだ……?」


ミリアは向かいあって、ジルを指差す。


「これから、あなたはハンターになって、稼ぐの。自分の稼ぎで剣を買えるようになったら、その剣は下の子に渡しなさい。

これは施しじゃなくて、投資なのよ」


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