第41話 見習いハンター
ジルは今まで見たことがないほどの唖然とした顔をしている。
「ハンター?いや、無理だろ、武器とかないし、子供がなれるわけないだろ」
もっともだ。でも、待ってられない。
「だから、私を利用するの。『見習い』ということにするのよ。ジル、あなたいくつ?」
「13……」
思ったよりも年上だ。食生活に問題があって身体の成長が遅いのかもしれない。
「なら、なおさら問題ないわ。行くわよ」
ミリアはジルを伴って、喧騒のギルド内に足を踏み入れた。
騒がしい原因はすぐ分かった。
とある一団がカウンターで揉めているのだ。おおかた、報酬か買取査定額でゴネているのであろう。こちらには関係のないことだ。
ミリアは空いているカウンターにつき、受付嬢を呼ぶ。昨日と同じ女性だ。話しやすい相手なのは助かる。
「あら、今日は早いのね。どうしたの?」
「この子をハンター登録したくて。見習いでも構わないわ」
ジルをカウンターの前に立たせる。
ジルは、身体がやや硬直している。
表情も硬い。
「ほら、自分で言いなさい。男でしょう」
ミリアは口で突き放し、手を背中にそっと添える。
手の温もりがジルの硬さをほぐしていく。
「ジル……です。13歳、ハンターになりにきた……きました」
受付嬢の顔に喜色が浮かぶ。
カウンターから身を乗り出し、ジルの顔をマジマジと見つめだした。
「あら、初々しい!お姉さんがハントしちゃおうかな!」
あからさまなからかい口調だが、ジルには免疫がないらしい。少し赤面している。
「って、冗談よ。13だと本登録は出来ないから、見習い登録ね」
受付嬢が手際よく登録処理を始める。
時折ジルに何か聞いているが、内容はミリアが登録したときと同じだ。
そう言えば、『見習い』って何なのだろう。
ミリアはいきなり本登録だったため、詳しく聞いたことがなかった。
「ねぇ、見習いって何か制限あるの?」
受付嬢が指をたてる。
今から説明しますよ、とでも言いたげだ。
「見習いは、依頼を単独で受注できないの。どんな下のランクの依頼でも。本登録のハンターの同行が必須条件」
もう一つ確認しなければならない。
「依頼外で駆除した魔獣の買取は?」
受付嬢はハンター見習いの身分示す札を持った手でジルを指差し、低い声でいう。
「それには制限はないけど、推奨はしない。無茶して命を落とす見習いハンターは少なくないわ」
生唾を飲み込む音。
差し出された札を受け取る手が震えている。
「ありがと、それがわかればいいわ。どこかで武器買えるところある?」
それも想定内の質問なのだろう。
受付嬢の手が流れるように依頼ボードの横にあるドアを示す。
「あそこのドアを抜けると、すぐ向かいが武器を扱っているわ。今は客が少ないから、喜ぶわよ」
隣のカウンターはまだ騒がしい。
よく、あれだけ騒げるものだ。
「ジル、行くわよ」
ジルはミリアにつれられてボードの横を通り、ドアを抜けていく。
ミリアが通りすぎるとき、空気が舞い、いくつかの依頼書がはためいた。
ジルの目が一瞬、ボードで止まった。




