第2話 後編 その子に触れないで
グリードは、リーンを見なかった。
視線はリーンの肩の上を通り過ぎ、まっすぐ寝台へ向けられていた。
碧の瞳がゆっくりと動く。
白いシーツへ広がる群青の髪から、痩せた頬へ。
開いたまま何も映していない目へ。
グリードの眉が、わずかに下がった。
痛ましいものを見る顔だった。
けれど、そこに驚きはなかった。
――納得していらっしゃる。
リーンは、背筋が冷えるのを感じた。
この人はもう、コーデリアがこうなっている理由を、自分の中で決めてしまっている。
「……ひどい顔色だ」
低い声だった。
「知らせは受けていた。だが、ここまでとは思わなかったよ」
労わりの響きがあった。
だからこそ、聞いていられなかった。
「殿下との間には、少し行き違いがあった」
グリードは、わずかに眉を寄せた。
「私の説明を、最後まで聞いていただけなかった」
グリードは、それ以上その話を続けなかった。
何があったのか、なぜ三週間で戻ってきたのか、説明する必要があるとも思っていないようだった。
行き違い。
その言葉の軽さが耳に残った。
三週間前、この人は皇女殿下へ求婚するのだと言って、この屋敷を出ていった。
それがどうなったのかを、この人は一言でたたんでしまった。
一歩、寝台へ近づく。
リーンは動けなかった。
膝から下の感覚が遠い。
ここは伯爵令嬢の私室で、目の前にいるのは招かれていない客だ。
それだけは分かっているのに、身体が言うことを聞かない。
「コーデリア」
グリードが名を呼んだ。
三週間前と同じ、明日の天気でも告げるような調子だった。
「少し遠回りをしたが、やはり君が私にはふさわしい」
謝罪はなかった。
十年以上の婚礼延期についても、三週間前のあの小応接室についても、この人は一言も口にしなかった。
父君から直接詫びるよう命じられて来たはずなのに、詫びの言葉は最初から用意されていなかった。
用意されていたのは、決定だけだった。
コーデリアは動かなかった。
視線は天蓋へ向いたまま、瞬きさえ数えるほどしかない。
承諾も、拒絶も、返ってこない。
グリードは、その沈黙を見て口元をやわらげた。
「今は何も言わなくていい。君が私を失って、どれほど苦しんだのかは、その姿を見れば分かる」
慈しむような声で、グリードは続けた。
「もう私が戻ってきた。安心するといい」
胸の奥で何かが軋んだ。
この人は、コーデリアが何も言えないことを、自分を前にして胸が詰まっているからだと思っている。
リーンは息を吸った。
喉が狭い。
それでも、声を押し出した。
「お引き取りください」
グリードの視線が、初めてリーンへ落ちた。
「お嬢様は今、お話しになれる状態ではございません」
語尾が震えた。
情けなかった。
グリードは、少しの間リーンを見下ろしていた。
「使用人が主人の縁談へ口を挟むな」
言葉は静かだった。
怒鳴られるよりずっと重かった。
縁談。
この人は、まだそう呼んでいる。
破棄したのは自分なのに、戻ってくればまた続きが始まると思っている。
自分は十五の侍女見習いで、目の前にいるのは公爵令息だ。
逆らってよい相手ではない。
主人の会話へ口を挟まない。
呼ばれるまで動かない。
教わったばかりの決まりが、頭の中で何度も繰り返される。
この一言で下がれば、誰も自分を責めないだろう。
侍女見習いにできることではなかったと、皆が言ってくれるだろう。
それでも、足は下がらなかった。
グリードはリーンを押しのけようともしなかった。
ただ、そこに人がいないかのように横を通り、寝台へ歩いた。
押しのけられるより、その無視の方がこたえた。
止めようとした人間が、この人の中では最初から数に入っていない。
リーンは慌てて回り込む。
寝台の縁と、近づいてくる靴の間へ、もう一度身体を入れた。
けれど、グリードはもうリーンを見ていなかった。
「コーデリア……」
シーツの上へ置かれたコーデリアの手へ、当然のように、手を伸ばした。
自分の物を確かめるような、ためらいのない動きだった。
考えるより先に、身体が動いた。
リーンは両手で、その手首をつかんだ。
「――離せ」
冷たい声だった。
指が震える。
喉が塞がる。
声が出ない。
出ないまま、瞼の裏を三週間がよぎった。
どちらでも構いません。
水色でも、白でも。
食べても、食べなくても。
窓を開けても、閉めても。
何を尋ねても、返ってくるのはそれだけだった。
閉じたままの本。
冷めて下げられた、小さな一切れ。
梳かした髪の仕上がりを、鏡で確かめてもらえなくなった朝。
失った恋のせいだと、この人は思っている。
違う。
リーンは、手を離さなかった。
「お嬢様は、あなた様を失って寝込まれたのではありません」
一度、息が詰まった。
それでも、続けた。
「あなた様に奪われ続けて、何も望めなくなったのです」
グリードの顔から、労わりが消えた。
腕が振られた。
つかんでいた指がほどけ、リーンの身体は簡単に投げ出された。
床へ肩から落ちた。
手のひらが擦れ、膝が敷物へ打ちつけられた。
息が一瞬止まる。
視界が斜めに傾いた。
寝台の脚と、卓の脚と、その上の水差しが、いつもと違う高さで見えた。
「無礼者が」
吐き捨てる声が、頭の上から降ってきた。
リーンは床から見上げた。
グリードが、こちらへ向き直る。
整った顔立ちが、今は別のもののように見えた。
社交界で長く女性たちの目を引いてきたその顔から余裕が消えていた。
分かってしまった。
次に立てば、この人は自分を打つ。
肩が熱い。
手のひらがひりつく。
ここで動かなければ、たぶん、これ以上のことは起きない。
遠くで、誰かが駆ける音がした。
廊下の向こうだ。
間に合うかどうかは分からない。
誰かが家族を呼びに走ったことは聞いている。
けれど、今の足音がその戻りなのかは分からない。
怖い。
立てば今度こそ殴られる。
それでもリーンは、床へ手をついた。
腕が震えて、一度では持ち上がらなかった。
擦れた手のひらが敷物に食い込む。
指へ力を込める。
膝を立てる。
「――いい加減にしろ」
グリードの手が、上がった。
視界の端で、開いた扉口にいくつかの人影が止まった。
けれどリーンは、振り上げられた手から目を離せなかった。
白いシーツが、かすかに動いた。
コーデリアの指が、布を強く握りしめていた。
これまで天蓋へ向けられていた碧の瞳は、床へ倒れたリーンを見ていた。
振り払われても、震える腕で起き上がろうとしているリーンを。
「その子に触れないで」
声が、寝台から落ちてきた。
グリードの手が止まった。
扉口の人影も、三週間ぶりに響いたコーデリアの声に、動きを止めていた。
リーンは息を呑んだ。
衣擦れの音がした。
痩せた指が白い布を引き寄せ、時間をかけて上体が起きていく。
長い群青の髪が肩から流れ落ちた。
寝台の縁へ、足が下ろされる。
床へ触れた爪先が、頼りなく揺れた。
三週間、この足はまともに床を踏んでいない。
コーデリアは天蓋の柱へ手を伸ばした。
指がかかるまでに、一度、空を掻いた。
柱をつかみ、そこへ体重を預けながら、ゆっくりと立ち上がる。
途中で、上体が大きく傾いだ。
リーンは床の上で息を止めた。
それでも、コーデリアは倒れなかった。
膝が震えている。
肩で息をしている。
伸びたままの群青の髪が、寝間着の背へ乱れて落ちている。
社交界で見せていた、隙のない伯爵令嬢の姿ではなかった。
今にも崩れそうな立ち方だった。
それでも、立っていた。
グリードは、その姿を見ていた。
何を見せられているのか分からない、という顔だった。
三週間前、正しい角度で礼をして「承知いたしました」と答えた令嬢と、目の前の人が結びついていないようだった。
コーデリアは、長く語らなかった。
碧の瞳がグリードを捉え、そして、静かに告げた。
「わたくしは、あなたとは結婚いたしません」
部屋の空気が止まった。
三週間前、この人は「承知いたしました」としか言えなかった。
自分の未来を、目の前の男に一方的に決められて、正しい角度で礼をした。
今、その人が、自分の口で決めていた。
リーンが言わせたのではない。
コーデリアが、自分の意思で選んだのだ。
床についた手のひらの痛みより、そのことが胸に満ちた。
「……なぜだ」
グリードの声が掠れた。
「君は私を失って、ここまで憔悴したのだろう。私が戻ってきたのに、なぜ拒む?」
一歩、コーデリアへ近づこうとする。
「もう遠回りは終わったんだ。君は、私を待っていたはずだろう」
背後で、硬い靴音が鳴った。
寝室へ踏み込んできたのは、レオナードと屋敷の警護役だった。
その後ろ、扉口には、公爵家の家令が立っていた。
レオナードはグリードと妹の間へ身体を入れた。
「押さえろ」
短い命令だった。
相手が公爵令息であることに、ためらう素振りはなかった。
警護役がグリードの両腕を後ろへ回す。
慣れた動きだった。
グリードが身をよじった。
「何のつもりだ。私は公爵家の――」
「妹の私室だ」
レオナードはそれだけ言った。
相手の身分を気にする素振りも、言い訳を聞く素振りもなかった。
続けて廊下から、アルベルトとエレオノーラが入ってきた。
「コーデリア……!」
エレオノーラは、グリードを一瞥もしなかった。娘のもとへまっすぐ進み、崩れかけていたコーデリアの背へ腕を回す。
「コーデリア……もう、いいのよ。座りましょう」
アルベルトは部屋の中央で足を止めた。
「ブランベルク公爵令息。ここは私の娘の私室だ」
声は低く、抑えられていた。
「別室で待つよう命じられていたはずだ。連れて行け。客室へ移し、扉の前に人を置け」
「待て、伯爵。私は話をしに来ただけだ。この使用人が勝手に――」
誰も、その先を聞かなかった。
警護役に腕を取られ、グリードは扉のほうへ引かれていく。
扉へ引かれながら、グリードは首だけを巡らせた。
「なぜ誰も、私の言葉を聞こうとしない」
本当に分からないという声だった。
床に手をついたまま、リーンはその背を見送った。
この人は、コーデリアの言葉も、リーンの言葉も聞かなかった。
そのことに気づいた様子もなかった。
◇
医師が呼ばれた。
リーンの怪我は、手のひらと膝の擦り傷、肩と肘の打撲だった。
骨に異常はないと言われ、薬を塗られ、包帯を巻かれた。
診てもらっている間、マレンがずっとそばにいた。
「痛むでしょう」
「……少しだけです」
「強がらないの」
マレンは、それ以上何も言わなかった。
ただ、リーンの背へ手を置いたまま、医師が終わるまで動かなかった。
厨房でリーンをたしなめた時と同じ、厳しくはない声だった。
コーデリアは、立ち上がった反動で寝台へ戻された。
医師が脈を診ている間、エレオノーラがずっと娘の手を握っていた。
長く話せる状態ではなかった。
呼びかけられても、返る言葉は短く、途中で息が続かなくなった。
事情の確認には、手当てを終えたリーンも同席した。
マレンが、グリードが私室区画へ入ってきたこと、奥方様の部屋の前で待機の場所へ戻るよう求めても聞き入れなかったこと、寝室の前でリーンを押しのけたことを述べた。
「わたくしが申し上げたのは、こちらは奥様のお部屋へ続く廊下でございます、という言葉です。あの方は、道は知っていると仰いました」
リーンは、グリードがコーデリアへ触れようとしたこと、自分がその手をつかんだこと、振り払われて床へ倒されたことを述べた。
声はやはり震えたけれど、途中で止まりはしなかった。
自分が侍女見習いの分を越えた振る舞いをしたことも、そのまま話した。
退室を命じたこと。
公爵令息の手をつかんだこと。
処分を受けるなら受けるつもりだった。
誰もそのことを咎めなかった。
レオナードと警護役は、扉口から現認したことを述べた。
床に倒れているリーンと、リーンへ向けて振り上げられたグリードの手。
公爵家の家令は、扉口から見聞きしたものを口にした。
開け放たれた扉、床のリーン、拘束されたグリード。
そして、コーデリア自身が復縁を拒絶した言葉。
家令が見ていない場面については、マレンとリーンの証言をそのまま書き留めた。
「公爵様へは、ありのままを報告いたします」
彼は一度も、主家の令息を庇わなかった。
その夜、グリードは監視の付いた客室から出ることを許されなかった。
リーンが寝室へ戻ると、コーデリアは目を開けていた。
碧の瞳が、扉から寝台までのリーンの動きを追った。
三週間、どこも見ていなかった目だった。
リーンは何も言わず、水差しを取り替えた。包帯を巻いた手のひらが、少しだけ痛んだ。
背中に視線を感じたけれど、振り返らなかった。
振り返れば、たぶん、余計なことを尋ねてしまう。
今日はもう、何も尋ねない日だった。
◇
翌朝、グリードは公爵家の家令の監督下で、公爵邸へ戻された。
同じ日、アーエルス伯爵家はブランベルク公爵家と皇宮へ正式な抗議を提出した。
長年にわたる婚礼の延期。
グリードの放蕩と、その後始末をコーデリアへ負わせてきたこと。
一方的な婚約破棄。
伯爵令嬢の私室への無断侵入。
伯爵家使用人への暴行と、殴打の未遂。
数週間が過ぎた。
その日、アルベルトは寝室へ入ってくると、寝台の脇の椅子へ腰を下ろした。
リーンは水盤を置き、壁際へ下がった。
「コーデリア。ブランベルク家の話がついた」
コーデリアは、天蓋から視線を動かして、父を見た。
「公爵家の家令殿が、あの日のことをそのまま報告した。だから、こちらの言いがかりだという話にはならなかった」
アルベルトは言葉を選びながら続けた。
調べは、あの日の一件だけでは終わらなかったこと。
過去の放蕩も、婚礼を延ばし続けた経緯も、後継者としてふさわしいかどうかという問題として扱われたこと。
公爵夫妻が、一人息子を甘やかし、後始末をコーデリアへ押しつけ、結婚すれば落ち着くと言って先送りにしてきた責任を認めたこと。
「公爵は……ご自分たちの落ち度だと仰ったそうだ」
アルベルトの指が、椅子の肘掛けを一度叩いた。
「一度でも本気で叱っていれば、と。今さらだがな」
リーンは壁際で、そっと視線を落とした。
公爵夫妻がどんな顔でそれを話したのかは、ここからでは分からない。
「公爵は、息子の廃嫡を陛下へ願い出た。継承は傍系の親族へ移る。陛下の裁可はもう下りた」
アルベルトは一度、息を吐いた。
「公爵ご自身も爵位を退かれる。夫人と隠居されるそうだ」
グリードは、当然自分のものになるはずだった公爵位を失った。
コーデリアは、それを聞いても笑わなかった。
当然の報いだとも言わなかった。
「……そう、ですか」
それだけだった。
リーンは、壁際でその横顔を見ていた。
コーデリアの十年以上が戻ってくるわけではない。
公爵位が誰のものになろうと、延ばされ続けた婚礼の年月は、どこからも返ってこない。
罰が下りたことと、コーデリアが良くなることは、別のことなのだ。
アルベルトもそれが分かっているようだった。
しばらく娘の手の甲を見ていた。
「お前が何かを決めるのは、まだ先でいい」
◇
花が届いたのは、それからしばらく経った朝だった。
薄紅と白を基調に、群青色の小花を一枝添えた、大ぶりの花束だった。
「皇女殿下からです」
マレンが低い声で言った。
「殿下付きの侍従の方が、旦那様へ口上を伝えていかれたそうよ」
殿下は、グリードからの求婚に返答する前に、公爵令息の以前の婚約について調べさせていた。
婚礼が何度も延ばされたこと。
その間もコーデリアが公爵夫人となるための教育を受け続けていたこと。
令息の放蕩の後始末を、アーエルス伯爵家が担い続けてきたこと。
そのすべてを知って、殿下は求婚を退けた。
不義理を働いた者を、自分の隣へ置くつもりはないと。
リーンは、その話を聞きながら、三週間前に自分が思っていたことを思い出した。
宮廷の慣例に収まらず、たびたび周囲を騒がせる方。
決められた振る舞いより、ご自身の意思を優先される方。
そう聞いていた。
グリードが「互いに理解し合える」と語っていたから、似た者同士なのだろうかと、どこかで思っていた。
違ったのだ。
「……お嬢様のことを、調べてくださったのですね」
「調べたのは、ご子息のことよ」
マレンは花束の包みを直しながら言った。
「その結果、お嬢様がどれだけのものを差し出していらしたか、殿下にも分かったということでしょう」
リーンは、花束を抱えて寝室へ入った。
窓辺の花瓶へ移すと、部屋の色が変わった。大ぶりの花が、朝の光の中でゆっくりと開いている。
「お嬢様。書状が添えられておりました」
コーデリアが、目だけでこちらを見た。
やがて、ほんのわずかに頷く。
その許しを待って、リーンは封を開いた。
短い文面を、声にして読み上げる。
「あなたが恥じることは何もない。
今は、誰のためでもなく休まれよ。
――サージェッツァ」
コーデリアは何も言わなかった。
枕へ頭を預けたまま、窓辺の花を眺めていた。
長い時間だった。
リーンは、その視線の先を追った。
誰のためでもなく休まれよ。
婚約破棄から今日まで、家族の言葉には、早く良くなってほしいという願いが滲んでいた。
どれも優しく、切実だった。
だからこそ、今のコーデリアには重かったのかもしれない。
皇女の書状は、何かを選ぶことも、誰かの願いに応えることも求めていなかった。
誰のためでもなく、ただ休んでよいと告げていた。
やがて、その唇の端が、ほんのわずかに緩んだ。
笑ったわけではない。以前のあの人に戻ったわけでもない。
けれど、確かに、何かがほどけた顔だった。
碧の瞳が、花からリーンへ移った。
リーンは寝台へ一歩近づいた。
呼ばれたわけではない。
ただ、見られたから動いた。
コーデリアは、少し息を継いだ。
それから、掠れた声で言った。
「リーン。アップルパイが食べたいわ」
厨房で頭を下げた日のことが、胸の奥からせり上がってきた。
小さな皿の上の、小さな一切れ。
林檎の甘い匂い。
冷めたまま下げられていった、あの一切れ。
食べたい。
婚約が破棄されてから、この人が初めて、自分のために口にした望みだった。
喉の奥が熱くなる。目の縁が焼ける。
それでもリーンは、侍女としていつもどおりに答えた。
「かしこまりました、コーデリアお嬢様」
そして、深く頭を下げた。
「……侍女としての返事は、もう聞いたわ」
頭上から、掠れた声が降ってきた。
「今度は、妹として顔を見せてちょうだい」
リーンは、ゆっくりと顔を上げた。
涙に滲む視界の向こうで、コーデリアは、幼い日の廊下と同じ目をしていた。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
何も望めなくなったコーデリアと、怖くても彼女の前に立ったリーン。二人が互いを守り、小さな一歩を踏み出す物語を楽しんでいただけましたら幸いです。
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