追放された男8/10
三体のウィザースケルトンも外れだった。ブレイズが落としたロッドはブレイズロッドと言われる。これがポーション作りに欠かせない素材だ。魔族と戦っていた時、これを得るために人々はこぞってネザー要塞を訪れたものだ。
通路を先に進む。右手に分かれ道があった。先ほど刺した松明のある通路だ。そのまま素通りし、真っすぐ進むと右に折れる。その角にチェストがあった。ネザー要塞では角の所々にチェストが置かれている。
開けるとネザーウォート三個と金の馬鎧一個が入っていた。どちらも貴重なんだけど、特にネザーウォートはここでしか手に入らない。ブレイズロッドと同じく、過去、人々がこぞってネザー要塞を訪れた理由の一つだ。
ネザーウォートはネザー要塞で栽培されていた菌糸、キノコのたぐいだ。ポーション作りの基本素材となる。チェストでも得られるけど、栽培されていたのが今もネザー要塞の特定の場所で勝手に自生している。
ウィザースケルトンが暗闇の中から現れた。ガシャガシャ鳴っていたのを聞いていたので、来るタイミングはよぉく分かっている。相手は一体、もちろんワンパン。相変わらずドロップは炭だった。
角から奥に行くと先は上と下へ別れる階段であった。ブレイズロッドとネザーウォートを手に入れたからには下へ行く必要がない。行ったとしても、リスクが増すばかりでそれに見合った目新しいアイテムも手に入らない。っとまぁ、普通は考える。
僕はそもそもポーション作りのためにここに来たのではない。ウィザースケルトンの頭蓋骨もいまだドロップしてないし、ここに来たからには要塞の下に行かなくてはもったいない。迷路を辿り、下階へ歩を進めていく。
ブレイズ、ウィザースケルトンを何体倒したか。得られるものはブレイズロッドと炭。たまにスケルトンが混じって弓を射かけて来る。チェストも多分七、八個は開けたかと思う。三階降りた所でやっとウィザースケルトンの頭蓋骨がドロップした。
五十体はいってないけどなぁ、ちょっと凹む。ほぼドロップ確率のままだった。まぁ一個手に入れれば十分。僕にはアイテム増殖グリッチがある。
さらに下に降り、もう一つの欲しいものを探す。結構降りてきたからもうそろそろだろうなと思っている所に吹き抜けの空間に出くわした。そこには幅広い階段だけがあり、それは下へ伸びている。
ビンゴだな。階段を降りていく。三階降りた所が終着点だった。そこにはネザーウォートの畑が広がっていた。僕が今回来たかった場所だ。
もちろん、ネザーウォートに用があるわけでない。僕の目的はポーションを作ってGCLで活躍することと違う。GCL自体をぶっ潰すためにここにやって来た。
ネザーウォートはソウルサンドの上に自生している。僕はそのソウルサンドにスコップを刺す。ソウルサンドはソウルサンドの谷にごまんとあった。けど、ウィザースケルトンの頭蓋骨も手に入れなければならなかった。ここに来れば両方とも手に入る。ソウルサンドの谷を探すまでもない。
記号化したソウルサンドに触れてインベントリに収納する。
お仕置き準備完了!
☆
ポータルを出た。灰色の荒廃した風景ががらりと変わっていた。石ころの山を縫って進む道は賑やかで、多くの人であふれている。言うまでもなく誰もがフル装備のPVP勢だ。GCLが開催されるとあってこぞってやってきたのだろう。人の波は海岸へと吸い寄せられるように向かってた。
後ろからボンと肩を当てられた。ポータルから誰かが出てきたようだ。
「じゃまだ、どけ」
「ぼぉーっと突っ立ってるな」
ポータルの前で足を止めてたから、後ろから来たやつにぶつかったようだ。
「あ、すいません」
道を開ける。ポータルからはぞくそくと人が出て来る。皆、人波の後ろに加わっていく。
おっしゃる通りぼぉーっと突っ立っててもしょうがないんで、僕もあとに続く。道は込み込みで思うように歩けない。まるで王都で行われる花火を見に行く列のようだ。
ニック・デイリーとの待ち合わせ時間にはまだまだ余裕があった。流れに逆らわず進む。多くの人が砂利を踏む砂煙で辺りはモウモウとしていた。
やがて、海岸に出た。昨日の静かな風景と打って変わって海岸は芋を洗うようだった。山向こうからも人の列の波があった。海岸線のずっと向こうにも。
どんだけの人がここに集まって来てるのか。ざっと見、五万か、十万。いや、もっとか。百年前の最終戦争当時、王都に終結した軍勢が思い起こされる。
海岸からは水の四角柱の横、蓮の葉建築に向けて海面の上を行く道がいくつもクラフトされていた。昨晩からレシピブックでクラフトしたものだ。一つの道幅は人が二人三人横に並んで歩ける程度である。
海岸からだけではない。遠く海の向こうからも道は蓮の葉建築に繋がる。海の先に島があるに違いない。道を行く人はどれも途切れなく連なっていて、誰もが蓮の葉建築を目指していた。
ポータルは僕が来たやつ一つだけではなかったんだ。いくつも設置されていた。ニック・デイリーとつるんでいた二人はバーサーカー・ジョーと出くわして逃げていったけど、おそらくは他のポータルに場所を移したに過ぎない。
海上の道は今現在もクラフトされ続けている。海岸に人が溢れているんだ。自ら道を作って会場を進む者が後を絶たない。ボートで海を進む者もいる。目を凝らせば、蓮の葉建築の上空に鳥のように翼を広げて旋回する人たちの姿もあった。
エリトラだ。魔法がなかっても空を飛べるアイテム。エンドシティに行かなくては手に入らない。魔族と戦っていた頃は世界に多く出回っていたけど、こんな所で目にするとは思わなかった。
名も無き者から歴史に名を残す名家の者まで。まさに世界規模の祭典。ここで起きたことは人々の記憶にくっきりと刻み込まれるだろう。まぁ、悪い意味でだけどね。
お仕置き認定が何十万規模で草




