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追放された男7/10

僕は今、魔法の地下世界ネザーの上空にいる。天井のある空から溶岩の滝が幾つも流れ落ちていた。眼下には溶岩の海が広がり、空気中には溶岩が発砲してできた細かい灰が舞う。


溶岩の海を進めば必ずと言っていい、ネザー要塞に出くわすはずだ。装備は剣とか全てダイヤモンド製だ。地上世界《オーバーワールド》でブランチマイニングしてクラフトした。


魔族と戦っている頃、多くの人がネザーと地上世界《オーバーワールド》を行き来していた。ポーションを作るために必ず使う材料がある。それはネザー要塞にしかなく、それを得るためにそこに行く必要があった。


視界を遮る靄《もや》の向こうに、大きな白い塊がぼやっと二つあった。近付くにつれその姿がはっきりとする。


真っ白いクラゲの風船みたいなやつ。ハッピーガストならぬ、ガストだ。ネザーの住民で、飼いならすなんてとんでもない。やつらはひとたび人を視認すれば火の玉を吐いてくる。溶岩の海に赤く照らされ、不気味にふわふわと浮いていた。


ガストがいるということは十中八九、この近くにネザー要塞があるってことだ。大体やつらは上空からネザー要塞を守るようにその周りを旋回している。


あった。ネザー要塞だ。入江から突き出た岬のその先に、尖った山の島がある。ネザー要塞はその山に半分めり込む形で、高く四角い切り立った壁をその山肌に晒していた。


ポーションの材料はネザー要塞に眠るチェストの中にあるにはある。けど、ほぼネザー要塞に巣くうモンスター、あるいは菌糸から得られる。例えばガストからは再生のポーションの素材、ガストの涙だ。過去、多くの人は狩りや採取を行うためネザー要塞を目指した。


岬とネザー要塞を繋ぐ大きな橋が見えてきた。飛行魔法がない場合、ネザー要塞に潜入するにはまずこの橋を渡らなくてはならない。もちろん、僕はそれに当たらない。ガストに見つからないよう、橋を影にして低空飛行で近付いていく。


面倒な戦いは避けたい。今回の目的は再生のポーションではないし、入る前から騒ぎを起こしたくない。橋の上にはスケルトンとゾンビピグリンがうようよしてた。


ゾンビピグリンとはその名の通り、豚の頭の人型のモンスター、ピグリンのゾンビだ。こっちから攻撃しない限り向かって来ない。ドロップ品は腐った肉か金塊。たまに金のインゴットをドロップする。


スケルトンも含めて、わざわざネザー要塞まで来て手に入れる代物ではない。要塞に静かに潜入し、欲しいものだけ取って帰る。こいつらと敵対して要塞内部を活気付かせても仕方ない。


橋の下、要塞壁面にとりついた。橋の欄干に手を伸ばし、掴むとひょいっと飛び越える。内部に入るとそこはちょっとした広間になってて、真ん中に溶岩の井戸がある。道は三方向に延びていた。


取り敢えず真ん中の通路か。こっからはほぼダンジョンだ。入り組んだ迷路を進んで行くことになる。選んだ通路の先はすぐにT字路になっていた。


来た通路に帰る目印となる松明を挿す。左へ進むと現れたのはウィザースケルトン二体。早速のお出ましだ。僕の欲しいものの一つをこいつが持っている。


といってもそれは、PVPに勝つためのポーション素材ではない。そのアイテムこそがあの馬鹿げたPVP大会をぶっ潰すのにふさわしい。


ウィザースケルトンはスケルトンを墨色にし、頭一つデカくした姿をしている。武器は弓でなく剣で、猛然と距離を詰めて斬りかかって来る。


攻撃を受けると漏れなく衰弱の効果を付与される。時間経過ごとにダメージを受け、それは解除しない限り死ぬまで続く。


その見た目からゾンビ系と思われがちだ。けど、治癒系のポーションや光が弱点ではない。その特異な点からもウィザースケルトンがウィザー系と呼ばれる所以だ。


ドロップ品も異質だ。だいたいは骨や石炭でそこら辺にある物だけど、2%の確率でウィザースケルトンの頭蓋骨がドロップする。それが僕の欲しいものの一つ。


拳に氷属性を付与した魔力を込める。向かって来るウィザースケルトン二体をそれぞれワンパンで屠《ほふ》る。


ドロップしたのは二つとも石炭。運はある方だと思う。けど、流石にしょっぱなはないか。通路を奥へ進んで行く。背後からモンスターの気配。僕を追って来てるようだ。前は行き止まりになっていた。


相手が来るのを待っていてもしょうがない。折り返し、また来た道を戻る。突然、周囲がボオッと燃え上がる炎に照らされた。暗かった通路にモンスターの姿が浮かび上がる。ウィザースケルトンが三体。それに炎を発したモンスターが一体。


そいつはふわふわ浮く熱の核に二つの目を持つ。ブレイズと呼ばれるモンスターだ。自身の周りを十二本のロッドを旋回させていた。


僕に炎の球を一つ二つ三つと飛ばして来た。当たった時のダメージはほぼないけど、そのあとの燃焼ダメージがあなどれない。僕の場合は火炎耐性+20を全身に施しているからなんてこともないんだけどね。


一つ付け加えるならウィザースケルトンも火炎耐性を持っている。隣でブレイズが炎を吐いたとしても、たとえ溶岩の中に落ちたとしても死にはしない。


通路がパッと暗くなった。ブレイズの纏っていた炎が消えた。炎を飛ばすインターバルに入ったようだ。暗闇の中、ガシャガシャと足音が近づいて来たかと思うとパッとウィザースケルトン三体が目の前に現れる。全身が墨色なんで闇に同化して油断ならない。三つの剣が振り下ろされる。


三体ともカウンターでワンパンだ。ウィザースケルトンらが倒れたその向こうで、ボッとブレイズが燃え上がる。炎の発射準備は整ったようだ。けど、そうはさせない。一歩、二歩と跳んで拳を食らわす。ブレイズはロッドをドロップして消え失せた。


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