↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
44/51

追放された男3/10

ジョー・オルグレンはまさに僕の目の前にいる。あんだけ剣を振り回してたのに全く息が切れていない。地面に伏したニック・デイリーを蔑んだ眼で一瞥すると立ち去ろうとした。


けど、なぜかそこで足を止めた。向き直ると僕をじぃーっと見る。その眼光は険しく、品定めするようでもあり、敵を見るようでもある。


いやいやいや、僕はルーキー狩りの被害者の方。さっき見たでしょ。あんたが斬った男に弓矢で胸を狙われていた。


手をブルブル振ったり、ペコペコしたりもした。でも、ジョー・オルグレンの眼光は鋭くなるばかりで、僕の眼の奥にある何かを探らんとしている。


こいつは言うなれば真のPVP勢。その界隈で名が通っている。おそらくは本能で察知した。僕が強いって。


真のPVP勢なら総じて強敵と戦いたいって願望がある。強いやつと出会ったら手合わせぜすにいられないんだ。なんか許してもらえなさそうにない。案の定、ジョー・オルグレンが口を開いた。


「お前。何者だ」


だろうな。当然僕らは縁もゆかりもない。強いはずの僕がルーキー狩りに目を付けられていたのも解せないはずだ。戸惑うのも仕方ない。でも、僕の言うことはいつも同じ。


「どこにでもいる名も無い開拓初心者です。もちろんPVPなんてやったことがありません」


ジョー・オルグレンはニヤリと不敵に笑った。自分の問いかけが愚問と悟ったんだろう。剣を構えたかと思うと殺気を放つ。


「四の五も言うまい。手合わせすれば分かるというもの」


やっぱ、ですよね。ジョー・オルグレンは足を蹴って、グンッと目の前までやってきた。僕はジョー・オルグレンの間合いの中に入る。


刹那、右、左とジョー・オルグレンの袈裟斬りが僕を襲う。僕はというとその剣筋に合わせて、左、右と体を斜に傾けた。矢をも落とすほどの高速の一閃はどちらも空を切る。


ジョー・オルグレンは慌てない。眉一つ動かさず、まるで必然であったかのように三手目を放つ。


それは首を刈り取らんとする強烈な横薙ぎ。僕はのけぞって、風切るような斬撃を目と鼻の先で見送った。ぱっと視界に空が広がる。雲一つない真っ青の空だ。そこにキラリと光る剣がまるで空を二つに割るように現れる。


縦一文字の脳天唐竹割。僕を三枚におろそうとでもいうのだろうか。ちょっと腹が立った。右手の指に魔力を集める。落ちてくる剣を、その親指と他の四本の指で挟むように掴む。


僕流真剣白刃取り。


剣は僕の頭上でピタリと止まった。これにはさしものジョー・オルグレンも度肝を抜かれたようだ。雷に打たれたかのように目をひん剥き、固まっている。


指で摘まんでいるからと言ってあなどるなかれ。押そうが引こうが、僕の手から剣を取り戻すことは叶わない。例えそれが鍛え抜かれたジョー・オルグレンの膂力をもってしてもだ。


ただ、本来の剣技キルオーラなら相手が僕だとしてもこのようにはいかない。ジョー・オルグレンのキルオーラは肝心なところが掛けている。


魔力だ。間合いに魔力を充填させたうえで、剣にも魔力をまとわせる。間合いに入った異物を魔力が察知し、間合いから異物を排除するため剣が自動追尾する。魔力が強ければ強いほど剣のスピードは増し、威力は上がる。


魔力のないキルオーラは僕に言わせれば、ルーのないカレーだ。当然、僕のような魔力持ちには相手にならない。


ニック・デイリーのことが気になる。ジョー・オルグレンが我に返って前蹴りでも食らわして来たら面倒だ。驚いて固まってくれているうちに勝負を着けさせてもらう。


ジョー・オルグレンの顎に左フックをかすらせた。それで十分。脳がグラっと揺れたはずだ。ばっちり体が倒れて行った。砂煙の中、ジョー・オルグレンは地に大の字になってピクリとも動かない。


ニック・デイリーに駆け寄る。首筋に手を当てた。脈があった。早速、治癒魔法を施す。背中に刻まれた肩下から腰までの斬り傷が瞬く間に塞がっていく。


ゲホゲホッと、ニック・デイリーが咳込んだ。ううッと呻きながら手を付いて起き上がる。僕の胸倉を掴み、寄りかかって来た。


「バーサーカー・ジョーは?」


まずは助けてくれてありがとうでしょ。


「あ、あそこです」


指差した。そこにはジョー・オルグレンが地に大の字になって伸びている。ニック・デイリーは二度見した。


「倒したのか⁉」


「そ、みたいですね」


ニック・デイリーはふらついた足でジョー・オルグレンに近付く。足先でその太もも辺りを二度三度蹴った。


息があるのが分かったようだ。インベントリから水の入ったバケツを取り出し、その水をジョー・オルグレンの顔にぶっかけた。ジョー・オルグレンはうわっと声を上げ、跳ね起きる。


「バーサーカー・ジョー! 負けたからには分かるな!」


自分は負けたのにえらい上から目線で草


ジョー・オルグレンに文句はないようだ。インベントリに収納していたアイテムを潔く全部取り出した。防具も脱ぎ捨て、インナーだけになってポータルへ向かう。去り行くその大きな背中に向かってニック・デイリーが叫んだ。


「おまえを倒したのはニック・デイリー! ニック・デイリーだ! その名前をしっかり頭に叩き込んどけ! いいか! ニック・デイリーだぞ! 忘れるな!」


ちょっちょっちょっ、待ってよ。それだとジョー・オルグレンは絶対に僕のことをニック・デイリーだと思ってる。


っていうかこいつ、倒したのかってさっきの言葉。“俺が”倒したのかって意味?


確かに僕に助けられたって自覚もなさそうだし、まさかな。もしかして、本当に自分が倒したと思ってる訳? 


んな訳ない。絶対分かってやってるわぁ。


そもそもこいつはルーキー狩りをするようなやつだ。成果や手柄の横取りは他人が傷つく行為だってこと、全く理解出来ていない。いや、横取り自体が悪いことだと思ってないのかもしれない。言ったもん勝ち、アピールしたもん勝ち、奪ったもん勝ち、それが実力社会だと信じてる。


根っからの、人の手柄は自分の手柄で草


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。