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命短し恋せよ乙女13/16

急いでオールを漕ぎ、ボートを岸に付ける。ブリジット・エリントンを抱きかかえ、岸に上げた。


ゆっくりと寝かす。顔は青白い。これは普通に気を失っているわけじゃない。首筋に触れ、脈を診る。かなり弱い。ブリジット・エリントンの胸に手を当てた。


闇御津羽くらみつは


治癒魔法を唱えた。けど、顔に生気が戻らない。それどころか表情が苦痛で歪んでいく。なんで?


「しまった」


胸に当ててた手を慌ててひっこめる。


「これはもしや、癌」


大賢者ピピンや星魔導士クリスタならいざしらず、僕の治癒魔法だったら悪性の腫瘍も活性化させてしまう。ブリジット・エリントンを抱き上げた。とにかく、拠点に戻る。飛翔魔法を唱えた。


地底湖の上を飛び、川が流れる洞窟を突き進む。巨大空洞に出ると上昇し、天高く舞い上がると一直線に塔へと向かった。


ブリジット・エリントンが大量にガストの涙を所持していた理由も分かった。再生のポーションを造るためだ。けど、それは逆効果だ。癌細胞を活性化させてしまう恐れがある。もしかして、ブリジット・エリントンもどこかでそれに気付いたのかもしれない。


ハッピーガストを手に入れるなら、難易度はかなり上がるけど、ガストの涙を使わない方法もある。ブリジット・エリントンは当初それを考えていたのかもしれない。幸か不幸かガストの涙が不用になったことから一番実現性の高い、乾燥したガストのスポーンに賭けた。


僕の力ではこの子の痛みはもちろん、命を助けることなんて出来ない。ただ、ちょっとでも生きながらえる可能性があるとしたらそう、エンチャントされた金のリンゴ。


再生の効果があると同時に一時的にライフを増やすことが出来る。ブリジット・エリントンにとってはどっちに転ぶか分からないもろ刃のようなものになるけど、やってみる価値はある。


塔に着いた。玄関ドアを開け、階段を上がる。ブリジット・エリントンをベッドに寝かせた。濡れたタオルみたくぐったりとしていてまるで死んだようだ。首筋に指をあてる。弱く、遅かったけど、脈があるのを感じ取れた。


待ってろよ。今、取って来てやる。巨大空洞の奥、そこには魔族が造った坑道があった。多くのチェストがあり、スポナー部屋もある。エンチャントされた金のリンゴがある可能性は大だ。


部屋を出ようとした時、壁に書かれたバケットリストが目に入る。


冒険をする

オウムガイの殻を手に入れる

スライムボールを手に入れる

エンダーパールを手に入れる

ロマンチッククルーズをする

桜がみたい

花を贈られたい

サプライズギフトを貰う

落ち葉で遊ぶ

雪の上に名前を書く

雪だるまをつくる

そり遊びをする

スノーエンジェルをつくる

空を飛ぶ

星空観察


バケットリスト。それは未来への地図でもあったが、死ぬまでにやりたいことリストとも、棺桶リストとも呼ばれてた。


ブリジット・エリントンは自分が余命いくばくもないことを知って、あえてこの地を選んで王都を離れたんだ。


僕を“回し者”とか王都から来たのとか言っていた。家出同然で飛び出したのだろう。ガストの涙とか、きっと他にも高価なものも持ち出した。


まさに、命懸けだった。


せめてバケットリストを埋めてやりたい。リストには、エンダーパールを手に入れるとある。魔族の坑道にはエンダーマンが現れる。エンチャントされた金のリンゴをゲットするついでにそれもとってくることにする。


塔を出ると上空に舞い上がる。一直線にくうを切り、西へと向かう。あっというまに巨大空洞。森に大きく開いた入口へ勢いそのまま飛び込んでいく。底に到達すると川に沿って滑空、地底湖の谷で速度を上げる。坑道のある岸に着地した。


坑木がはめ込まれた入口に松明が灯されている。中に入っても坑道は明るく、等間隔に坑木と松明が延々と続く。打ち捨てられたトロッコがあった。途切れ途切れの線路が坑道の奥へ奥へと向かう。


風属性の魔力をまとう。そして、視線を上下左右、坑道の行き先に関係なく地中全体に巡らせる。


僕はレシピブックの魔術式をいじっている。障害物を透かしてチェストだけを見ることが出来た。視覚的にはチェストの箇所がその形をかたどって黄色にマークされている。チェストの位置は把握した。


エンチャントされた金のリンゴだけを手に入れるっていうなら、坑道を使わず、魔法で掘削して直線的に進むってのが手っ取り早い。けど、エンダーパールも手に入れたい。エンダーパールは基本、エンダーマンのドロップアイテムだ。


低確率でチェストに入っているってこともあるっちゃぁある。それは取り敢えず、入っていたらラッキーだとぐらいに考えておく。はしょらず坑道を辿っていく。早速矢が飛んで来た。スケルトンのお出ましだ。


三体が盛大に矢を射かけてくる。坑道のレールが走っているところは松明で照らされていた。やつらがスポーンするのは道をそれたあい路の中でだ。


矢にかまわず前進する。いくら矢を放とうが風属性の魔力をまとっているからかすりもしない。三体ともワンパンで蹴散らした。


効率よく進むために目印もかねて松明を挿していく。一個目のチェストはクモのスポナー部屋にあった。部屋中クモの巣で覆われていたけど、何ら問題はない。僕が通るとクモの巣は散り散りになって消えて行く。クモがカサカサと部屋の壁に大量に這っていた。


僕を見るなりガーッと吠えて僕に飛びかかって来る。腰を落とした。


「流星、群!」


風をまとった連続の拳攻撃。残像で何十もの拳が僕を取り巻く。クモたちは瞬殺。残ってたクモの巣も取り払われて年末の大掃除した後のようにスポナー部屋は綺麗さっぱり見違えた。また湧いてきたら面倒なんでクモスポナーに松明を挿しておく。


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