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命短し恋せよ乙女11/16

滝つぼの前に着陸させ、手綱をブリジット・エリントンに手渡す。ハッピーガストのまん丸い頭を滑って地に降りるとリードを岩に結んだ。


インベントリのホットバースロットからトウヒのキューブブロックを取り出し、それを斜に積み上げて簡易の階段をクラフトする。ブリジット・エリントンがそこを下りてきた。ぐるり辺りを見回すと先ほどの輝くような表情が曇ってる。


岩壁にちらほらクモの姿が見える。カサカサと岩の表面を移動していた。なんせ空洞は王都の闘技場を丸のみできるほどの大きさだ。湧き潰しは結構したつもりだったけどやっぱり無理がある。


「リードを外してあげて」


ほえ?


「ハッピーガストは放ちます。私たちがいない間にもし襲われたら可哀そうでしょ」


確かに可能性としてはあり得る。モンスターは基本、家畜は襲わない。やつらの狙いは人間だ。けど、モンスター同士となればどうか。世界の最果てとも、世界の深淵ともいわれるジ・エンドではエンダードラゴンとエンダーマンが一触即発の関係で同居している。


その辺にいるスケルトンやゾンビだっておんなじだ。不可抗力で一体のスケルトンが仲間のスケルトンを射抜きもすればすぐ同士討ちを始める。クリーパーなんてそもそも仲間意識なんて微塵もない。仲間がいようがいまいがすぐそこで自爆する。


放すのはいいとして問題はどうやってこの巨大空洞から出るかだ。せっかく苦労して手に入れたハッピーガストももったいない。


空を自由に飛べるんだぜ。星空の散歩ももう二度と出来ない。夢だったんだろ? あんた、それで本当にいいのか?


空洞の外に出してどこか安全な場所、例えば大きな木の上とかにリードを一旦繋いでおいてここに戻ってくる、でいいんじゃないかい。


「ここに簡易シェルターを築かれては。開拓主様はそこにいてください。その間、僕がハッピーガストをどこか安全な所に繋いでおきます」


「いいえ。必要ないわ。ハッピーガストも自由になりたがっている」


はぁ? マジか。支配大好き王都の貴族とは思えない発言。


乙女心は聖人君主で草


はぁー、ったく。貴重なガストの涙もチャラにして、わざわざネザーにも行ってやったのに。後でだだをこねるなよ。


「分かりました。で、帰りはどうします?」


「あんた、ここに来たんでしょ。ハッピーガストなしで」


は! そうだった。まさか飛翔魔法で来たとは言えないし。


「趣味がロッククライミングでして」


うっそでーーす。


「ふうぅぅん。私には無理だからトンネル掘ってね」


レシピブックのツルハシなら訳ない。お安い御用。ダイヤ百個採って来いって言われるより百倍まし。とはいえやっぱり時間はそこそこかかる。いずれにせよ簡易シェルターは必要だ。


「分かりました。じゃぁ早速リードを外しますね」


ブリジット・エリントンはハッピーガストをかかえるように抱いて、さよならをした。リードを外すとハッピーガストはゆっくりと舞い上がる。その姿が空に消えてしまうまでブリジット・エリントンはずっと手を振っていた。


それから僕らは川に沿って洞窟を奥に進む。ブリジット・エリントンは沈んだ様子だった。やっぱりハッピーガストを逃がしたことに後悔しているんだろう。いくらも行かないところで広い空間に出る。


でっかいスライムが何匹もいた。スライムチャンクだ。ブリジット・エリントンは、うわぁぁっと声を上げる。


「スライムだー! それもいーーっぱい!」


機嫌は治ったようだ。でっかい緑色のゼリーがやすっぽちいゴムボールのようにそれぞれ跳ねて僕らに向かって来る。


ブリジット・エリントンはやるきだ。インベントリから鉄の剣を取り出す。構えるけど、剣が重くて剣先が地面についてしまってる。


意気込みは買うけど、そりゃぁ無理ってもんだ。ブリジット・エリントンを背にして前に立つ。向かって来るスライムは六体。


「ちょっと待っててくださいね。今、スライム祭りにしてあげます」


「スライム祭り?」


「そう。スライム祭り」


インベントリから鉄の剣を取り出し、大スライムを倒していく。大スライムは二体から四体の中スライムになり、その中スライムを倒すと二体から四体の小スライムになった。結果、四十体ほどが洞窟を所狭しとピョンピョン跳ねている。


「ね、スライム祭りでしょ」


「うわぁぁ、ほんとだぁー」


「さぁ開拓主様、出番ですよ」


と、その前に。


「こちらをお使いください」


木の剣だ。これなら女の子の力でも十分扱える。ブリジット・エリントンは不服のようだ。ブーって顔をしている。


「ちっこいスライムに鉄の剣はもったいないですよ」


スライムの一体がブリジット・エリントンに向けてピョンと飛んで来る。木の剣を握るブリジット・エリントンの手をとった。その剣先を飛んでくるスライムに向ける。スライムが勝手にブスッと剣に突き刺さる。ポロリと記号化したスライムボールがドロップした。


「ね。簡単でしょ。スライムの動きをよく観察して、飛んでくるスライムに剣先を向ける」


ブリジット・エリントンの表情に笑みが溢れた。かと思うと、うおぉぉぉーっと掛け声を出して飛び交うスライムの真っただ中に入ってく。


最初は恐怖心もあって反射的に剣ではたこうとしてた。小スライムの体当たり攻撃はダメージ値0。安心してみてられる。


何度かスライムの体当たりをくらってこんなもんかと恐怖心がなくなったのか。それとも、負けん気が恐怖心に勝ったのか、ブリジット・エリントンは飛んでくるスライムにちゃんとタイミングを合わせられるようになった。


「どんなもんじゃぁぁい‼」


コツもつかんだのか余裕も出て来て、倒すたびに僕にドヤ顔も向けて来る。


セリフとドヤ顔がキャラ崩壊で草


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