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命短し恋せよ乙女10/16

石積みの壁をごりごりこすって文字を記したんだろう。お姫様抱っこのブリジット・エリントンをベッドの上にゆっくりと降ろす。


壁に沿って歩いた。文字はこう書かれている。


冒険をする

オウムガイの殻を手に入れる

スライムボールを手に入れる

エンダーパールを手に入れる

ロマンチッククルーズをする

桜がみたい

花を贈られたい

サプライズギフトを貰う

落ち葉で遊ぶ

雪の上に名前を書く

雪だるまをつくる

そり遊びをする

スノーエンジェルをつくる

空を飛ぶ

星空観察


これはバケットリスト。夢を日々の雑事に埋もれさせないための、未来への地図のようなもの。


ブリジット・エリントンがハーネスをなぜ事前に持ってたか謎が解けた。僕がハッピーガストを手に入れる入れない関係なく、空を飛ぶのがずっと前からの、この子の夢だった。


一階に降り、ソファーに横になる。ブリジット・エリントンがこの地に来たのは開拓するためではなかった。バケットリストを埋めるため。


ふふふ。思わず笑いが込み上げてくる。エリントン家のお嬢様の気晴らしか。バケットリストにあることはなんでもないようなものばかりだったけど、確かに御大層な御身分では一生かかっても実現しまい。


きっと黙って家を出て来たんだろうな。王都から来たのかどうか僕を警戒してたもん。僕のこと、回し者とか言ってたし。


結局なんてことはなかった。僕のポータルは今回やっぱりバグってた。じゃなかったら、ブリジット・エリントンが開拓目的じゃないってとこに引っ掛かったのかな。それとも家出娘ってとこにかな。


まぁいいさ。乗り掛かった舟だ。ブリジット・エリントンも満足すりゃ家に帰るだろ。


ちゃっちゃと終わらせるか。本当にヤバイやつらはどっか開拓地でのうのうと暮らしている。世のため人のため、僕はそいつらに会い、自分たちの非を分からせてあげないといけない。





「起きなさい!」


ブリジット・エリントンの声?! そうだ。僕は許しもなくここに泊まったんだ。


「出かけるわよ。寝ている暇なんてないの」


ソファーからゆっくり身を起こす。ブリジット・エリントンより先に起きるつもりだったけどしくじった。どれくらい寝てたんだろう。今何時かな。出かけるとうからには結構寝坊したんだ。部屋は湧き潰しのために明るい。


ぼぉっと立ち、窓際に向かう。カーテンの裾をぺらりとめくる。外は薄明るい光が積もる雪を照らしていた。


朝ぼらけ? 


めっちゃ早いじゃないっすか。振り向くとブリジット・エリントンが腰に手を当ててプンプンしてる。


「冒険に行くの」


えっ? そうか。バケットリストに、冒険をするってあった。にしても、昨夜はまぁまぁ遅かった。


「いますぐですか?」


「もちろん」


ブリジット・エリントンはすたすたとテーブルへ向かう。そこにはすでにもう、ピクニックバスケットと水筒があった。それを手に取る。


「スライムボールを手に入れたところに案内しなさい」


弁当持ち!


乙女がめっちゃ張り切ってて草


ブリジット・エリントンはというと玄関扉を開け、自らクラフトした搭乗タラップへと向かった。ハッピーガストで移動するつもりだ。僕はサクラの袂に走った。幹からリードを外し、搭乗タラップに向けてハッピーガストを誘導する。


ブリジット・エリントンはタラップの上で待ち受けていた。ハッピーガストが傍に来ると、えいっと飛び乗る。僕もあとを追ってタラップを駆けあがり、ハッピーガストに飛び移る。


リードが外れてフリーとなったハッピーガストはゆっくりと回転しながら上昇を始めた。座席に腰を落とすと手綱を握る。スライムチャンクがあった巨大空洞は絶景スポットでもある。見たら驚くぞー。しっしし。今から楽しみだ。


冷気耐性の付いた魔力をブリジット・エリントンにもまとわせる。進路を西に、昇る朝日に背を向けた。


雪をかぶった森は飴色に輝いている。振り向くと霞みがかった森に伸びる朝日の光芒、木々のシルエット。僕らはまるで光に後押しされているように前に進む。


ブリジット・エリントンが僕にコップを差し出した。白い湯気と一緒にふわりとコーヒーの香りが鼻をくすぐる。ハムとチーズがたっぷりなサンドイッチも手渡された。


うまそ。急に腹が減って来た。ブリジット・エリントンはというと自分のコップにコーヒーを注いでる。そして、ピクニックバスケットからビスケットを取り出した。


あ、ああ。乙女は殿方の前で大口を開けてサンドイッチなんか頬張れないってか。


乙女心は恥ずかしがり屋で草


「どうぞ。私にお構いなく」


では、遠慮なく。がぶりとサンドイッチにかぶりつく。


うっめぇー。


ブリジット・エリントンに向けて拳を突き出し、親指を立てた。ブリジット・エリントンは、ふふふと笑う。僕らは朝の新鮮な風の中、大空を貸し切りに、それぞれの朝食を楽しむ。やがて僕らの目前に、森を穿つようにでっかく口を開けた空洞が姿を現した。


ゆっくりと高度を下げて近づいていく。空洞の口の大きさはハッピーガストが入っても余りある。ブリジット・エリントンに行くよって目で合図する。うんと頷いた。そのまま巨大空洞の中へハッピーガストを降下させる。


さぁ、自然の大迫力をご覧ください。


岩の壁を落ちる滝はこの前来た時よりも太くなっていた。迫力はさらにパワーアップしていて石壁や滝つぼを打つ水音もうなりを上げている。滝しぶきは舞い、大きな虹がかかる。ブリジット・エリントンは、うわぁぁぁっと声を上げていた。


思った通りの反応で草


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