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命短し恋せよ乙女7/16

ガスリンをハッピーガストに育てるには雪玉をたらふく与えないといけない。ここは都合よくどこを見ても雪だらけ。レシピブックのスコップで雪を掻く。雪玉がどんどんドロップしていった。


触れてインベントリに収納していく。その間、ガスリンはというとクンクン鳴いていて、離れていったなと思ったらまた僕のもとに戻って来るを繰り返す。たちまち雪玉が一スタック集まった。


それをインベントリから取り出す。手に持つと、ガスリンはしっぽを振って寄って来る子犬のように僕に近づいて来る。はいよってあげる。一口でペロリ。緑に光る星形のパーティクルがキラッキラだ。


「そんなに上手いか。そうか。いっぱいあるぞ」


「くうぅぅぅぅん」


「そうか。そうか。いっぱい食べな」


ガスリンはクゥンクゥン言いながら雪玉を一生懸命食べる。一スタックなくなるなぁって思っていたところ、ガスリンが変化した。ボンっと大きく膨れ上がる。


「ふるるーーー」 


出た! ハッピーガスト!


直径五メートル。体の大きさは変わっても風貌は全く変わってない。でも、触手の長さは体に比べ長くなったかも。微笑みあふれ、満ち足りた顔をしている。


めちゃでかい! めちゃかっこいい! んで、ふわふわ浮いている!


いてもたってもいられずリードを付ける。この興奮をブリジット・エリントンにも共有したい。飛翔魔法で飛び上がる。ハッピーガストもリードに引っ張られ付いて来る。空の散歩といこうや。


気分は上々、天気も快晴、まるで犬と散歩しているよう。目指すは三角山方面、ハッピーガストもノリノリだ。


上空高く上がったり、雲の波を泳いだり、空の寄り道を楽しんで、ほどなくブリジット・エリントンの塔付近の森に降り立つ。ハッピーガストはデカいけど、テーマパークの手持ちガルーンみたく僕の頭上でふわふわ浮いている。


うっきうきで小半時歩き、やがてブリジット・エリントンの塔に着く。リードを桜の木に結び、玄関の前に立つとドアをノックする。いつもの通りしばらく待つとバンッとドアが開く。


「もぉぉぉ! なんなの!」


ほー、相変わらずですな。


「お取込み中申し訳ないんですが、ハッピーガスト、手に入れて来ました」


ブリジット・エリントンは眉をひん曲げて僕を見る。


「はぁぁ?」


あははは。やっぱそうなるわな。オウムガイの殻とかスライムボールとかと訳が違うもんな。


「あれ」


サクラの木の上を指差した。そこにはリードでつながれたハッピーガスト。アドバルーンのようにサクラの木の上でふわふわ浮いている。


「えっ⁉ えええええええぇぇぇぇぇ!!」


面白れぇぇぇぇぇぇ。


直径五メートルの巨大な球体である。存在感は半端ない。ハッピーガストの表情はニッコニコで、くうぅぅぅぅんと鳴いた。


ブリジット・エリントンはあんぐりと口を開けている。あははは。喜んでもらえたかな? ハッピーガスト、めっちゃかっこいいし、めっちゃかわいいだろ。


「これで分かってもらえたと思います。王都からの回し者じゃないってことを」


はっとし我に返ったブリジット・エリントンは慌てて塔に入った。ドアをバンッと閉じる。


あらら、予想外過ぎてショックでしたか。やっぱりまさかホントにハッピーガストをその目で見れるとは微塵も思ってもみなかった。


いずれにしても、ハッピーガストを連れて来たからには僕が王都と何の関係もないってことだけは分かってもらえたはず。それともなにか? 僕のことがよっぽど嫌いだったとか。もう二度とここに戻って来ないって高をくくってた。


乙女心は残酷で草


「ドアを開けてください。僕は僕の意思であなたのお手伝いに来ただけです」


ドアがバンッと開いた。ブリジット・エリントンが仏頂面で立っている。


え? どうしたの?


驚いてからのその顔、ちょっと怖いんですが。


「ハッピーガストに乗りたい」


はぁ? なになに。今、ハッピーガストに乗りたいって言いましたよねぇ。


確かにハッピーガストは乗り物でもある。古代人は地上を馬で旅するようにハッピーガストと共に暮らしたという。


にしても、ブリジット・エリントンの無表情で不機嫌そうな顔つきはいかがなものか。乗りたそうには全く見えない。もしかして、僕が連れて来たハッピーガストが本物かどうか確かめようって算段か。


「乗せてくれるの? くれないの?」


「あ、はい。乗せます。………けど」


「けどぉぉぉ?」


バリ不機嫌。やっぱり疑ってる。色々説明しようにもいちいち怒られてたら話づらい。しかも、相手は若い女の子。どうしても腫れ物に触るような扱いになってしまう。


「今すぐには。乗るには専用のハーネスが必要なんです。クラフトするための素材を集めないと」


ハッピーガストに乗るには専用のハーネスが必要となる。大昔は魔法で作ったというけど、今はレシピブックでクラフト出来るとその仕様で謳ってる。


「心配ないわ」


僕の前にポンッとアイテムが記号化して現れた。ブリジット・エリントンが自分のインベントリから出したようだ。僕に拾えとその眼差しで訴えかけている。


マジか!


触れてインベントリに収納する。確認のためにインベントリをポップアップさせた。持ち物スロットの中に入っていたのは思ってた通りハーネス、それもピンクのハーネスだ。


すでに用意してたらしい。どういうこと?


ハッピーガストはただの口実だったんじゃないの? それとも僕がホントにハッピーガストを連れてくると思ってた?


乙女心が迷宮入りで草


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