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命短し恋せよ乙女6/16

さて、本題だ。ハッピーガストはネザーにいるモンスター、ガストの亜種だ。人に友好的で、古くはライトサイドの古代人と共に暮らしてた。入手するには、乾燥したガストをスポーンさせる必要がある。


乾燥したガストの進化した姿がハッピーガストなのだ。ガストの涙は再生のポーションの素材でもあるけど、乾燥したガストをスポーンさせるための素材でもある。


ガストの涙はネザーでしか手に入らない。そのネザーに行くには魔法を扱えなければならない。


けど、すでにガストの涙は手に入れている。乾燥したガストをスポーンさせるのにあと必要な素材はソウルサンドという砂だ。


ソウルサンドは古代都市か、ネザーにある。ガストの涙がネザーでしか得られないのと違ってこの時代、ゲットするチャンスがないわけじゃない。古代都市に行けばいい。


真偽定かでない何千キロも離れたそこに行く。そして、ポータルをクラフトし、ソウルサンドを持って帰って来る。簡単なことだ。けど、これが世間にソウルサンドが出回ってない理由でもある。


ソウルサンドは特別な砂だけど、そうはいっても砂は砂。高値で取り引きされるわけでもなし、労力と費用がまるで見合ってない。平たく言えばそれだけの価値はないということだ。さすがのエリントン家でも砂までは家宝としていまい。


ブリジット・エリントンは僕のことを回し者と言っていた。おそらくは僕が王都に帰ってオオムガイの殻とかスライムボールとか仕入れて来たんだと思っているんだろう。


で、こんどはハッピーガストときた。王都に行ってもありませんよ、さぁどうするってなもんだ。


いやいやいや、ネザーに行くっしょ。ポータルをくぐればすぐそこだし、ネザーのあるバイオームにはソウルサンドがごまんとある。


手に入れたら王都からの回し者ではないってことでいいよね。本人は思ってもみないのだろうけれど、僕にとってはお近づきになるまたとないチャンスになったというわけだ。


細かい灰が舞う上空からネザーを見渡した。視界は悪いけど、溶岩の海の向こうに霞がかって黒く赤茶けた大地が見える。


びゅんと飛ぶ。空の天井から落ちて来る溶岩の滝を避けつつ、溶岩の海の上空を進む。目前に空の天井を貫くほどの巨大な山々が姿を現した。その山間の表層は黒く赤茶けた色をしている。


ソウルサンドの谷という。ネザーのバイオームの一つでソールサンドやソールソイルに覆われている。多くのスケルトンが目的もなくうろついていた。


着地すると素早く鉄のシャベルで地面を掘り起こし、ソールサンドを回収する。


スケルトンに感知されたようだ。崖や山の中腹から放射線を描いて幾つもの矢が飛んでくる。うざってえぇ。矢が地表に着弾する前に飛び発つ。スケルトンたちはあっという間に遠く向こうだ。


溶岩の海の上を駆け抜ける。やがて真紅の森が見えて来た。ポータルの前に降り立つ。もう用は済んだ。ネザーとはおさらばだ。ポータルをくぐる。


目の前は銀世界だった。真っ赤から真っ白。目をぱちくりさせて眼球に受けた刺激をとる。風がぴゆぅ―ッと吹いた。体がぶるっと震え、身がぎゅっと引き締まる。


「ひやっ」


冷水で締められるで麺の気持ちが分かって草


まとっている魔法を、慌てて火炎耐性から冷気耐性に切り替える。これで大丈夫。あとは乾燥したガストをスポーンさせて、ハッピーガストに育てるだけ。


飛翔魔法で湖畔の豆腐建築に飛んだ。スポーンさせた乾燥したガストを育てるには水が欠かせない。湖畔に着地するとインベントリから機能ブロック、作業台を取り出す。


作業台が持つインベントリをポップアップさせるとクラフトグリットのスロットにガストの涙八つとソウルサンドのキューブブロック一つを入れ込む。すると、乾燥したガストがスポーンした。


真ん丸で、大きさはバレーボールほど。球体の下にはクラゲの触手のようなヒラヒラした足も四つあった。色は黒に近い灰色で、球体の中に眼と口があり、今はどっちも閉じられていてブルドックみたいなしわくちゃ顔をしてた。早速、湖に入って水に浸す。


乾燥したガストの周りに、緑に光る星形のパーティクルが現れた。水に反応した証拠だ。表情も少し張って、困り顔みたいに変化している。このままにしておけば明日の昼頃にはハッピーガストの一つ手前、ガスリンに進化しているはずだ。


やることがないから釣りでもしている。やがて日が沈もうとしていた。乾燥したガストの様子を覗いてみる。夕日に照らされ、キラキラ輝く湖面の下で、表情が変わったように見えた。めっちゃ普通の顔。心配がなくなったかのように穏やかになっている。


乾燥したガストの成長を楽しみに豆腐建築に入った。釣った鮭を暖炉で焼いてかぶりつく。腹を満たしその日は就寝。モンスターの襲来とか何もなく朝を迎えた。


乾燥したガストの様子を見に行く。朝日に照らされた湖面の下で、乾燥したガストはニッコリ笑っているように見えた。黄金に輝く湖面から判断しがたいが心なしか色も白っぽくなっているように思える。


「順調、順調」


なんでもそうだけど、成長していく姿を見るのは心ウキウキする。一段階上への進化が近い。


焼き鮭で朝食を済まし、湖に釣糸を垂らす。釣りをしながらじっくりその時を待った。やがて太陽が頭の上に差し掛かる頃、「ぴえーん」という鳴き声を聞いた。


湖面の上に真っ白いクラゲの風船みたいなやつが浮いている。ハッピーガストの一歩手前のガスリンだ。


ほえぇぇぇ。初めてこの形態を見た。正直言うと乾燥したガストを育てたことがなかった。大きさはバランスボールぐらい。体幹トレーニングに使われるあのゴムボールだ。


ヒラヒラ触手も増えていて、それをなびかせ辺りをぐるぐる回っている。ほっぺが赤い。僕と目があった。


「くうぅぅぅぅん」


鳴きながら僕の方に向かって飛んで来る。うひょーーー。


可愛すぎて草


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