命短し恋せよ乙女5/16
僕のこと、回し者とか変な誤解をしているようだけど、じじいとかキモイとか、結局生理的に無理って話でしょ。
俄然やる気でるわぁ。
ブリジット・エリントンが残していった八つのアイテムは全てガストの涙だった。今や入手困難。ここ五、六十年は市場に出回ってないんじゃないだろうか。
それを八つも所有しているともなればホント社会的にやばいやつか、あるいは、なかなかの権力者といえる。
そういやぁ、よくよく思い返せばエリントンという名に聞き覚えがある。百年前にあった魔法騎士団長にエリントンというやつがいた。もしかしてそいつの家系なのかもしれない。
だとして、二十歳にも満たないか弱き女の子がこんな所に一人で、貴重なものをそんなに数多く、なんで持って来ているかってことだ。ガストの涙は再生のポーションをクラフトするのに必要な材料でもある。
ガストの涙も再生のポーションも今、全く見ないのは魔法が廃れたことに関係している。魔族との戦争当時はよくお見かけしたものだ。だからこそその存在はいまだ人々の記憶に新しい。
それを大量に所持していると知れたらどうなるか。きっと争いの種になる。エリントン家としても家宝として後生大事に屋敷の奥の奥、誰も行けないような所に人知れず隠しておいた方がいいんじゃない?
因みにエンチャントされた金のリンゴも再生の効果がある。これは今、手に入れようと思えば手に入れられるんだけど再生のポーションみたくレシピブックでクラフトできないし、その入手方法から大量入手は不可能だ。そういう意味でいうならガストの涙は優秀なアイテムだった。
飛翔魔法でひとっ飛び、ポータルの前に降り立った。ハッピーガストを手に入れるには、今ある選択肢としてはネザーに行くしかない。
インベントリから機能ブロック、作業台やかまどをアイテム化し、シャベルをクラフト。さらに滝つぼの巨大空洞で得た金でヘルメットをクラフトする。金製のアイテムを身に着けているとネザーのモンスター、ピグリンからは攻撃を受けない。
やつらは顔が豚で二足歩行し、集団で襲い掛かって来る。真っ向勝負を挑んでもいいんだけど今回の目的はそこではない。かまってられないので金のヘルメットを被る。
「ひさびさのネザーだな」
ポータルの中に入る。
ネザーは地下に人工的に作られた魔法世界だ。
古代人は魔法をよく使ったという。魔法はその特性上顕現するにあたり、その精神に大きく左右される。それがゆえ古代人はおのずと二つのサイドに分かれていってしまう。ライトサイドとダークサイドだ。
ネザーはダークサイドの古代人の桃源郷。そこに入るにはその成り立ちからやはり魔法が必要となって来る。
魔法を全身にまとうんだ。そして、その状態でポータルをくぐる。魔法が失われた今、ネザーに行ける者は例外を除けばほぼ皆無となる。
支配者になろうとしていた男ジェフ・タイナーは頭から足先までネザライトをフル装備してた。ネザライトは溶岩の中に入れても燃えないこの世で最も強力かつ耐久力のある武具の素材だ。ネザーに行かなければ手に入らないし、ネザー素材の機能ブロックじゃないと加工も出来ない。
やつは魔力をまとわせる術を知っていた。魔王を倒した時の僕の仲間、竜剣士ラグーン・タイナーの子孫なのだからな。そういった術を武術の鍛錬の中で伝えていたのだろう。
ちょうど僕は寒さよけに魔力をまとってる。ポータルから出た。現れたのは真っ赤な景色。ネザーにある四つのバイオームのうち真紅の森と呼ばれるところだ。大木のようにそそり立っているのは全てキノコ。
土も真っ赤、キノコも真っ赤、空も燃えるように赤かった。白銀の世界から来たので思いの外刺激が強かった。目に飛び込んで来る赤は目の奥を殴るよう。気温も高い。肌がひりひりする。
冷気耐性効果を解き、火炎耐性効果をレベル+20で付与する。幹と幹の間からホグリンが何匹もうろついているのが見えた。ホグリンとはイノシシとカバを足して二で割ったようなモンスターだ。ピグリンと違って見境がない。
見つかると突進してくる。それでもって結構固い。面倒なので飛翔魔法で空へと上がる。靄がかかっていて結構視界が悪い。
ネザーには水が一切ない。靄のように見えるのは全て細かい灰だ。ネザーは閉ざされた空間。ふたを閉められたように空に天井がある。上空へ行けば行くほどその灰は糞詰まりとなり雲のように厚くなる。
海はというと全て溶岩だ。穴の開いた桶から水がこぼれるように空の天井から溶岩が流れ落ちてきて海に入る。それも一つや二つではない。山の上に落ちて川のように流れているなんてところもある。
空中に漂う灰は溶岩が発砲してできた細かい破片だ。空が燃えるように赤なのは灰が熱を発しているからに他ならない。これがダークサイドの古代人が望み作り出した桃源郷。
まるで地獄で草




