第11話:血肉を喰らう影
不意に、森の空気が凍りついた。
モルガンが馬車の窓から鋭い声を上げている。
「……来るぞ! 奴らが放った**『巫女喰い(みこぐい)』**じゃ!」
それはルナ・フェリスで捕らえられた魔物を交配に交配を重ね、巫女がさらわれた時に追跡し、賊を殺すために特化された魔物。
バルトが用意した、どの兵器よりも凶悪な「猟犬」だ。
魔力を糧とし、巫女が放つ特有の「甘い残り香」だけを頼りに、地の果てまで追跡してくる異形の魔物。
「エルナ、馬車の中へ!」
シグルは斧を抜き、闇から飛び出してきた影と対峙した。
それは巨大な狼のようでありながら、全身が腐った魔力で編み上げられたような悍ましい姿をしている。
俊敏な動きでシグルの死角を突き、鋭い爪が彼女の肩を裂きます。
「……この程度で、私の腹筋が割れると思うなよ!」
シグルは咆哮し、渾身の力で斧を振り下ろした。
魔物の脳天を叩き割り、その身が霧散するまで徹底的に叩き伏せる。
戦士としての本能と、エルナを守るという執念が、シグルを熊殺しの英雄へと変えていました。
ようやく魔物が絶命し、シグルが荒い息を整えながら、勝利の安堵に包まれた……その時です。
「――実に見事な立ち回りだ、シグル。
さすが、巫女を守る最終防衛を任された、最強戦士だ。
だが、その『自慢の筋肉』も、もう限界だろう?」
気持ち悪い空気とともに、闇の奥から、ゆっくりと拍手をしながら現れたのは、冷酷な笑みを浮かべたバルトでした。
バルトの再臨
バルトの後ろには、完全武装した私兵団が控えている。
彼は、満身創痍のシグルを、ゴミを見るような目で見下ろした。
「生きていたのかバルト。まさか人前に出てくるほどの勇気がお前にあるとは、驚いたよ」
バルトはエルナの魅了で屈服させられた戦いを思い出し、再び腸が煮えくり返った。
必死に冷静を装い、シグルに対して絶望感を与えようとした。
「魔物に追わせ、体力を削り、勝利の瞬間に絶望を与える……。
これが追い詰める側の愉悦というものだよ。
さあ、エルナをこちらへ渡せ。その女の胎は、まだ村の役に立つ。
……お前は、そこで自分の筋肉が腐りゆくのを眺めていればいい」
シグルは血に濡れた斧を杖代わりに立ち上がりますが、その足は震えていました。
絶体絶命の危機
しかし、シグルの背後で馬車の扉が開き、記憶を失う前の「最後の一仕事」を決意したエルナが姿を現した。
凛とした立ち姿は、揺るぎない覚悟を身にまとっていた。
その場の全員の緊張感がMAXまで高まった。




