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借金まみれの輸送艦長、最強姫騎士の勘違いで銀河皇帝にされる ~俺のために勝手に宇宙を征服してきて、維持費と胃痛が限界突破  作者: 星灯ゆらり
最終章

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不死鳥の捕獲作戦と、迷宮最奥に眠る『もう一人の姫騎士』

 レベルアップにより光速を越えて知覚可能にはなったが、俺が認識している光景は以前とほぼ同じだ。

 タキオン砲が打ち出す粒子でモンスターを加熱し、モンスターの進路を予測して質量弾を発射する。

 前者は光速の百倍以上あるが、後者はせいぜい数倍なので慣れるまでは当てるのが大変だ。


「ポーターさん! 不死鳥は羽を傷つけないで欲しいのです!」


「手加減したらやられるのはこっちだ! 姫さんは待機! 体力は大物相手に温存しといてくれ」


 輝く鳥がタキオン砲の集中攻撃により追い立てられる。

 ダンジョン深層は実質果てがない空間ではあるが、あちこちにある『大気』は超光速戦闘では巨大な障害物だ。

 翼を激しく上下させ、不死鳥と通称されるモンスターは鋭角的な機動で『大気』を躱してタキオン砲の射程からは逃げ切った。


「命中なのです!」


 二隻分の質量弾が輝く鳥に突き刺さる。

 遅いとはいえ超光速だ。

 質量弾内部に仕込まれた爆薬より質量弾が持つエネルギーの方が大きく、常時再生し続ける不死鳥を致命的なレベルまで弱らせる。

 輝きが薄れてみすぼらしい外見になったモンスターが、速度を落として『大気』へ飛び込んだ。


 追撃するなら俺たちも中に飛び込むしかなく、飛び込めば速度が低下して他のモンスターが寄ってきかねない。

 俺たちにとって、最悪に近い展開だ。

 友軍がいないなら、だがな。


「今のうちに狩り尽くすのです!」


 銀河共和国軍カラーに塗られた新スティレット級四隻が、俺たちが追い詰めているのとは別の不死鳥に襲いかかる。

 正規軍ともソールの私兵ともいえる中途半端な所属だが、大量の金を積んで帝国から手に入れた新スティレット級(最新装備はなし)は言うまでもなく強力だ。

 超光速の魔法をぶっ放せるソールやその弟子も乗っているので、リゼ抜きの同数の帝国艦隊より強いかもしれない。


「白、黒、いくよ!」


 肉塊から大量の眼球が生えた異形の艦が、別の不死鳥を狙っている。

 白犬耳少年と黒犬耳少年が、個人単位で瞬間移動しながらキックと不死鳥に叩き込んでいるのは、実際に見ているのに信じられない。


「お嬢、ごめん!」


 黒犬耳少年の言葉は討ち死にしそうなことへの謝罪ではなく、力を込めすぎて不死鳥の首を消し飛ばしたことへの謝罪だ。

 肉塊艦も契約国連合の軍人機械人間も、一隻とふたりでリゼ抜きの俺たちと同レベルで強くはあるんだが、モンスター相手の戦いは不慣れなようだ。


「復活した!?」


 即座に蘇った不死鳥が肉塊艦に突撃する。

 黒犬耳少年の蹴りでモンスターが追い払われたが、肉塊艦の半分が程よく焼けていた。


「お姉さま。ここはわたくしに任せてくださいですわっ!」


「僕もいくのです!」


 許可をとるのもそこそこに、エイルとギョーショーが俺の艦から飛び出す。

 エイルは魔法と気合いで、ギョーショーは背中に取り付けたブースター型推進機で加速する。

 新スティレット級と比べれば遅いが小回りは桁違いだ。

 エイルが『大気』の流れを見切り、外付け推進機のパワーはすごいギョーショーが強引に追いつく。

 ギョーショーに引っ張られていたエイルはそこで手を話し、不死鳥の左右の翼に先を何度も切り飛ばす。

 翼の回復の速度と翼が切り取られる速度がつりあう。

 不死鳥の速度は亜光速まで落ち、戦闘の才能はあまりないギョーショーでも狙える速度になった。


「もらったのです!」


 ステイシスフィールドが展開される。

 不死鳥が静止する。

 端を切り飛ばされた翼は回復せず、新たなモンスターも出現しなかった。



  ☆



「全力で消し飛ばして短時間復活を封じることしかできないはずのモンスターを、こう対処するとはな」


 リゼの言葉は冷静だが態度は無邪気な大喜びだ。

 よほど苦労した経験があるらしい。


「ソールさんと銀華ねえに売れて大儲けなのです!」


 ギョーショーは『フリーキャッスル』の甲板の上で高笑いしている。

 ステイシスフィールド発生装置が『フリーキャッスル』の中にあったわけではない。

 『フリーキャッスル』で運んできた資材を、ギョーショーの部下であるチョーカー機械人間たちが泥縄的に組み立ててステイシスフィールド発生装置にしたのだ。


「艦長。今回の遠征はここが限界ではないか?」


「ああ。ダンジョン最奥のモンスターを倒すか罠を仕掛けるかしたかったが、これだけ消耗した後ではな」


 新スティレット級の状態も良くない。

 高性能な代わりに生産性と整備性に問題のある新装甲を内部にまで使っているので、ダンジョンや戦場で簡単に修理はできないのだ。


「陛下ぁ。具合の悪い三隻ぃ、ベースキャンプまで戻しますかぁ?」


 少々の危険なら技術と経験でなんとかしてしまう艦長が、真剣な顔で提案してきた。


「少し待て。共和国の艦の調子も悪そうだ。戻すなら連携した方が効率が良い」


 俺がARメガネを起動して通信要請を送ると、ソールからの通信がすぐにあった。

 相変わらずリゼとの関係は悪く、俺の隣にいるリゼへの悪感情を隠しきれていない。

 それでも、事務的な会話や交渉だけなら行える程度の関係だ。


「このまま進む? 危険じゃないか?」


 ソールから『このまま進む』と伝えられた俺は、改めて共和国の四隻を見る。

 パイロットの強い気配も感じるが、艦にもパイロットにも余裕がないように感じる。


「事情があります」


 ソールはリゼを見てから、目的地であるはずの方向を見る。

 ダンジョン最奥と思われる建造物まで後数百光年あるはずだが、俺もかなり人間離れしてきたので何かが『ある』ことだけは分かる。


「……どういうことだ?」


 リゼが眉を寄せる。

 ソールに対する疑問ではなく、あり得ないものを見たような困惑顔だ。


「私が石に変えられた場所に似すぎている」


「やはり、ですか」


 ソールが納得顔になっている。


「なあ姫さん。石化される前もあそこまで行けるほど強かったのか?」


「石化される頃の記憶は曖昧だ。戦いが続きすぎていたから、今より強かった可能性も否定はできぬ。当時のエルフ族の強者どもに包囲された記憶はあるが……」


「ハカセを罠にかけるより俺たちの命の方が重要だ。どうする?」


「ちょっとすみません。私、一旦ダンジョンから出ないといけないので、いくつか艦をベースキャンプかダンジョン外まで運びましょうか?」


 銀華が通信してくる。

 盗聴の可能性も、俺たちの声を聞き取れるほど耳がいい可能性もあるのが、怖いところだ。


「急用か?」


「定期的に連絡をしないとハカセや母なみに暴走する人がいるんです」


 銀華は深いため息を吐く。

 ギョーショーが納得顔になっている。


「ステイシスフィールドの運搬もお願いしたいのです!」


「はいはい。連絡を入れた後は戻って来るから、陛下とリゼさんに迷惑かけるんじゃないわよ」


 銀華の態度は砕けているが、中身は相当な遣り手だ。

 ソールはすぐに損傷艦の輸送に同意したし、俺も内心身構えていたのに良い条件だったので頷いてしまう。


「姫さん」


 俺は、いつの間にか軍服のポケットに入っていたカードをリゼに見せる。

 自動翻訳機によると『ベースキャンプに輸送してから最速で合流を目指します。ハカセに気を付けて』だ。


「いい加減、奴との決着をつけたいものだな」


 左手で魔剣を抱き寄せ、右手で魔王の剣を握る。

 リゼの口元は釣り上がり、残酷で、それ以上に魅力的な魔王に見えた。



  ☆



 新スティレット級が合計七隻。

 『フリーキャッスル』はステイシスフィールドごと不死鳥を倉庫に収め、肉塊艦に引率されてベースキャンプ行きだ。

 チョーカー機械人間たちもベースキャンプまで送り返したかったんだが、新スティレット級にしがみついて離れないので仕方なく同行を認めた。


「あれが深層の最奥か」


「深層の次は超深層だったりするのです?」


 目的の建造物に乗り込んで……という正攻法は考えない。

 ダンジョン深層の制圧も、もしいるならダンジョンボスの討伐も、ハカセという脅威を無力化するための手段でしかない。

 建造物は大きいが機動要塞程度の大きさなので、中身ごと破壊するのも可能なはずだしな。


「見慣れない様式だ」


「ファンタジー系アニメだとよくある様式なのです! 作り込みは予算たっぷりなアニメでも見たことないレベルなのです!」


「ポーター。ギョーショーも、この状況でよく気の抜けた会話をできるな」


 リゼが、呆れと安堵が複雑に混じった表情をしている。


「緊張をほぐさないと、緊張しすぎでしなくていいミスをするからな」


「……そういうことなのです!」


 ギョーショーの目の点滅は、誤魔化しているときの色と点滅速度だ。

 リゼがほっと息を吐いて肩の力が適度に抜けたので、わざわざ時間を使って雑談した甲斐はあったようだ。


「陛下。ソールさま……んんっ、ソール殿からですわ」


 エイルは皇太子なので、かつての保護者とはいえソールに尊称をつけるわけにはいかない。

 かなりやりづらそうだが、これは慣れてもらうしかない。


「ジャバウォック陛下。調査に協力してください」


 ソールの表情にも態度にも余裕がない。

 俺に当てはめると、リゼの生死がかかっているときでしかあり得ないレベルに追い詰められている。

 俺が無言でリゼを見ると、リゼも俺同様に困惑はしているが、小さく頷いた。


「あまり時間はとれないぞ」


「感謝します」


「うむ。私が出向くから艦長は艦を頼む」


 リゼは通信中継用の装備を大量に抱え、宇宙線がないだけで環境の過酷さは宇宙以上のダンジョン深層へ飛び出す。

 共和国の新スティレット級がぎりぎりまで近づき、石製に見える巨大建造物へ乗り込むのを、リゼが護衛していた。


「俺たちは戦闘準備だ。共和国の用件が済み次第、リゼが最奥を調査する。使えそうなボスなら罠の部品にするか倒して罠の部品にする。無理そうなら普通に倒すか撤退だ」


 ベースキャンプから出発前に作戦立案は終えているので、俺の言葉は確認でしかない。

 『フリーキャッスル』からの補給を受けたばかりなのでエネルギーも質量弾も十分になる。

 成功するかどうかではなく、どの程度成功するかの話になる、はずだった。


「艦長。これを見てくれ」


 リゼからの通信が届く。

 ソールを含む共和国のハイエルフも映っていて、深刻な表情で床に散らばる何かを保存しようとしている。


「壊れた石像が散らばってるのです! 服や装備も石なのです!」


 ギョーショーはエイルの陰に隠れて、顔だけ出して発言中だ。

 俺は「船乗りなら死体くらい見たことあるだろ」と言いかけて、ギョーショーが非常に良いところのうまれであることを思い出す。


「私の記憶にあるエルフの姿と一致している。当時のエルフの中でも凄腕だ」


「そいつは、石化から回復するのか? 姫さんみたいに」


 俺の言葉を聞いたらしいソールが、沈痛な表情で首を左右に振った。

 リゼも難しい顔になっている。


「伝説の復活ポーションならあるいは、だな。私が回復できたのも全身が無事だったからだ」


「復活ポーション? 寿命延長ポーションの時点でとんでもなかったが、いよいよファンタジーだな。……本当に伝説か?」


「不死鳥を討伐すればドロップすると推測はされていた。実在するかどうかは知らぬ」


「了解。こっちは姫さんの動きにあわせる。判断は姫さんに任せるが、緊急時は姫さんの命が最優先だ。これはお願いじゃなく命令だ。いいな?」


「うむ。承知した」


 リゼの顔から緊張は消えないが、少し前と比べると少し顔色はよくなっている。


「ポーターさんポーターさん。ふと思ったですが、ばらばらになった体ぜんぶに復活ポーションをふりかけると……」


「同じ人間が複数できる、か? もしそうなるなら怖い話だな」


「えーっと、それだけじゃないのです。ポーターさんが聞きたくないならこれ以上聞かないですけど、リゼさんがここで石に変えられたのだとしたら、なんで石化したリゼさんがダンジョン外で見つかったのです?」


 いつの間にか艦外と繋がる回線は切断されている。

 何かに気付いたエイルが、真っ青な顔になっている。


「石に変わる直前にぶっ放した攻撃の影響でダンジョンの出入り口まで吹っ飛んで、そのまま止まらず宇宙に飛び出したって感じじゃないか? いずれにせよ、俺にとって大事なのは俺が知っている姫さんだ」


 建造物周辺に注意を向けている俺は、ほとんど頭を使わずに喋っている。

 つまり本音だ。

 相手を気遣うためならともかく、嘘を言う必要のない奴しかいないしな。


「ギョーショーさん。これなら大丈夫ですわ」


「んー。ポーターさんってたまにポンコツになるから心配なのです。でもエイルさんが言うならいいことにします!」


 リゼとの通信が回復する。

 同時に送られてくる位置情報が正しいなら、建造物の中心だ。


 そこにいたのは三人だ。


 ほとんど恐慌状態のソール。

 大きく目を見開いたリゼ。

 そして、右の手首から先だけが消えた、姫騎士の石像が映っていた。

次回更新は5月13日の予定です!

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