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借金まみれの輸送艦長、最強姫騎士の勘違いで銀河皇帝にされる ~俺のために勝手に宇宙を征服してきて、維持費と胃痛が限界突破  作者: 星灯ゆらり
第九章

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違法改造艦による星系脱出と、ステルス艦隊の足を止める『ファンタジー(物理)』の理不尽

「改スピア級の同期完了っす!」


「広域トラクタービーム準備完了! いつでもいけるよ!」


 『フリーキャッスル』の中に気合いが入った報告が響く。

 機械人間十数人とぐったりしたハイエルフ(ソール)とお世話係なハイエルフ(エイル)と俺が詰め込まれているので正直せまい。


「ちょっとポーター! こっちは忙しいのだから呼び出さないで!」


 その上エルザまでやって来る。

 足の踏み場もないという表現が、ぴったりの状況だ。


「ステイシスフィールド内だと停止するんだから仕方ないだろう。共和国側の責任者がいないとこっちも困るんだ」


「ソールさまがいらっしゃるでしょう!」


「生身で『あれ』を何体か倒してもうふらふらだよ。……もう逃げていいな?」


「ええ。駐留艦隊ももう限界よ。責任は私がとるわ」


 俺は頷き、言葉を口にする時間も惜しんで手元のボタンを押す。

 信号によって作戦開始を知らされた機械人間たちが、三十数隻の改スピア級をひとつの生き物ように操る。

 数個の惑星と数十の構造物を、特大のトラクタービームが包み込んだ。


「いくっす!」


「いっけー!」


 惑星と宇宙港とそれ以外が同時に移動を開始する。

 それらを『牽引』する改スピア級は、『牽引』する対象と比べるとあまりにも小さい。


「とんでもないパワーだな。『あれ』とも互角に戦えるんじゃないか?」


「ポーターさんポーターさん。あの無断改造艦、戦闘力据え置きで無理やり特殊装備を積み込んでいるのです。運用コストも爆あがりなのです」


「……そういうのは作戦終了後に考えよう」


 まず今を生き残らないと何もできない。

 俺は『フリーキャッスル』の速度と向きを『惑星群』と一致させ、艦のセンサーと俺の感覚で『あれ』の位置を探った。


「このまま加速すれば、『あれ』と接触せず星系外まで行けるか?」


「難しいと思うのです」


 ギョーショーが、星系内ではなく星系外の戦況を映した画面を指さす。

 リゼがいるはずの場所から、非常に太い、破滅的な破壊の力が光年単位で伸びるのが感じられた。


 それで減った敵艦は二隻。

 生身の人間としては破格の戦闘力だが、敵艦はまだ二百隻以上いる。

 しかも、これまでのリゼの攻撃を見て距離をとって時間を稼ぐ動きに変わっている。


「……合流するか。ギョーショー、最悪の場合だが」


「みなまで言うな、なのです」


 ギョーショーはいつも通りの表情で、しかしいつもとは違って目と声と言葉の全てがシリアスだ。

 俺は感謝と同意の思いを込めてひとつ頷き、膨大なエネルギーで惑星をいくつも運ぶ改スピア級を見た。


「なんか、ぼろくなってないか? 装甲も一部ひび割れてるぞ」


「この銀河の技術で造ったランス級の廉価版を無理やり改造した艦なのです。一度の航行で使い捨てになるに決まっているのです。今回役に立たなかったら、おまえらひどめにあわせてたのです!」


 言っている間にギョーショーの怒りが限界を突破する。

 チョーカー機械人間は聞こえないふりをして改スピア級の遠隔操作に集中しているが、緊張で体が強張っているのが俺の目でも分かる。


「とりあえず姫さんと合流だ。と、その前に、だ」


 俺はARメガネを操作する。

 共和国の駐留艦隊残余は俺たちとは別方向へ撤退を続け、星系内の『あれ』の注意をひきつけてくれている。


「ステイシスフィールドを一つずつ解除して、惑星や宇宙港の住民を全員、ダンジョン惑星へ移乗させるのは可能か?」


「簡単っす!」


「余裕よ!」


 チョーカー機械人間は自信たっぷりだ。

 対照的にエルザは顔を青ざめさせ、ほぼ気絶状態でエイルに介抱されていたソールが根性で上体を起こした。


「惑星を捨てろと!?」


「星系内にあれほどの脅威がいるのに守りを解くのですか?」


 エルザもソールも、チョーカー機械人間に対して不信感を持っているようだ。

 チョーカー機械人間と利害がぶつからず事情を知っている俺でも信じ切れないのがチョーカー機械人間だから、エルザやソールを責めることはできない。


「ポーターさん、エルザさん、それとハイエルフさん。こいつら倫理観はないですけど能力はあるのです。あと、技術について嘘も言わないのです。……肉人間さん神経を逆撫でしまくる馬鹿ですけど、それだけはほんとうなのです」


 エルザもソールも、怒りと納得が複雑に入り交じった表情になる。

 大勢の命がかかっているので長時間かけて熟考したかったろうが、今はとにかく時間がない。


「ダンジョン惑星に移乗させないと危険なのね?」


 エルザの問いに、俺もギョーショーも深く頷く。

 ダンジョン惑星は、最低十年は使うつもりで、あっちの銀河の技術も導入して補強と居住区画の拡張を行っていた。

 最終的には惑星サイズの機動要塞にするつもりだった。

 現在の進捗は一割程度だが普通の惑星数個分の居住空間は既に存在している。


 ソールが難しい表情で頷き、それを見たエルザも覚悟を決めた表情になった。


「住民の説得は私とソールさまがするから移乗はお願い。……説得の途中でも移乗は続けて頂戴。住民が無事なら惑星がどうなっても目をつぶるし、補償も共和国がするわ」


「承知した。ギョーショー、頼む」


「全力を尽くすのです!」


 俺たちはリゼに向かって加速しながら、惑星間の移乗作業を開始するのだった。



  ☆



 平坦な板の上下に、眼球を連想させるレーザー砲塔が密集している。

 ステルス機能ありとなしで塗装の種類が異なるが、敵艦は実質的に単一の機種だ。

 戦闘開始からしばらくはダンジョン惑星に向かうと真似をしてリゼに超光速移動による移動を牽制し、今では速度が鈍ったリゼ相手に包囲戦闘を行っている。


「骨董品なのです!」


「社長、あれって古いけどガチの戦闘艦っす!」


「契約国連合の第一次拡張期で万単位で運用されて、安価で出回ってる奴よ!」


 ギョーショーもチョーカーどもも、肉人間に分かるように口で言ってくれた。

 俺が意識して敵艦の気配を『見る』と気配が薄いのに気付く。

 肉人間の気配ではない。

 機械人間の気配を極限まで薄めた、人間かどうかも分からない薄さだ。

 いや、戦場の隅でうろちょろしている一つの艦にだけ、機械人間の気配があるような気もする。


「姫さん。あの艦が怪しいと思うが」


「すまぬが余裕がない。酸素は供給されているのだが、息が続かぬ」


 リゼは長期戦を戦うために、マスク状の酸素供給装置を身につけている。

 呼吸が乱れ、本当に余裕がないのが音声から分かった。


「ポーター! 移乗完了よ!」


 鬼気迫る表情でエルザが伝えてくる。

 直前まで、惑星住人に対して威厳のある態度をしていたソールは、完全に気を失ったエイルに介抱されている。


「よし! ダンジョン惑星以外の惑星と宇宙港を放棄しろ。改スピア級はダンジョン惑星の移動に専念しろ。このまま姫さんと合流する」


 改スピア級がダンジョン惑星の軌道上へ移動する。

 ステイシスフィールドの庇護を失った惑星たちが、恒星からはるか離れた星系外縁で冷えて凍り付いていく。

 ダンジョン惑星から置いていかれて、このまま宇宙に漂う墓標になるはずだ。


「よく来てくれた。これだけ近いとダンジョンの遠隔操作も楽に……こらっ」


「主っ!」


 これまでダンジョン惑星地表にいた魔剣が、リゼの至近にテレポートして抱きつく。

 途端にダンジョンの出入り口の制御が甘くなり、ダンジョン惑星地表から『浅層の中でも特に浅い領域のモンスター』の目撃情報が届き始める。


「姫さんに指揮権を譲渡する」


「うむ! 作戦通りに進めるぞ!」


 リゼのARメガネが光速で情報をスクロールしている。

 光の翼が大きく羽ばたき、敵艦の包囲を突破したリゼが『フリーキャッスル』の甲板に着地する。


「ダンジョン惑星と共にこの星系を脱出。第一星系外縁でスティレット級艦隊と合流して敵艦隊を撃破する。とはいえこのまま逃げるというのも癪だ」


 リゼは『フリーキャッスル』の中に入らず、魔剣から恭しく捧げられた魔王の剣を片手で掲げる。

 途端に、ダンジョン惑星表面からのモンスターの目撃情報が消えた。


「亜光速が限界のモンスターでも足止めにはなろう」


 敵艦の至近にドラゴンが出現する。

 俺とギョーショーが必死の思いで倒した、中層を住処にするモンスターだ。

 それが敵艦一隻につき三体。

 即座に超光速まで加速して距離をとれた艦は半数程度で、残りの半数はドラゴン一体か二体に組み付かれて至近距離での戦闘を強制される。


「あいつら、敵味方とも足を止めての戦いならあそこまで強いのか」


「でも骨董品相手に三対一で互角なのです!」


「ギョーショー。あれはあれで洗練された艦だ。気を抜くでない」


 リゼが『フリーキャッスル』に入って来る。

 ギョーショーが飲み物を、俺が蒸しタオルを用意したのを見て、嬉しそうに目を細めていた。

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