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借金まみれの輸送艦長、最強姫騎士の勘違いで銀河皇帝にされる ~俺のために勝手に宇宙を征服してきて、維持費と胃痛が限界突破  作者: 星灯ゆらり
第九章

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ヤバすぎる就業規則(爆弾)とはしゃぐ魔剣。なお、あの機動要塞は「最弱」のもよう

「チョーカーの形をした爆弾です。契約に違反すると一定範囲の物と情報を消去する、懲罰や証拠隠滅に使われる品ですね」


 センパイ大使は物騒なことを平然と言う。

 通信回線越しに聞いていた元捕虜、現出稼ぎ労働者が「ぴぃ」と悲鳴をあげた。


「自国民に対して厳しいんだな。種族的なものが違うからか?」


「その程度のことで冷遇はしませんよ」


 センパイ大使は俺の発言を全否定はしなかった。

 種族的なものが違うのは、俺の憶測ではなく事実なのかもしれない。


「最低限ここまでしないと、確実に重大な犯罪行為に手を染めるのです。これをつけさせない場合、ランス級の工場でいつの間にか位相跳躍機関……『あれ』を刺激する高性能超光速機関搭載艦が生産される程度のことは覚悟して下さい」


「そいつは、致命的なやらかしじゃないか?」


「好奇心のままにやらかすのが、契約国連合の研究職機械人間の習性と思って下さい」


 元捕虜は自国(契約国連合)の外交官のことをぼろくそに言っていたが、センパイ大使の研究職への態度もかなり厳しい。

 どちらが正しいかより、どちらも正しい気が、なんとなくした。


「魔剣が気に入っていなければ、契約国連合にすぐにでも送り返したいんだがな」


「送り返す分、契約国連合に届く無汚染水が減ってしまいます。記憶と思考を司る部分のみを送り返す場合でもかなりの額になってしまいますから、個人的には帝国で雇用していただけて感謝しています」


 聞いていた元捕虜が震えている。

 機械人間も、体を分解されるのは嫌なのだろう。


「じゃあこのまま帝国で就職ってことで」


「まだ学生ですから性格は研究職としては善良です。彼女を研究職の平均だと思わないでください」


「承知した。……あれで善良か」


「はい。かなり善良です」


 センパイ大使のポーカーフェイスでも隠しきれない、羞恥の気配が漂っていた。



  ☆



「なあギョーショー。あの元捕虜というか学生さん、なんて呼べばいいんだ?」


「んー。あの子は肉人間さんとの付き合いがなかったので、対機械人間用の名前しか持ってないのです。ポーターさんだと長すぎて覚えられないと思うのです」


「そんなだから肉人間への差別意識が強いのか。俺が戦っているときも酷かったしな」


「普通の肉人間さんと、機械人間用の大学を卒業できそうな機械人間の能力差はすごいのです」


 ギョーショーは、俺を気遣って言いにくそうに言う。

 あの元捕虜は、差別しているつもりはなくて、肉人間と機械人間を区別しているだけなのかもしれないな。


「ギョーショー。真面目な話だ。初の本格的な超光速戦闘の相手が、ギョーショーの友人ってのはできすぎと思わないか?」


「んー。でもあの子くらい仲が良い子は一万人前後いるのです」


「……一万人?」


「そうなのです! ギョーショーちゃんは将来の独立を目指してコネ作りに励んできたのです! でもなかなかうまくいかなくて、同系統の機械人間や、趣味があう機械人間としか仲良くなれなかったのです……」


「だが、一万人だぞ?」


「ポーターさんポーターさん。機械人間の思考速度を舐めすぎなのです! 肉人間さんがいるときは会話の速度を落としてますけど、機械人間しかいないときは情報伝達速度も思考速度と同じなのです!」


「だから一万人か」


「僕の原型のひとだと最大で数億人を直接指揮してたらしいのです。マスターの現役引退と同時にろくな引継ぎもせず投げ出しちゃって、めちゃくちゃ苦労したって先輩の先輩から聞いたのです!」


 ギョーショーの『やりたいほうだい』は、設計に組み込まれているのかもしれないと思った。


 こんな感じで雑談しながら、ギョーショーの支社の中枢に足を踏み入れる。

 そこには、銀河帝国とその周辺の星系全てが表示されている。

 数が多すぎて、正直よく分からない。


「はっきりいってやばいのです! 『あれ』が見えないひとにとっては超光速機関の性能が一割から二割落ちたように見えてるだけでも、たぶん、動いた『あれ』を回避するのにめちゃくちゃ手間取ってるのです!」


「たぶんって、勘かよ」


「ポーターさんも勘で超光速戦闘をしているはずなのです。エリート肉人間さんや謎生物は、勘とか魔法とか超能力で気付いてから、センサーを向けて確認するらしいのです。……機械人間だと超めずらしいのです」


「能力はないよりある方がいいに決まってるだろ」


 ギョーショーが少し悩んでいるようだったので、俺は正直な感想を口にする。

 最近は普通の目より妙な感覚の方が頼りになるが、俺は理屈は気にしない。

 デメリットもなさそうだしな。


「そういえば、あの学生さん、ギョーショーと違って目が光らないんだな。というかギョーショーもセンパイ大使も学生さんも、例の銀河間連絡船に乗ってた機械人間も全員女性だよな。そういう文化なのか?」


 ギョーショーは『何いってんだこいつ』という顔になる。

 『ひょっとして機械人間ハーレムに興味あるのです?』という顔でもある。


「いや、あのな」


「リゼさんには黙っておいてあげるのです。それで女性型が多い理由ですけど、エリート肉人間さんが女性型の体に投資することが多くて、その結果こうなったのです。男性型もあるですが、女性型と比べて同性能なのに高いのです」


「なるほどなあ。俺としては目の保養になるから助かっているが」


 俺はリゼ一筋だが性欲は普通にある。

 目で楽しむくらいは構わない、よな?


「ポーターさんの意外な側面なのです!」


「姫さんも気付いてはいるだろうから、怒られない程度にするさ」


 ふと、気配を感じた。

 俺とギョーショーの中間の、何もない空間に変化の『予兆』というべきものがある。


「ギョーショー! 警報!」


「今避難指示を出したのです! ポーターさんも早く逃げるのです!」


 俺は、ギョーショーに返事をする時間を惜しんで全力で走る。

 しかしこの場所には障害物がない。

 巨大な地図は、画面ではなく立体映像で表示されているだけで、俺の体をすりぬける。


 これは本格的に駄目か、と考えたそのとき、何もなかった空間に魔剣が出現した。

 魔王の剣を、得意げにふりまわしていた。


「人間、見ろ! 俺、復活!」


 リゼに絶対の忠誠を誓っている魔剣が、リゼを無視するとは思えない。

 ただ、今の魔剣は『待ち望んだプレゼントを受け取った直後の子供』のようにはしゃいでいるので、感動に突き動かされて暴走している気もする。


「魔王の剣が、ちょっとだけ立派になってる気がするのです」


 ギョーショーの目が、見たことのない色と感覚で点滅する。

 古代の『電話』に似ている気がした。

 その直後に、元捕虜の言葉が大音量で響き渡る。


「ちょっと、そっちに魔剣さんが行ってない? これ以上劣化しないよう最低限の補強をしたのにいきなり消えてっ……いたぁ!」


「うるさいのです! 就職後は上司に敬意を払うのです!」


 言葉は偉そうだが『えへん』と胸を張ったギョーショーに強圧的な雰囲気はない。

 親しい友人相手のじゃれあいだろう。


「あたしはあなたに雇われてないわよ! それより魔剣さんにそこから動かないよう伝えて! 個人での跳躍なんて負担のかかることをしたらっ」


「マスターが呼んでる! 戻る!」


 魔剣が唐突に消える。

 まるで幻覚や妄想だが、ARメガネが自動で撮影した映像には、しっかり魔剣が映っていた。


「ひょっとして、魔王の剣を最初に修復してたら、今の問題の大部分が解決していたのか?」


「ポーターさんしっかりするのです。魔王の剣の所有権は棚上げしてるだけで、共和国も所有権を主張しているのです」


「とりあえずエルザに相談するか」


「軍備増強は急がなくていいのです?」


「機動要塞という大物も撃破できたんだ。あっちの銀河からはるばるやってくる侵入者対、こっちの銀河が本拠の俺たちって戦いは、思った以上に俺たちの有利なのかもしれん。だから今は、隣人を宥めることに集中するさ」


 俺たちはまだ、機動要塞が『最も弱い侵入者』でしかないことに、気付いていなかった。

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