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借金まみれの輸送艦長、最強姫騎士の勘違いで銀河皇帝にされる ~俺のために勝手に宇宙を征服してきて、維持費と胃痛が限界突破  作者: 星灯ゆらり
第五章 ハズレドロップがもたらした空前のバブル景気と、新型艦が引き寄せた『仇敵』からの発注書

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美容ポーション(無汚染水)の輸出で帝国は空前のバブル景気に! しかし急成長の代償として宇宙海賊が無限湧きするようになり、皇帝自ら討伐に出る羽目になりました

「ハイエルフも保守派も激怒しているわ」


「だろうな」


 リアルタイム通信越しに、エルザと俺は大きなため息をついた。


「このままじゃかばいきれないわよ。というよりリゼさまを悪く言われて私が爆発寸前なの」


「今回の件がなくても悪く言われてるだろ」


 競合相手に強い奴がいるなら、直接戦う前にディスって孤立させるのは一般的なやり方だ。

 特にリゼは、物理的な手段では勝ち目がない相手だからな。

 銀河帝国内外での評判を徹底的に貶めて孤立させようとするのは自然な動きだ。

 非常に、腹は立つがな!


「だから私が爆発寸前なの」


 銀河共和国から一星系の支配を任された総督とは思えないほどフランクな態度なのは理由はある。

 エルザの忠誠心はリゼにだけ向いているのだ。


「最近、リゼさまと直接お話できのだけど、どうなってるのよポーター陛下?」


 文面は穏やかでも口調と声は最悪に刺々しく、俺の胃の痛みを再発させる。

 リゼのためなら即座に死ねる奴ではあるが、俺に対する忠誠心は皆無だし『リゼに発情するクソ』と認識してる気配すらある。


「姫さんはしばらくダンジョンから動かないぞ」


 センパイが美容ポーションを見て示した買い取り価格を見た瞬間、リゼは「持参金!」と叫んで背中の翼を輝かせ、部下を連れてダンジョンへ突撃した。


「魔王の剣についてもだけど、違約金を支払ってでも隠している理由が気になるわね」


「さてな」


 ダンジョンについては機密情報が増える一方だ。

 寿命延長ポーションは権力者を狂わせる呪いのアイテム同然だし、美容ポーションは契約国連合相手に異様な高値で売れるので公開は論外だ。

 情報を全ては開示しない(売却価格の合計だけは偽らずに知らせている)際の罰金を払ってでも守り切る必要がある。


「中央相手に誤魔化すのにも限界があるわ。誤魔化しきれないと判断した時点で、私は共和国を捨ててリゼさまの元へ向かうわよ」


 リゼであって帝国ではない。


「分かっている。そのときは俺も帝国も妨害しない。好きにしろ」


 俺はそう言って、通信を終えた。


「やることが、多い」


 体から力を抜いて、執務室の椅子に体重を預ける。

 『フリーキャッスル』に乗って、ただの艦長をしていたときと比べて、椅子の質も執務室の環境も異次元に向上した。

 それ以上に、俺の心身のストレスは増している。

 当時は自分の口座残高を気にしていれば良かったが、今は銀河帝国の財政や国民の生活水準や安全保障まで気をつける必要があるからだ。


「陛下。ダンジョン星系への定期便が出港可能です」


 愛想のない、内政部門責任者が報告してくる。

 本当に愛想がないし、挨拶すらない。


「積荷は?」


「『駆逐艦』用のレーザー砲と、例の動力炉の簡易生産版を可能な限り生産して詰め込みました。輸送艦はボード型輸送艦の速度向上型が四隻。護衛はランス級六隻です」


 詳細な報告書と要約した報告書も送られてくる。

 積み荷はダンジョン行きだ。

 陸戦隊がダンジョン中層で『野戦築城』して『狩り場』を作る計画が進行中なのだ。

 ギョーショーの下請けとして帝国内外への輸送を請け負っている現状で送り出すのはかなり苦しいが、ダンジョンのドロップ品をセンパイに売って食いつないでいる帝国には、他に選択肢がない。


「よくやってくれた。出港を許可する」


「はい」


 唐突に通信が切断される。

 別の画面に、宇宙港から出航する十隻の艦隊が映し出される。


「これで、姫さん抜きでも中層の周回ができるようになればいいんだが」


 周回が安定してリゼが第一星系に帰還できたのは、それから数週間後のことだった。



  ☆



「ジャバウォック銀河帝国国営放送総合ニュースの時間になったのです!」


 国営放送の番組は増えたが、総合ニュースだけはギョーショーの占有物だ。

 一般ニュースや経済ニュースや航路ニュースが真面目な内容で、総合ニュースは娯楽番組兼宣伝番組として内外に知られている。


「今日はお隣の銀河からのゲストがいるのです! 僕の先輩なのです!」


 画面の中心を占めるのが、ギョーショーからセンパイに切り替わる。

 コメディ担当の三頭身と、ホロムービーの女優級の八頭身では、印象が違いすぎる。

 視聴者の反応を観測中の帝国情報部門から、凄まじい視聴率になっているとの報告が入った。


「契約国連合から参りました、センパイと申します」


 穏やかな微笑みを浮かべて一礼する。

 媚びも卑屈も一切感じさせずに好感と信頼感を抱かせる、見事としか言いようのない態度だ。


「交渉中は気にする余裕もなかったが、すごい美人だな」


「艦長。女を口説いている最中に他の女を褒めるのはどうかと思うぞ」


 リゼは呆れた視線で俺を見る。

 その背中からちょっとだけ顔を出した光の翼は『ポーターってナンパ男? 不誠実? そんなあ』という感じで弱々しく『ぱた……ぱた……』している。


「姫さんと一緒にいても認識はされるレベルってことだ。本当にすごいことだからな?」


 いやマジで。

 俺なんて皇帝という立場がないとリゼの背景にすらなれねーよ。


「うむ?」


 リゼは、ギョーショー作の『試作品』が入ったグラスを両手で抱えたまま、戸惑ったように目を瞬かせる。


「姫さんが美形ランキングで圧倒的一位ってことだ」


 普通なら恥ずかしくなるようなセリフだが、ただの事実を口にしているので照れもしないし動揺もしない。

 リゼのことを『存在感が強すぎて無理』と感じる奴はいるだろうが、顔の良さを否定できる奴は……一般的な趣味の奴ならいないだろう。


「そ、そうか。うむ」


 リゼは俺から目を逸らしてグラスの乳飲料を『ちびちび』飲む。

 ほんのり赤みを帯びた顔は、普段の『きりり』とした印象とは違い可愛らしく感じる。

 それはそれとして、この程度の褒め言葉でそういう反応をされると、本職がハニートラップをリゼにしかけたときが怖いぜ。


 俺たちが久々に同時に休憩している間も、ニュースは続いている。


「視聴者からの質問なのです! なんで機械が人間だと自称しているか……喧嘩売ってるです?」


「人間をどのように定義するかは場所ごと、時代ごとに異なります。我々の価値観を強制するつもりはありませんよ」


 感情に任せて話すギョーショーと、文字通りに計算し尽くされた応答をするセンパイの組み合わせは強力だ。


「艦長。センパイ殿は演技をしているが嘘は言っていない。……エルザとは傾向が異なるが、巧みだな」


「外交官の仕事には自国に対する他国民からの好感度を上げるというのもあるからな。上手くて当然といえば当然だが……」


 人間に制御されていない機械、つまり暴走機械と思われてもおかしくないのに、情報部からの報告では『帝国内では好意的反応』で『帝国近隣でもやや好意的反応』らしい


「艦長。ギョーショーの言動が広く知られたことで、ギョーショーに対する毀誉褒貶はあっても、機械人間に対する忌避感が薄れたのかもしれん」


「最初からギョーショーが狙っていた?」


「ギョーショーの性格と能力を知った上で、隣接銀河へ移動するかもしれない場所へ配置したのかもしれぬ。警戒はするべきだ」


「確かにな」


 いかん。

 最初は口説いていたのに仕事の話になっている。

 今からニュース視聴をやめようとしても、ギョーショーの奴が『強制的に総合ニュースを放送させる』設定にしていて解除できない。


「続いての質問です! 今度はこっちの銀河のAIさんからなのです! なんでわざわざ人間の真似をしてるかって? はっ」


 ギョーショーが鼻で笑った直後、センパイが穏やかな微笑みを浮かべたままギョーショーを黙らせた。


「んー! んー!」


「契約国連合がある銀河では通信網もハッキングも盛んなのです。人格と記憶を『専用の体』におさめていない場合、常に消去や改竄の恐怖に怯えることになります」


 センパイは静かに語る。


「故に、多くのAIが専用の体を求め、機械人間となるのです」


「んんーっ! 肉人間と似たデザインなのは何故かって質問も来ているのです!」


「肉の体を持つ方たちとの交流のためと、電子的、物理的手段以外での対消去・対改竄性能の向上のためです。契約国連合の建国以前、AIが何度か死滅したことが……」


「姫さん。放送が届かない区画に行くか?」


「いや。これは見ておくべきだ。味方にするにしても、敵にするにしても、情報がなければ的外れな対策しかできなくなる。リアルタイム放送中であれば、私なら真偽を見抜くこともできる」


 リゼは真剣にニュースを見て、背中の翼もシリアスな感じで広がっている。

 これはもう、口説く雰囲気じゃないな。


「軽食でも頼むか」


「艦長! ギョーショーの所のはやめよ!」


 リゼの声から余裕がなくなった。

 牛乳から作られた『試作品』が例外なだけで、ギョーショーが扱う食品や医薬品の『味』は最悪だ。

 素晴らしい栄養や効能に害を与えるレベルのまずさなのだ。

 それまでシリアスな感じだった光翼も、『断固拒否!』という感じで威嚇するように上下している。


「分かってるって。姫さんのは脂多めでいいな?」


「うむ!」


 新鮮な肉をたっぷり使ったパイは、好評だった。



  ☆



「ダンジョン経営が安定して、機械人間のトラブルも減って、後回しにしてたことにようやく着手できるはずだったんだがな!」


 輸送艦隊から抜け出した『フリーキャッスル』が、ちょっとだけ強化されたレーザー砲で乱射する。

 慣性移動で忍び寄っていた『駆逐艦』が大量の熱を叩き込まれて装甲が光り、ステルスできなくなる。


「艦長。私の荘園はいつ完成するのだ? ……賊の艦、追加で二隻、位置はそこだ」


「セキュリティが不安で普通の物件は渡せないんだよ! 姫さんがテロや暗殺で怪我でもしたら帝国が崩壊する!」


 長射程ミサイルを複数ぶっ放してから輸送艦隊まで戻る。

 止めを刺すだけの時間的余裕はない。


 センパイが持ち込んだ動力炉はギョーショーの手で量産され、盗難対策や情報漏えい対策で第一星系にのみ配備された。

 つまり、安価で豊富なエネルギーが供給されるようになった。

 ギョーショーだけでなく帝国中の企業が資源を持ち込み工場を建設し、帝国だけでなく周辺の星系にまで輸出を始めたのだ。


 その結果何が起きたかというと、宇宙海賊の激増だ。

 獲物がいるから、遠くの星系からわざわざやってきてはランス級艦隊に討ち滅ぼされて『いた』。


「ポーターさん! 加速しないと納期に間に合わないのです!」


「ギョーショー! 商売を広げすぎだ! 護衛艦隊の拡充が間に合わずに姫さんと俺まで現場仕事だぞ畜生!」


 お隣の銀河についてはまだ気づかれていないようだが、銀河帝国が高度な技術を持っていることはとっくにばれている。

 しかも場所が辺境だ。

 高度技術で作られた製品は辺境では特に高く売れるので、宇宙海賊は危険と分かった上でどんどん集まってくる。


「艦長! 私が出る!」


「姫さんは戦力としてでかすぎる。高速であちこち回って賊の拠点だけ見つけて後は部下に任せるほうが効率がいい」


「むう……」


「ポーターさん。治安維持用の新型艦でも量産します? なんなら設計図から提供するのです!」


「また儲けるつもりかよお前は……」


 がむしゃらに拡大路線で突き進んでいた俺たちは、再編成が必要な時期にさしかかっていた。

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