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無題/日記  作者: 岸 星煌
序章 『とある日の運命と無数の世界線の始まりについて』
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――朝7:00



side 岸 星煌 (私だから!!と、横に殴り書いてある)






「ねぇ!!!」

朝起きてすぐ、起きているであろう諒に話しかける。

「びっ……くりした。どうした? そんな急いで」

ソファーに座ってた相手は驚いた様子でこちらに振り返る。いつも通り、乱雑に本を置いて。



……まて、その前にとりあえず、昨日の出来事で、分かるを先に記そう。



・私は、あの穴を通じて他の世界線に来た。

・もう一人の自分(長いのでアイツと呼称する)は、この世界の私?で、なんかよくわかんないことを色々知ってる

・私にも能力がある←ここ重要!!



簡潔にまとめると、こう。考察は後回しだ。



話題を元に戻そう。


「諒ってさ、「才能は生まれながらに持つ物」って言ってたよね?」

「じゃあその『万能』って、どうやって分かったの?」

だいたい何でも出来るやつは、私の世界にだって稀に居る。

気付かないで一生を終える……なんてことになってないなら、何か気付くきっかけがあったはずだ。


「あぁ、俺の場合はそれ専用の病院に行って診断してもらった」

「ほら、証明書(ここ)にも書いてあるだろ?」

諒がポケットから証明書を取り出した。そこには、誕生日の下、名前の上に、はっきりと『万能』の文字が刻まれていた。


「まあ、人によって違うけどな。俺はこの名前、診断してから初めて知った。

診断しなくても分かるやつは居るし、亡くなった後に判明する…………

……どうした?そんな自分の証明書見つめて」


「あ、ああ、あ、…、……」


カードを持つ手が震える。偽造されたそれは、本物と同じ効果を持って、輝きを放っている。

「そんな薄ら笑いして何があっ、た……」


隣に来て覗き込んだ諒も思わず息を止める。

誕生日の下、名前の上に、空白に、はっきり刻み込まれた文字がある。


『観測』


その日の輝きを、一生忘れることは無い。



……


「わ〜お、ほんとだ。どうしてだろうね?"コレ"」

「俺にもさっぱりです。確かにこの年代じゃチャームを持つのは当たり前だが……どうして異世界人も?」

二人は私の証明書を持って話し合いをしてる。照井さんが作ってくれたそれにも刻み込まれていた通り、私はちゃんとチャームを、才能を持っていたのだ。

「私が作ったやつだから、偽物ではない……いや、偽物なんだけどさ」


「……星煌、お前チャーム使った事あるか?」

「…………星煌?」



ふふ、ふふふ。なんて、なんて素晴らしい日なんだ!

いや〜ついに平凡から抜け出す時が来ちゃったか!確率は収束するってやつ?今まで右肩下がりだった運勢が、右肩上がり!素晴らしい逆三角形だ!


『才能』『観測』だってよ。キャーかっこいい!! 夢であった天体観測を叶える時が来ちゃったって感じかな〜!!!!



「おい」

「あっはい、すいませんなんでしょうか」

「……話聞いてなかっだろ。まあいい」

諒につつかれて正気を取り戻す。

本当にごめんなさい。内なる自分がはしゃいでました。


「チャーム、使ったことあるか?」

「今までよく見てなかったけど、星煌ちゃん、今も目が光ってるから、無意識に使ってるんじゃない?」

「あぁ、本当だ。昼だから太陽光と混じって余計わかりにくい……」

「色々話すと長くなるんですけど、昨日…………」




……



「……お前、それ絶対騙されてるぞ」

昨日の夜起きた出来事をかくかくしかじかで話した。自分に会ったことと、その時才能を初めて使ったこと。

「えぇ!? だって、顔もそっくりだったし……」

「う〜ん、写真とかも無い?」

「スマホ置いて行ったので……」


沈黙が場を支配する。確かに、今思えばスマホを持って行っておけば良かったと、今更後悔する。

「……怪しい」

「いや……たしかに怪しくはあったけど!」

すごく怪しかった。なんなら、今でさえ信じる材料が顔しかない。

「"もう一人の自分に会った"かぁ……」


「まあ、その星煌ちゃん(二人目)の事は置いておいて、チャーム、使った感じどうだった?」

「なんか、記憶が流れてきたんです。でも、それには全然見覚えが無くて……」

あの一枚画を思い出す。それは簡単に表面まで浮き上がってきて、すぐに言葉にできた。


「私と、照井さん。あと、知らない女の人がいました」

「声とかは何も聞こえなかったんですけどね」

「あれ、私もいたのか」

「そうなんです」

そうだ、照井さんが居たんだ。私の横に立ってて、女の人の方を見てた。

「その女はどんな感じだった?」

諒が問いかける。


「え〜っと、"サイドテール"の、"背が高い"女の人……」

距離が遠くて全部は見えなかったが、その位は覚えている。

「あぁ、あと、インナーカラー……"オレンジ色のインナーカラー"が入ってました」


「う〜ん、先生その人見覚えないな……でも、私と一緒にその場にいたんでしょ?」

「そうですね、向かい合って……あぁ、場所は、家の前のすぐ近くの森辺りでした」

「なるほどな……」


……照井さんも知らないとなると、完全に手詰まりだ。

『観測』した結果がこんな意味不明だったら、やる意味が無い。やる気も下がるし……


「そもそも、それは何時の出来事なんだ?」

諒がまた疑問を出す。

確かに、結果が知らない物だった。までならまだいいけど、それがいつか来るものだとしたら……


「う〜ん、どっちかと言うと、『未来視』に近いのかな」

照井さんが答える。

「星煌ちゃんも、私も誰も知らない出来事。

だとしたらそれは過去や今ではなく"未来"で起こりうる結果なんじゃない?」

「あぁ、なるほど。それは確かに……」

諒も、私も納得した。


「"いつかくる出来事"を切り取って観測する」

照井さんが立ち上がってホワイトボードに図を書きはじめる。

「それがいつおこるのか。その結末は変わるのか」

キュッキュ。黒いペンが擦れる音が響く。

「そういった類の事は分からないけど、とりあえずの仮説はこうかな」


「いつかくる未来の一つを、先に観測する」

ホワイトボードに、黒い字で書かれたそれは、ほかの図より、よく目立っていた。


「俺もそう思います。星煌、さっき観測した結果のやつ、忘れるなよ」

「うん。覚えておく」

だって、私が現像したんだから。忘れるわけが無いよ。



時刻は、いつの間にか10:00になっていた。



「え!? 星煌も才能あった!?」

「も〜ちょっと早く連絡してよ!!見せて見せて!!」

午後13時。早めに帰ってきた心に報告したら、自分より飛び跳ねて喜んでいる。

諒と先生は遅めの昼食を取って、私は心に抱きつかれた。


「うわ〜すっご〜い!!」

とはしゃいでいる心を横目に、(そんなに喜ばしい事だったとは……)と、逆に冷静になる。

そういえばあの二人とも、どちらも(「おめでとう」)なんて言ってくれなかった。

他人の幸運を喜べるなんて、いい人だ。


ふと、気になった。そういえば、心にも星があるなら、チャームがあるはずだ。

「心にも、あるの?才能」

興味津々にカード見つめていた顔がこっちを向く。



「あるよ! けど、忘れた!!」

「え、忘れた?」

「うん!!」

……底なしの明るさだ。自分の才能を忘れているのなんか気にしてませんよと、言われているようだった。

それにしても、忘れた?忘れてるのに、チャームは使えている?

なぜ忘れたのか……記憶喪失、或いはただ単に記憶力が悪いのか……

いや、それないか。私じゃないんだし。


「ほら、ここのチャーム欄」

そう言って心は自分の証明書をを手に取って見せてくれる。

「ちゃんと枠があるんだけど、黒塗りになっちゃってるの」

「ほんとだ……」

文字が、黒い███で隠されていた。

これは、心が忘れたから黒い塗りになっているのか。それとも、忘れさせるように黒塗りにしているのか。前後が分からなかった。

そもそも誰がやったのかすら、分からないのに。


「でも、ちょっとならわかるよ!敵と戦う時に使えるから、私のチャームは戦闘向きって事!」

「あ〜たしかに。使えるなら、いいのか……」

「そう! いいのいいの! て、言うか『観測』ってカッコイイ!」

……本当に気にしていないようだ。

自分より私の才能の方が気になってるし、使えない訳では無いのだから。

まあ、本人がいいなら、よしとしよう。

そう言って、私は久しぶりに心とお喋りをした。


時間は、おやつタイムを忘れさせる程短かった。



――夜、18:20



「わ、これ凄い美味しい」

「まじ!? 一口ちょうだい!」

「いいよ、ほらここの部分」

「…………本当だ!私も次それ頼も!」

ご飯の時間になると、必然と会話が盛り上がる。

……まあ、一人を除き。

「ごちそうさま。じゃ、先生寝るね」

「おやすみ! 先生!」

「「おやすみ!」なさい」

そう言って照井さんは2階へと階段を登る。

……早い。あまりに食べるのが早すぎる。

早食いでもこんなすぐ食えねぇよ。一口で食ってんのか?とツッコミたくなる現象。

でももう慣れた。こういうのは適応力が大事だから。


そんな事を思いながらもう一口齧る。昨日とは違うお店のハンバーガーだった。



「は、あぁ〜」

自室で大きな欠伸をする。なんだか今日……いや、昨日の夜……は、怒涛の一日だった。

疲れからか興奮からか知らないが、今横になれば直ぐに寝れそうな気がした。

まあ、無理もない。むしろ、今までこんな馴染んでた方がおかしかったのだ。


ここは、"違う世界線"

他の世界も、行けるのだろうか……。

まあ、またあの穴に入るのはごめんだから、私にはもう無理だろう。


日記を閉じて、席を立つ。

静かに、眠りに入る。


……



『目的、目標を探せ』だって?しかも無駄に煽られてるし。

今は、ただ協力してるだけ。行くあても無いし、帰れもしないから。

才能もわかった。委員会にも所属して、そこそこ馴染み始めた。

ただ、目標がない。わたしは、隠蔽のために連れてこられて、ここにいる。


私はこの日記を、なぜ書いている?

ただの義務感だ。彼の、彼女達の気持ちを裏切るわけにはいかない。




「目標なんて……そんなの、叶うことならなくていいよ」

心の中でつぶやいた一文は、誰にも聞かれることなく闇へ消えていった。






記入 記録 : 星煌

かくして、『特別』への独白が終わる。

始まりというには少し長く、終わりというには短すぎる。

そんな、序章。

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