『Log_7』
星々の煌めきが、人の目に留まったのはいつから?
さぁ。人が産まれる前から、星は大地を見守ってたからさ。
星に聞けば、わかるよ。
燃える星。散ったら、何処へ?_│
「な、にこれ」
鏡に写った自分の目には、諒や心の目と同じ白い『光』が、姿を表していた。
「夜だから、よく見えるだろ?」
そう言った途端、自分の目を写していた手のひらサイズの鏡が割れる。
それは形も大きさもバラバラで。地面に落ちた鏡はそこから動けなくなった。
隔てていた一枚の鏡が割れたことにより、目の前には元の景色が戻ってきた。
たか、そんな唖然とする私の目に映ったのは。
自分と瓜二つの顔。まだ鏡があるのかと手を伸ばしたが、それは何事もなく相手の肩に触れた。
「ここの世界の私に申し訳ない。だっけ?」
「そうだね。でも、この世界線の私はもう居ない……いや、正確にはいるか。"私"が」
訳分からない独り言をブツブツと呟きながら、相手はメガネを取り出す。
それを掛け、私の顔をジロジロと見た後……興味を無くしたのか、すぐにそっぽを向いた。
「説明するとややこしくなっちゃうな〜」とそう言いながら、相手は散らばった鏡片を一つ手に取る。
その透明は、周りの景色を、黒を写した。
(わけが、わからない)
なんで私にも才能があるのか。というか、ホントにあれば私なの?
「ねぇ、説明して欲しいんだけど」
そもそも、なんでそんなことまで知ってるのか?
「……そうだな。全部言っちゃったら面白くないから、少しだけ。"二つだけ"教えてあげよう」
「は?、いや全部教えて欲しいんだけど。そんな、考察の余地を残して何がおもしろ……」
「あ、ちょうどいい」
私の話は聞いていないようだ。そう言って手に持ってた鏡片をこちらに投げてくる。
咄嗟にキャッチした鏡には、やはり私が写っていた。
目が輝く。白く反射して、少し眩しい。
今まで何度も追い求めてきたその輝きが、そこにはある。
「それがお前だ」
「そして、この地面に散らばる欠片が、別の世界線あぁ、パラレルワールドと、言った方が分かりやすいか」
地に伏し動かない、割れたガラスに視線をやる。
無数に散らばる破片。全て数えるのに途方もない時間を要し、小さすぎる欠片は目に入らない。
「パラレルワールド……」
そんな、異世界の一つ。
「そうだ。ここは、正確に言えば『異世界』ではない」
「ただ、世界線が違う。それだけの事だ」
パラレルワールド。
もし世界が__だったら?の、空欄が『才能が溢れた世界』にあたる、そんなような。
「そして、次。"穴が、なぜお前を、お前の世界を選んだか"」
突如空に現れた。摩訶不思議であり非現実的なモノ。
数ある世界線の中で、私が住んでいた世界線が選ばれたのには訳があるらしい。
「その問に対する解は、ここの世界線と最も近い世界がお前の世界線だったから」
「もっと詳しくいこう」
相手が空中に図を書きながら説明する。
「小さな行動一つで、世界は分岐する」
あみだくじのような線をまばらに書く。時にはそれを交差させ、分裂させる。
「だが、以下のように条件を設定するだけで、世界線は絞られる」
「『もしあの時、世界が才能の均衡を成していなかったら』」
「その設定から最も近い『隣人』が、お前の世界だった。だから、穴はお前を選んだ」
つまり、その分岐点が"一つ"違うだけ。
それが〇か✕かの違いで分岐し、その枝分かれの一つがこの世界だった。
ただ、それだけの事。そして穴が空いた先に、たまたま私が居ただけの事。
鏡片が相手……いや、私に取られる。納得はしてないが、理解はした。
「なんで、お前がしょっちゅう『デジャヴ』を感じると思う?」
デジャヴ、というもの。既視感とも言っていいだろう。
過去にあった出来事と今を重ね、初めての事を二回目と誤認識するような。そんなもの。
「え?そりゃあ、過去に同じ出来事があったから……」
私はそれを、至極真っ当に答える。
「はは、難しい話は後で、次は簡単に行こう」
何を思っていたのか、私の顔を見て笑った。
そして特に解説もないまま次の話題に移る。あぁこいつムカつくわ普通に殴りたい。
「さっきので一つ目は終わり。最後は、お前のキラキラ輝く才能について」
「!」
その言葉に、反応してしまう。当たり前だ、今一番知りたかった事だから。
そして相手は、その反応を待ってたと言わんばかりに饒舌に喋りだす。
「お前は中々鋭い。さすが私だ。……才能。いや、『チャーム』と呼ぼう」
「今のお前みたいに、その目が輝きを放ち始めるのがチャームの発動合図だ」
「輝き方は多種多様。お前のような星……あー、お前の目の星は、どうやって書くか意見が割れる方じゃなくて、ひし形っぽい形なんだな」
「形に意味はあるの?」
「さあ?知らない。だいたいお前みたいな形だけどな」
「はぁ?「「知らないなら言うなよ」」……」
「って、思っただろ?」
ふむ。こいつウザイな、さすが私。
……いや、同じ人格だから考える事も同じなのか。
「篠原 諒。アイツのチャームは『万能』で、ちょっと指を動かせばなんでもできる」
「が、彼はその才能が好きじゃないから、自分で発動するタイミングを考えている」
本来は常時発動型なのだろう。なぜそうしないのか、心底不思議だった。
「水凪 心のは……まあ、本人を突き動かした方が良いな。私なんかが教えちゃつまんない」
「そして照井 穹。アイツのは、もうヒントがある。せいぜい自分で見つけ出すか、相手から教えてくれるのを待つんだな」
一人一人指を上げて名前を出す。
「……なんで、名前を、才能を知ってる?」
疑問。名前はもそうだが、なぜ才能まで……
私やみんなのことは知ってる素振りを見せるくせに、自分については何一つ語ろうとしない。対話するなら、情報を出すべきだ。
「あぁ、それは無しだ。ややこしくなるから」
だがアイツは手でバッテンを作った。
「はぁ!? なにそれおかしいでしょ」
思わず苛立ちが表に出る。立場は相手の方が上だとわかっているけど、所詮は自分だ。どうあたってもいい。
「あぁ、おかしくて結構」
相手がどうでも良さそうな感じで、次の話を進めようとする
「……でも、少しだけならいいか」
「よく聞けよ」
私と同じ声で、同じ顔でしゃべる。
急に真面目になったその姿に、なんだこちらにも緊張が走る。
「私の名前は、岸 星煌」
「「……」」
「どう、満足?」
「…………はぁ」
ため息も出ます。
なにか重要な文言が飛び出てくるかと思ったら、ただの自己紹介ですか。
もう、怒りを通り越した。呆れだ。んな事わかってるに決まってるだろ。
ジョークだとしても笑えない。そういうのはTPOを弁えてやって欲しい。
しかもすっごいドヤ顔。
渾身のギャグだったのか、それともこのネタを一生貯めてたのか知らないが、腰に手を当ててカッコつけてまでやる意味は無いと思った。
「はぁ。それで、だ」
あぁ、諦めた。ため息をついて続きを話し始める。切り替えが早いのはどこのどいつに似たんだか。
でも、おかげで頭が冷えた。冷静にいこう。
「お前のチャーム。ずっと、光ってるだろ?」
「う〜ん……常に光ってる理由全部言うと面白くないから、一部だけ、且つ分かりやすく教えてやる」
「まず一つ。さっきも言った、お前が感じる『デジャヴ』それは、分岐点」
「『分岐点』?」
「あぁ。お前が感じるデジャヴは、他の世界のお前が選択したのと重なっているんだ」
重なる。それは過去と今を認識することで生まれるデジャヴ。
「そして、"とある事"が起きるとお前はデジャヴを認識する。お前は無意識に、チャームでそれを『視て』いる」
私が『他の世界線の私の選択を視ている』ということか。
それは過去ではなく、現在進行形の話だった。
「そして、二つ」
そう言って、私の肩に手を置く。
「目を閉じろ。……はぁ、安心しろ。コツを教えてやるだけだ」
「え〜……あー、うん」
躊躇っていたが、言われた通りにする。光が見えなくなった。
「次に説明するのは、チャームの発動。それに必要なのは二つ」
「一つ。自分の才能が絶対であるという『確証/自信』」
「二つ。それを扱うという、『覚悟/信念』」
私には、それが足りてないのか。
「信じればいい。お前だけの、光を」
突然カッコつけたかと思えば肩から手を離し、先の未来を私に委ねた。
星。それは、絶対的な光。
私は、それを観る。
そして、星を宿す。
(……あ、)
暗いのに、いや、暗いから?
不思議と星が見えた気がした。
「頭に思い浮かんだスローガンを詠唱しろ」
まだ、出てこない。きっと、足りてないのだろう。なにかが。
……でも、"星"が見えたなら、そちらへ進めばいい。
そうだ。いつも通り、敷かれたレールの上を歩いて……
…………いや、『そうじゃダメなのか』きっそうだ。
みんなが、チャームを輝かせる時、なにを思うんだろう。願うんだろう。
私は、そうだなぁ、私は……
……
私が、その"星"をも飲み込む、いや、写し出す。
夜空に、なればいい。
うん。そうしたら、みんな輝けるから。
『本当に?』
『自分が一番目立ちたいのに、そうやってまた一歩下がろうとする』
『でも失敗を恐れているのに、また外に出ようとする』
『そんな、何もかも中途半端の君が、確証を?自信を?』
頭の中に、無数の人の声が響く。
最も、その人は私であり、発言しているのは自分なのだけれども。
「……うるさいなぁ」
「私が『良い』って言ってんだから、いいんだよ」
この瞬間だけで良い。一瞬だけでも、その覚悟が芽生えれば。
「『剣は錆び、花は咲く。して、巡る日々は―』」
刹那
疾った。誰かの/わたしの"記憶"が、/"未来"が。
反射的に、目を見開く。
黒い視界の中。突如として脳に、全く知らない記憶が流れ込んだ。
先生と、知らない人が、家の前に居た。
その一枚画だけ、一瞬だったけど、脳の裏に色濃く焼き付いた。
視点は、私だった。そりゃそうだけど……
目を開けた世界は、いつもの道に戻っていて。何故か玄関の前に立っていて。
相手はもう、居なかった。
そして、ポケットに入っていた、小さな紙の切れ端。
「『目的、目標を探せ』」
「『……まさか、このままのうのうと生きるのか?』」
木曜日。もっと色々あるけどとりあえず、日記はこれで終わり。
記録:記入 星煌
Q 諒くんの万能は、本当になんでもできるの?
A たぶん!この前、それと一言一句全く同じこと聞いたら、皿回しをやってくれたよ!足で!
回答 : 心




