表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無題/日記  作者: 岸 星煌
一章『その言葉の真■と確かな芸術について』
7/21

Log_6

種をまく。水をやる。花を咲かせる。

そうして出来た一輪を、引きちぎる。

生なんて、どうでもいい。

美しくあれば、それでいい。

そう、摘んだ花を押し潰した。



目線を向けられた人 その前に_│



side 穹/視線


――朝


「……朝」

自室で目を覚ます。

彼、先生。または穹。

ベッドから起き上がって、冷たい地面に足を置く。春夏秋冬。いつでも床は冷たい。

彼は目覚まし時計を使わない。起きた時間が6時や13時でも、その起きた瞬間こそ、彼にとっての朝だ。

今日は9時30分。"先生"にしては遅いが、"彼"にとっては早い方である。


洗面台で簡単に顔を洗ったと思ったら、また自室に戻る。

彼の時空間管理委員会での過ごし方は様々だ。


今回は穴の対処以外で話そう。

早く起きれた日は釣りに行く、遅かった日は先に毎日連盟()に提出するレポートを。

時間があったらリビングでテレビを見て、暇だったら自室で作品を作り上げる。あとは、趣味の芸術鑑賞など。

やることは様々だが、一貫して彼は美しいものが好きだ。

雪に咲く花、風に飛ぶ雲。

偶然生まれた黄金比。

……

まぁ、時には人の心なども。


どうやら今日の彼は、芸術を創るのを選んだみたいだ。


カーテンを閉めて、部屋の明かりを消す。部屋には静寂と、心臓の音だけが響く。

手元の電気を、中にして付けた。


「……〜♪」

一つ一つ、繊細に。

「うん、この茶の柄が素晴らしい」

彼の芸術への執着は凄まじい。

それは、矢がリンゴを貫くのにも劣らず、海が風で流されるほどの絶対だった。


鼻歌を歌う。それはむかしむかしの、童話で作られた曲だ。


彼がやる分野は相当多い。

壁にかけられた絵画、乱雑に置かれた彫刻、切り絵。本に挟まる押し花、折り紙……それを見れば明らかだ。

時には音楽といった別方面の芸術も作り上げる。

ジャンルも様々だ。美しい空、孤独な蝶。時にはグロデスクな絵も創りあげたりする。

まあどうにしろ、彼の作品は人の目を引くものがある。




まぁ、天才的な芸術家なんて、ある程度倫理観が欠如していて。


「あぁ、美しい」

電気を消して、懐中電灯を付ける。

思わず口元が緩んでしまう程彼が見惚れたのは、死んでしまった野良猫の茶色い毛で作られた、ネズミの影絵だった。



「でも」

その笑みはすぐに不快感へと変わって。


「人為的に作られた美なんて、こんなものか」

懐中電灯のスイッチ切る。暗闇に落ちた。

少しの嫌悪感は、ある意味で称賛ともいえた。


side 星煌


「『再生』?」

「うん、昔……と言っても10年くらい前かな?

その時から存在する派閥で、かなり悪い事してニュースになったんだよ。」


派閥。序列にして一番下。非公式の組織で、数も少ない。が、名が通っていないだけで有名じゃない派閥も含めたらそこそこある。

活動内容も各々違う。

上に歯向かおうとデモを起こす。壁に落書き。ただゴミ拾いをする派閥もあるらしい。(心によれば)


「派閥だから人数は少ないけど、銀行強盗とか、ある研究所を襲ったり……」

「……許せないよ!」

心がプンスコ怒り始める。まあ、その怒りは正当なものか。

お金が欲しいのか?それとも別の目的があるのかは知らないけど、もっとまともなやり方はなかったのか、とは思うけど。

「それが、最近また取り上げられたらしいよ」

心がテレビをつける。映されたニュースでは都合よくその内容が……取り上げられては無かった。なんかの委員会が、交通安全を呼びかけている。


「悪事を働いたニュース、でな」

諒が補足してくれた。スマホで見せてくれた記事には

『再生 とある集落を占領か』

と、タイトルに書いてあった。

「へぇ〜……」

画面をスクロールする。占領以前の集落の画像はあったが、再生に所属する人の顔写真とかはなかった。そう簡単には撮られないか。捕まってもないんだし。

「きっと、指導者が何とかしてくれるよ!」

希望に満ちた声を出す。

不安だって思っても言ってないのに、心がよしよしと慰めた。


なんだか、心の目が光った気がした。

きっと、気のせい。


――昼 13:10


「今日はどうする予定?この後、暇なんだよね」

日課の訓練も午前に終わらせて、昼飯も食べた。虚無期間中のデイリーも終わらせたから、やる事がないのだ。

「私も今日暇!だからお買い物してこようかなって!」

そう言った心はもう支度を始めている。今日は5月下旬にしては中々寒いので、着ていく羽織を選んでいる最中だ。

「どれがいいかな〜」なんてひとりごとを言いながら、鏡の前で一人ファッションショーをしている。

「はぁ……俺は本読んでるから、好きにしろよ」

そう言ってまた目線を本に戻してしまう。

なんで自室じゃなくて、わざわざリビングで読んでるんだろう……

なんだか、指摘したら「そうだな」って言ってほんとに自室に行ってしまいそうだから、言うのはやめた。


そうだ。

「決めた。それ、一冊貸して」

そう言って散らばった本から目に付いた白い表紙の本を一冊取り上げる。

「はぁ?、まあ、別にいいか……」

一瞬こっちを見たが、また本を読み始めてしまった。

面倒見がいいのか悪いのか、割と諒は雑だ。


そう思いながら、取った本を見る。前の漢字が並んだ難しそうな本とは違うジャンルだ。

うーんミステリ?違うか、まあなんかの小説で、中々目を引くタイトル。

本には疎いので、作者名は聞いたことがなかったが、多分私の世界にもいるだろう。これは、外国の人かな?


「ねぇ!これ似合ってるかな?」

観察してたら、心が話しかけて来た。

一瞥して、すぐに返答する。

「うん。なんでも似合うから、自信もって行っておいで」



「……なんだか、諒に似て雑」

心が頬を膨らます。どうやらその答えはお姫様には不満だったようだ。

謎に飛び火した諒。でも本人は全然気にしてなさそう。

「、え?そう?

う〜ん、その青いジャケット、白に映えててすごくいいし、5月を象徴するコーデって感じで、凄い素敵だよ。真似したくなっちゃう」

「中にはシャツを着て全体的にスタイリッシュにまとまっている。手につけている金色のブレスレットが目立ちすぎず、互いに引き立てあって……うん、オシャレだ」

右手でサムズアップをする。

内なる語彙力を駆使して精一杯褒める。解説口調になってしまっているのは許して欲しい。

と、いうかさっきの言葉でちゃんと褒めてたつもりだったんだけど……うん。似合ってるし。


「ふむ、75点。」

な、中々辛口ですね……初心者にはちょっと厳しいかもです。

「でも友達ボーナスで、100点!!!」

バン!とドアを開け、捨て台詞を吐いてルンルンで行ってしまった。

鍵を閉めるのを忘れるほどには。


……まあ、友達ボーナスで閉めといてあげよう。

というか、いつの間に友達に?

私たち、まだ出会って一週間程度だよ?




閑話休題


そうしてウキウキで読み始めた本は、3時間ほど時間を潰すのにはちょうど良かった。

内容は、中々美しいとは言い難い、けど素晴らしく、……なんというか、グロテスクな本だった。


階段から足音がした。消去法で誰か分かってしまう。ていうかもうこんな時間だし。

「あ、先生」

「はぁ〜おはよ、諒くん。何か残ってるご飯ない?」

「昨日余ったポテトフライならありますよ」

「そうだった。でも、それしかないのか……」

照井さんはフラフラと台所の方へ向かって食料を漁り始めた。

この時間(17 : 30)はおはようなのか?

なんか、先生としては大分マイペースで、掴みどころない、人だ。

いい人ではあるのだろうけど……なんか、世間一般的に考える、完成されたいい人では無いんだよな。ちょっとズレてる感じの。



「知ってます?再生がまたニュースになってましたよ。遠くの集落を襲って占領したって」

作っていたインスタントラーメンから目を離し、こちら見つめる。

「へぇ〜昔からあるあのね。また、なんかやったんだ」

こころなしか、声が一オクターブ低い気がした。

彼は、鍋に入ったインスタントラーメンをぐるぐるかき混ぜながらそう答える。


まあ、そんなことよりも、今日の夜ご飯の方が気になった。あの人、今食べて夜入るのか?


――夜



まあ、入るといえば入るのか…朝も食べてなかったし……胃袋すごいな、あの人。


今日は割となんにもない、素敵な一日だった。穴も出なかった。本も読めた。日課の訓練もこなせて、中々上出来だ。

最低限の事を当たり前にやって、平凡な日々を過ごす。あぁ、なんて素晴らしいんだ。


そうだ、寒いけど今日は天気が良かったし、また散歩にでも……

…………いや、辞めておこう。まだあのトラップが心にきてる。

あの時、こう言葉では、日記では表せない程の恐怖を感じていたのだ。実は。

そりゃあ暗闇から人が話しかけてくれば驚くよね、誰でも。

日記では少々盛っていたが、あの時の内心を一言一句丁寧に書き写したらビックリマークだらけになってしまう。


カーテンを空けて、外を眺める。そう遠くないところに街があって、街灯の明かりが星と一緒に灯っている。

またなんか絡まれたら嫌だし、今日はおとなしく寝よう。



…………


違う。『観測』してない。

そういえば昨日、一日のどこかでやろうとしていたのだった。暇なのに、やり忘れるとは……

椅子に腰かける。意味もないのに、空中に右手を出した。


あの時と同じように、目を閉じて。


自然と思った言葉が口から出る。

「『剣は錆び、花は咲く。して巡る日々は……』」



また、記憶が疾る。


ゆっくりと、目を開ける。今回も、一瞬だけ流れ込んできた。

けど、やっぱり思い出せる一枚画。


また私が居た。

あと、黒い髪をしたの女の子が居た。場所は、森の奥?

その子は……なんだ?サスペンダーをして、スカートを履いてて……?画面下を思い出そうとすると、何故か画像がボヤける。隅々までは見られない、そういう仕様なのか?

でも、周りはやはり森だ。木々に囲まれて、二人が光を浴びている。

あと猫がいる。可愛い。


また私が居たけど、もしかして、私が感じた、私視点じゃないと観れない?

それは有り得そう。未来はあくまでも自分の未来しか見えなくて、それに他人が関与してるだけで……

考察が止まらない。でも、もうノートの余白がなくなりそうで、これ以上書き起す訳にもいかないし、う〜〜


※読めない程汚い字が乱雑に書かれている。

翻訳不可


さっき観測した、その未来はいつ来るのだろう。

また布団に横になる。付いてる豆電球が、脳を刺激する。

あぁ、くそ。眠気が吹き飛んで、寝れなくなってしまった。

数ある事件の一つでしかないが、『再生』の件も気になるし……



恐怖と疑問。そしてほんの少しの期待を添えて、また目を閉じた。

脳が、次第に思考をやめた。




side ?


あぁ、くそ。思い出した。最悪だ。

忘れてたのに。"上書き"じゃなくて、"根本からデータにアクセスできないようブロックしたのに。


……嫌な記憶だ。

一回使っちゃったから、もう使えない。

だから、フリをするしかない。()()()()()()()()


また、会うことになるのか。

……

その時は、いい人らしく、一緒に"死んで"やろう




記録 : 記入 星煌

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ