Log_5
星々の煌めきが、人の目に留まったのはいつから?
さぁ。人が産まれる前から、星は大地を見守ってたからさ
星に聞けば、わかるよ。
燃える星 散ったら、何処へ?_│
「な、にこれ」
鏡に写った自分の目には、先程諒や心の目と同じ白い光が、姿を表していた。
「夜だから、よく見えるでしょ」
そういった途端、自分の目を写していた手のひらサイズの鏡が割れる。
一枚の鏡が隔てていた。それが割れたことにより、景色が顕になる。
次に私の目に映ったのは、自分と"瓜二つな顔"の相手。
「ここの世界の私に申し訳ない。だっけ?」
「そうだね。でも、この世界線の私はもう居ない……いや、正確にはいるか。"私"が」
「説明するとややこしくなっちゃうな〜」と言いながら、相手は散らばった鏡片を一つ手に取った。
その透明は、周りの暗闇をひたすらに写した。
(わけが、わからない)
(なんで私にも才能が?てか、ホントにあれば私なの?)
「ねぇ、説明して欲しいんだけど」
ていうか、なんでそんなことまで知ってるの?
「……そうだね。全部言っちゃったら面白くないから、少しだけ、教えてあげる」
「は?、いや全部教えて欲しいんだけど。そんな、考察の余地を残して何がおもしろ……」
「うるさい。お前の心境なんて考えるわけないだろ」
「……」
なんだこいつ。マジで。
こんなに性格が悪いやつが、自分とは到底思えない。
「てか、何?」
「なんで私がいるの?」
「だって、君は別の世界から来たんだから」
「私はここにいる岸星煌であって、正史でもある。そっちがイレギュラーだ」
「はぁ……?」
「わかんなくて結構。覚えておいてくれればね。この世界は、正確には『異世界』では無いってことを」
「はは、難しい話はもっと後にして、次は簡単に行こう」
私の顔を見て笑った。特に解説もないまま次の話題に移る。すごく馬鹿にされたような気分だ。とても憎たらしい。
思わず眉間に皺を寄せてしまった。
「さっきのが一つ目。次は、お前のキラキラ輝く才能について」
「_!」
その言葉に、反応してしまう。
そして相手は、その反応を待ってた!と言わんばかりに饒舌に喋りだす。
「お前は中々鋭い。さすが私だ」
「才能。いや、チャームと呼ぼう」
「今のお前みたいに、目が輝くと、そのチャームの発動合図だ」
「例えば諒のは、『万能』そう、なんでもできる。
が、彼はその才能が好きじゃないから、自分で発動するタイミングを考えている」
「心のは……まあ、本人に聞いた方が早い。私なんかが教えちゃつまんないからな」
「照井 穹。アイツのは、もうヒントがある。せいぜい自分で見つけ出すか、相手から教えてくれるのを待つんだな」
一人一人指を上げて名前を出す。
「……なんで、名前を、才能を知ってる?」
疑問。名前はもそうだが、なぜ才能まで……
私やみんなのことは知ってる素振りを見せるくせに、自分については何一つ語ろうとしない。対話するなら、情報を出すべきだ。
「あぁ、それは無しだ。ややこしくなるから」
「はぁ!? なにそれおかしいでしょ」
思わず苛立ちが表に出る。立場は相手の方が上だとわかっているけど、所詮は自分だ。どうあたってもいい。
「あぁ、おかしくて結構」
相手がどうでも良さそうな感じで、次の話を進めようとする
「……でも、少しだけならいいか」
「よく聞けよ」
私と同じ声で、同じ顔でしゃべる。
急に真面目になったその姿に、なんだこちらにも緊張が走る。
「私の名前は、岸 星煌」
「「……」」
「どう、満足?」
「…………はぁ」
ため息も出ます。
もう、怒りを通り越した。呆れだ。んな事わかってるに決まってるだろ。
ジョークだとしても笑えない。そういうのはTPOを弁えてやって欲しい。
しかもすっごいドヤ顔。
渾身のギャグだったのか、それともこのネタを一生貯めてたのか知らないが、腰に手を当ててカッコつけてまでやる意味は無いと思った。
「はぁ。それで、だ」
あぁ、諦めた。ため息をついて続きを話し始める。切り替えが早いのはどこのどいつに似たんだか。
でも、おかげで頭が冷えた。冷静にいこう。
「お前のチャーム。ずっと、光ってるだろ?」
「う〜ん……常に光ってる理由全部言うと面白くないから、一部だけ、且つ分かりやすく教えてやる」
「お前が無意識に、チャームを使っている。その詳細については言えないが、"私"から見たら結構分かりやすいな」
「……じゃあ、私からは?」
「そんなもんは知らん。お前視点が私に分かるわけないだろう」
正論を言われた。とてもムカついたが、ぐぅの音も出なかった。
「そして、二つ」
「目を閉じろ。はは、安心しろ。コツを教えてやるだけだ」
「……うん」
言われた通りにする。光が見えなくなった。
「次に説明するのは、チャームの発動。それに必要なのは二つ」
「一つ。自分の才能が絶対であるという『確証/自信』」
「二つ。それを扱うという、『覚悟/信念』」
「信じればいい。お前だけの、星を」
星。それは、絶対的な光。
私は、それを観る。
そして、星を宿す。
(――あ、)
暗いのに、いや、暗いから?
瞳を閉じたその先に、不思議と星が見えた気がした。
「頭に思い浮かんだスローガンを詠唱しろ」
まだ、出てこない。きっと、足りてないのだろう。なにかが。
……でも、"星"が見えたなら、そちらへ進めばいい
そうだ。いつも通り、敷かれたレールの上を歩いて……
…………いや、そうじゃダメなのか。きっそうだ。
みんなが、チャームを輝かせる時、なにを思うんだろう。願うんだろう。
私は、そうだなぁ、私は……
……
私が、その"星"をも飲み込む、いや、写し出す
夜空に、なればいい。
うん。そうしたら、"みんな"輝けるから。
「『剣は錆び、花は咲く。して、巡る日々は―』」
刹那
疾った。誰かの/わたしの"記憶"が、/"未来"が。
反射的に、目を見開く。
黒い視界の中。突如として脳に、全く知らない記憶が流れ込んだ。
先生と、知らない人が、家の前に居た。
その一枚画だけ、一瞬だったけど、脳の裏に色濃く焼き付いた。
視点は、私だった。そりゃそうだけど……
目を開けた世界は、いつもの道に戻っていて。何故か玄関の前に立っていて。
相手はもう、居なかった。
そして、ポケットに入っていた、小さな紙の切れ端。
「『お前は、これから何をしたいんだ?』」
急に現れた素っ頓狂な話題に、私は首を傾げることしか出来なかった。
木曜日。もっと色々あるけどとりあえず、日記はこれで終わり。
――次の日、朝7:00
side 岸 星煌 (私だから!!と、横に殴り書いてある)
「ねぇ!!!」
朝起きてすぐ、起きているであろう諒に話しかける。
「びっ……くりした、どうした? そんな急いで」
ソファーに座ってた相手は驚いた様子でこちらに振り返る。いつも通り、乱雑に本を置いて。
……まて、その前にとりあえず、昨日の出来事で、分かるを先に記そう
【メモ】
・もう一人の自分(長いのでアイツと呼称する)は、この世界の私?で、なんかよくわかんないことを色々知ってる。
・私にも能力がある←ここ重要!!
簡潔にまとめると、こう。考察は後回しだ。
話題を元に戻そう。
「諒ってさ、「才能は生まれながらに持つ物」って言ってたよね?」
「じゃあその『万能』って、どうやって分かったの?」
だいたい何でも出来るやつは、私の世界にだって稀に居る。
気付かないで一生を終える……なんてことになってないなら、何か気付くきっかけがあったはずだ。
「あぁ、俺の場合はそれ専用の病院に行って診断してもらった」
「ほら、証明書にも書いてあるだろ?」
諒がポケットから証明書を取り出した。そこには、誕生日の下、名前の上に、はっきりと『万能』の文字が刻まれていた。
「まあ、人によって違うけどな。俺はこの名前、診断してから初めて知った。
診断しなくても分かるやつは居るし、亡くなった後に判明する…………
……どうした?そんな自分の証明書見つめて」
「あ、ああ、あ、…、……」
カードを持つ手が震える。偽造されたそれは、本物と同じ効果を持って、輝きを放っている。
「そんな薄ら笑いして何があっ、た……」
隣に来て覗き込んだ諒も思わず息を止める。
誕生日の下、名前の上に、空白に、はっきり刻み込まれた文字がある。
『観測』
その日の輝きを、一生忘れることは無い。
……
「わ〜お、ほんとだ。
どうしてだろうね?"コレ"」
「俺にもさっぱりです。才能を持って生まれる人だって多いわけじゃないのに、なんで星煌が……」
二人は私の証明書を持って話し合いをしてる。照井さんが作ってくれたそれにも刻み込まれていた通り、私はちゃんとチャームを、才能を持っていたのだ。
「俺が作ったやつだから、偽物ではない……いや、偽物なんだけどさ」
「……星煌、お前チャーム使った事あるか?」
「…………星煌?」
ふふ、ふふふ。なんて、なんて素晴らしい日なんだ!
いや〜ついに平凡から抜け出す時が来ちゃったか!確率は収束するってやつ?今まで右肩下がりだった運勢が、右肩上がり!素晴らしい逆三角形だ!
「おい」
「あっはい、すいませんなんでしょうか」
「……話聞いてなかっだろ。まあいい」
諒につつかれて正気を取り戻す。
本当にごめんなさい。内なる自分がはしゃいでました。
「チャーム、使ったことあるか?」
「今までよく見てなかったけど、星煌ちゃん、今も目が光ってるから、無意識に使ってるんじゃない?」
「あぁ、本当だ。昼だから太陽光と混じって余計わかりにくい……」
「色々話すと長くなるんですけど、昨日…………」
「……お前、それ絶対騙されてるぞ」
昨日の夜起きた出来事をかくかくしかじかで話した。自分に会ったことと、その時才能を初めて使ったこと。
「えぇ!? だって、顔もそっくりだったし……」
「う〜ん、写真とかも無い?」
「スマホ置いて行ったので……」
沈黙が場を支配する。確かに、今思えばスマホを持って行っておけば良かったと、今更後悔する。
「……怪しい」
「いや……たしかに怪しくはあったけど!」
すごく怪しかった。なんなら、今でさえ信じる材料が顔しかない。
「"もう一人の自分に会った"かぁ……」
「まあ、その星煌ちゃん(二人目)の事は置いておいて、チャーム、使った感じどうだった?」
「なんか、記憶が流れてきたんです。でも、それには全然見覚えが無くて……」
あの一枚画を思い出す。それは簡単に表面まで浮き上がってきて、すぐに言葉にできた。
「私と、照井さん。あと、知らない女の人がいました」
「声とかは何も聞こえなかったんですけどね」
「あれ、私もいたのか」
「そうなんです」
そうだ、照井さんが居たんだ。私の横に立ってて、女の人の方を見てた。
「その女はどんな感じだった?」
諒が問いかける。
「え〜っと、"サイドテール"の、"背が高い"女の人……」
距離が遠くて全部は見えなかったが、その位は覚えている。
「あぁ、あと、インナーカラー……
"オレンジ色のインナーカラー"が入ってました」
「う〜ん、先生その人見覚えないな……
でも、私と一緒にその場にいたんでしょ?」
「そうですね、向かい合って……あぁ、場所は、家の前のすぐ近くの森辺りでした」
「なるほどな……」
……照井さんも知らないとなると、完全に手詰まりだ。
『観測』した結果がこんな意味不明だったら、やる意味が無い。やる気も下がるし……
「そもそも、それは何時の出来事なんだ?」
諒がまた疑問を出す。
確かに、結果が知らない物だった。までならまだいいけど、それがいつか来るものだとしたら……
「う〜ん、どっちかと言うと、『未来視』に近いのかな」
照井さんが答える。
「星煌ちゃんも、私も誰も知らない出来事。
だとしたらそれは過去や今ではなく"未来"で起こりうる結果なんじゃない?」
「あぁ、なるほど。それは確かに……」
諒も、私も納得した。
「"いつかくる出来事"を切り取って観測する」
照井さんが立ち上がってホワイトボードに図を書きはじめる。
「それがいつおこるのか。その結末は変わるのか」
キュッキュ。黒いペンが擦れる音が響く。
「そういった類の事は分からないけど、とりあえずの仮説はこうかな」
「いつかくる未来の一つを、先に観測する」
ホワイトボードに、黒い字で書かれたそれは、ほかの図より、よく目立っていた。
「俺もそう思います。星煌、さっき観測した結果のやつ、忘れるなよ」
「うん。覚えておく」
だって、私が現像したんだから、忘れるわけが無いよ。
時刻は、いつの間にか10:00になっていた
「え!? 星煌も才能あった!?」
「も〜ちょっと早く連絡してよ!!見せて見せて!!」
午後13時。早めに帰ってきた心に報告したら、自分より飛び跳ねて喜んでいる。
諒と先生は遅めの昼食を取って、私は心に抱きつかれた。
「うわ〜すっご〜い!!」
とはしゃいでいる心を横目に、(そんなに喜ばしい事だったとは……)と、逆に冷静になる。
そういえばあの二人とも、どちらも(「おめでとう」)なんて言ってくれなかった。
他人の幸運を喜べるなんて、いい人だ。
ふと、気になった。そういえば、心にも星があるなら、チャームがあるはずだ。
「心にも、あるの?才能」
興味津々にカード見つめていた顔がこっちを向く。
「あるよ! けど、忘れた!!」
「え、忘れた?」
「うん!!」
……底なしの明るさだ。自分の才能を忘れているのなんか気にしてませんよと、言われているようだった。
それにしても、忘れた?忘れてるのに、チャームは使えている?
なぜ忘れたのか……記憶喪失、或いはただ単に記憶力が悪いのか……
いや、それないか。私じゃないんだし。
「ほら、ここのチャーム欄」
そう言って心は自分の証明書をを手に取って見せてくれる。
「ちゃんと枠があるんだけど、黒塗りになっちゃってるの」
「ほんとだ……」
文字が、黒い███で隠されていた。
これは、心が忘れたから黒い塗りになっているのか。それとも、忘れさせるように黒塗りにしているのか。前後が分からなかった。
そもそも誰がやったのかすら、分からないのに。
「でも、ちょっとならわかるよ!敵と戦う時に使えるから、私のチャームは戦闘向きって事!」
「あ〜たしかに。使えるなら、いいのか……」
「そう!いいのいいの!
て、言うか『観測』ってカッコイイ!」
……本当に気にしていないようだ。
自分より私の才能の方が気になってるし、使えない訳では無いのだから。
まあ、本人がいいなら、よしとしよう。
そう言って、私は久しぶりに心とお喋りをした。
時間は、おやつタイムを忘れさせる程短かった。
――夜、18:20
「わ、これ凄い美味しい」
「まじ!? 一口ちょうだい!」
「いいよ、ほらここの部分」
「…………本当だ!私も次それ頼も!」
ご飯の時間になると、必然と会話が盛り上がる。
……まあ、一人を除き。
「ごちそうさま。じゃ、先生寝るね」
「おやすみ! 先生!」
「「おやすみ」なさい」
そう言って照井さんは2階へと階段を登る。
……早い。あまりに食べるのが早すぎる。
早食いでもこんなすぐ食えねぇよ。一口で食ってんのか?とツッコミたくなる現象。
でももう慣れた。こういうのは適応力が大事だから。
そんな事を思いながらもう一口齧る。昨日とは違うお店のハンバーガーだった。
「は、あぁ〜」
自室で大きな欠伸をする。なんだか今日……いや、昨日の夜……は、怒涛の一日だった。
疲れからか興奮からか知らないが、今横になれば直ぐに寝れそうな気がした。
まあ、無理もない。むしろ、今までこんな馴染んでた方がおかしかったのだ。
ここは、"違う世界線"
ほかの世界も、行けるのだろうか……
まあ、またあの穴に入るのはごめんだから、私にはもう無理だろう。
日記を閉じて、席を立つ。
静かに、眠りに入る。
……
『お前は、何をしたいのか?』だって?
今は、ただ協力してるだけ。行くあても無いし、帰れもしないから。
才能もわかった。委員会にも所属して、そこそこ馴染み始めた。
ただ、目標がない。わたしは、隠蔽のために連れてこられて、ここにいる。
私はこの日記を、なぜ書いている?
「そんなの、わたしが聞きたいよ」
心の中でつぶやいた一文は、誰にも聞かれることなく闇へ消えていった。
そしてそんなことよりも、自信が才能を手に入れた喜びを、噛み締めていたかった。
記入 記録 : 星煌 ?
Q 諒くんの万能は、本当になんでもできるの?
A たぶん!この前、それと一言一句全く同じこと聞いたら、皿回しをやってくれたよ!足で!
回答 : 心




