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無題/日記  作者: 岸 星煌
二章『絶対的な権力と、逆らう事の出来ない愛について』
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Log_51


時空間調査委員会一行は、つい最近訪れたばかりの建物に、再び足を踏み入れている。

理由も前と同じである。彼らは会議をするために、ここに来た。

「またすぐに来る事になるとはな」

「ほんとだよね」

二人後ろを歩く星煌と諒は、ダルそうな口調で愚痴をこぼす。

どこか面倒くさそうな表情をしているのには理由がある。この二人を含めた四人は早朝からそこそこ大きい穴の対処をし、その足でここまで来たのである。


「前と同じ会議室なの? 先生」

比較的体力のある心と、戦闘にほぼ参加していない照井。二人は軽快な足取りで目的地へと向かう。

「ううん。今日は連盟の人達も来るからちょっと良い所」

「おぉ!」

その言葉に心は目を輝かせる。

もしかしたら長いソファーに座り、優雅に紅茶を飲むような高貴な会議になるかもしれない。美味しいお菓子は置いているのだろうかと、妄想を膨らませる。

「……お菓子は置いてないからね?」

普段とは明らかに違う雰囲気を感じ取った照井は、心の頭にある妄想の誤解を解くように言った。


「じゃあ具体的に良いって何ですか」

気になった諒が照井の背後から問う。

「部屋が広い!」

「へぇ、良いですね。前回、入ってくる人の割に部屋が狭かったですもん」

諒は前回行われた定期会議の過密度を思い返す。人は多いくせに部屋はやけに狭く、四人いるのも相まってさらに狭かった記憶があった。


「ちなみに今回は前回より来る人少ないよ」

「…………」

上がった諒のテンションが基本の値を下回る。

「諒、何か言いたげな顔しても無駄だよ」

「どうして、こう……はぁ、まぁ良い。さっさと行くぞ」

「いたい! なんで!?」

諒は八つ当たりで心の足を蹴り、一行はそのまま建物の中へと入っていった。




一方、会議室にて。



足を組み、指先で机を叩く。

室内なのにハットを被ったままなその人物は、針の音に気を付けながらその時を待つ。

「なぜ我が連盟が参加せねばならんのだ……」

「まぁまぁ副連盟長。うちは時間がありますしいいじゃないですか」

目を閉じた、所謂"糸目"とされる人物は、隣に座る『決闘連盟』の副連盟長を気遣う。


「それとこれとは話が違う! 大体、『争いが多いから来て』などという理由! 警備の職務怠慢であろう!」

「まぁまぁ。美味しい紅茶がありますよ」

どこからか持ってきた器具で糸目の人物は華麗に紅茶を作り上げる。

「貴方も、勝手に紅茶を淹れるでない。どこから持ってきたんだその道具は」

「まぁまぁ。ほら、リモートの皆さんもそう言ってますよ」

会議用のパソコンから雪崩出るコメントは『まぁまぁ』という文言で溢れかえっていた。




一方、『公安連盟』の席では。



「はぁーマジでダリィー。もう辞めようかなーこの仕事」

数ある人物の中から会議に引っ張りだされて憂鬱な、ハーフアップをした巡査部長佐藤 錬(さとう れん)は、これから起こるであろう会議に頭を悩ませる。

「辞めてどこ行くん」

はるばる関西からやってきた金髪刑事坂田 敦(さかた あつし)は懐で暖めておいたせんべいを取り出す。

「仕事が楽な所ー」

「ほな宛先は無いな」

「えぇ? 図書委員会とか楽そーじゃね」

巡査部長は公立の図書館で働く可愛い女の子達を思い浮かべる。


「あの人ら、毎日全部の本棚を掃除しとるらしいで」

「見た目に削ぐわず肉体労働! はー辞めとこ」

巡査部長は更に憂鬱になり、その場で机に突っ伏した。

「賢明な判断ですね」

捜査二課の新人巡査、白石 雲雀(しらいし ひばり)は隣の席からせんべいを盗み、それに合うお茶を淹れようと水を沸かした。



「……君は何しとるん?」

刑事は一人で黙々と作業をする、鍛造委員会副委員長の神崎に話し掛ける。

「僕ですか?まだ時間があるんで……プラモデル作ってました」

「プラモデル? なんのやつや?」

とてもこの場でする作業ではないだろうと、坂田は少々驚いたが、直ぐに興味はプラモデルへと移る。


「じゃーん。見てくださいよコレ、カッコ良いでしょう。"寿司"」

いくらだ。

「おぉ! ごっつええ感じやん!」

「皿の上に乗せたら走ります」

「絶妙にダサくてええな!」

「ですよね」

二人は良い笑顔で会話を続ける。互いに、どこか抜けている所がある為、こんな雰囲気トークとなってしまうのだろう。


「てか、自分一人なん?」

「はい。自分だけです。ほんとはもう一人居たんですけど、まあ、サボりです」

神崎は本来ならここに居るはずだった設計士を思い浮かべる。彼は今頃何をしているのだろうか。

「じゃあしゃあないな」

「しゃあないですよね」

気にしても無駄だと気付いた神崎は手渡されたせんべいをありがたく受け取り、手袋を外してそれを食べ始めた。



ガチャリと、扉の開く音がする。

今日はどうやら、時間を厳守する人が多いみたいだ。

「おはよーございまー」

「挨拶するならしっかりしてください」

どうやら、時空間調査委員会が最後のようだ。最初に入室した照井はその場にいる全員と目が合った。


そして、一人の人物が声を上げる。

「あ、逃げた人」

「逃げた? ……あぁ! 君は公安の?」

照井は直ぐに言葉の訳を理解し、その人物の席へ行く。

「はい。あの時後ろ追ってた車です」

先程からせんべいを盗みチャームで沸かしたお茶を飲んでいるこの男、白石はLog_38の際、藤村の隣に座っていた運転手だ。


「いやぁごめんね? 反省してるから許して欲しいな」

「私は良いですけど、事後処理少々がアレで……そことあそこの委員会が怒ってましたよ」

白石は二組の委員会に指さす。


「資格取ったのはこの時の為だと再認識させられました」

せんべいを口の中で砕きながら神崎は言う。

「う、うぅ……なんで、あんな交通整備を……」

机に突っ伏したままの天音はその場でプルプルと震え始め、か細い声で言う。

「あれ超だるかったんでもうしないでくださいね」

そう言いながら沸かしたお茶を飲み、白石は隣の坂田からせんべいをもう一枚盗んだ。

「はーい」

「紅茶もお菓子もある……」

「いいから席に着くぞ」

アフタヌーンティーを楽しむ向かいの席と、和を慈しむ席を交互に見て心は羨ましそうに言った。




「あら、みんな揃ってるのね」

開きっぱなしのドアからもう一人、会議長である管が顔を出す。

「こんにちは……」

天音がのそのそと起き上がり、静かに挨拶をする。

「はい。こんにちは、天音さん」

管もその挨拶に返事をし、挨拶をしない他の人物を横目で見る。一応、星煌だけは顔だけぺこりと下げているが。


「揃ってるなら、もう始めて良いかしら」

書類を確認し、管は教壇の上に立つ。

「賛成でーす」

「さっさと終わらせて帰りましょ」

「そうね」

その言葉を皮切りに、各々は会議の準備を整える。

先程までの和やかな雰囲気は既に捨てられ、場に残ったのは『早く会議を終わらせたい』という気持ちが一体化した空気のみ。




キュッキュと、管はホワイトボードに会議の内容を記述し、終える。くるりと前を向いた後、少し咳払いをした。

「それでは、『第三十九回約束記念日祭り』に向けての会議を始めます」

「『今日も我らが、正しい道を歩めますように』」


「はーい。最初に質問いいですか」

「どうぞ」

管は我先に手を挙げた佐藤の発言を許可する。内側に赤色のインナーカラーが入り、比較的背の高い彼は立ち上がり、堂々と宣言する。



「何で俺た「なんで我らも巻き込まれている」……」

だが、その発言は足を組み座る副連盟長に横取りされてしまった。



「はぁ……発言を許可したのは佐藤さんだけよ」

ため息を誤魔化すためにメガネのフレームを押し上げ、管は凪葉に警告する。

「すまん。怒りと焦りでつい本音が」

当の本人は悪気が無さそうに答える。


決闘連盟副連盟長である彼女、凪葉 臣(なぎば しん)。

スタンスは敵にも味方にも厳しく。そのため高圧的な態度を取る場合が多い。ちなみに、長期戦の方が得意。


「……あなたの、そういう正直な所は嫌いじゃないわ。でも場を弁えなさい? 一応副連盟長でしょう」

「副連盟長だからこそだ。まあ、その無礼、今回は見逃してやろう」

「それはこっちのセリフよ」

同じ連盟、同じ副連盟長立場なのにも関わらずその態度を取る凪葉に、管は一周回って心配になってしまった。



「それで、今回協力してもらう事になった『決闘連盟』『鍛造委員会建築支部』『時空間調査委員会』のみんな。連盟を代表して、心よりお礼申し上げるわ」

そう言って管が一礼し、清々しい笑顔を見せる。人が増えたのがよっぽど嬉しいのだろう。


「僕たち指差しで決まりましたよね?」

「それに関して文句を言いたいのなら連盟長に言ってちょうだい」

珍しく首を突っ込んでくる照井に塩対応をかまし、表情筋を元に戻す。


「全くだ。藍良、スコーンは無いのか?」

「毒が入っているかもしれないと、入口で没収されてしまいました」

臣の直属の部下である、糸目もとい柊(ひいらぎ)藍良(あいら)はわざとらしく悲しむ。

「なんだと? 手作りの品を取り上げるとは、全く常識のない奴らだ」

「はぁ。常識が無いのはどっちかしらね」

会議中にも関わらず優雅にティータイムを楽しむこの連盟に、管は今度こそ呆れてため息をもらした。


「建築委員会は一人だけ?」

「はい。全員連れてきたらうるさいし狭いんで」

そう言って神崎は音量ボタンを押し、切っていた音を一段階のみ上げる。


『そんなことねぇっすよ!!!!!!』『俺たちやれます!!やらせてください!!』『俺だって』


「……見てもらったらわかる通りです」

途端に溢れ出る熱血少年達の声。神崎はそれを途中で切り、管へと視線をやる。

「良い判断ね」

その意志を受け取った管は頷く。

「ます」

『ありがとうございます』を略しすぎているが、彼の環境ではそれが普通なのだろう。



「そして、例年通り『交通委員会』と『公安委員会』も」

「……、……」

天音はその場で小刻みに震え出す。何か言おうとしても、口からは呼吸音しか出てこない。

「ついに、この日が……来てしまった……」

公安連盟一行は明らかに暗い雰囲気を漂わせる。錬は拳を握りしめ、坂田は愛想笑いを決め込む。白石は諦めたように空を眺めた。


「俺ちょっと体調悪いんで早退します」

佐藤は勢いよく席を立ち、迷う事無く出口へ向かう。

「ちょっとやめてください、僕たち置いて行く気ですか?」

白石はそれを追いかけ、閉まっている扉をこじ開けようとする佐藤の腕を掴む。



「離せ!! 俺は実家に帰るんだあああああああ!!!!!」

扉の音がチャガチャと鳴り響き、人は叫ぶ。未熟者は怯え、達観者は面白がって動画を回す。


「はぁ……『―――』」





「連盟長はどうしたのかしら」

「事件対応です」

「分かりました。座ってちょうだい」

「はーい座りまーす」

すっかり大人しくなった佐藤は静かに席に座り反省する。

「何をやっとるん自分らは」

一連の流れを見た他は呆れて声も出ないだろう。

カオス状態へと変貌してしまった会議室に耐え切れなくなった管は、自身のチャームで場を収める事にした。



「……では、今回開催される祭りの概要を説明するわ」

落ち着いた会議室。管は改めて資料を取りだし、脱線していた話が本題へと戻る。



「まず、開催地の中心はは東京。流石に一都だと面積が足りないので、追加で神奈川県北部、それと埼玉県、千葉県北西部を祭都県として扱うわ」

おおよそ関東南部。そこまで範囲を広げないど、人の密度が尋常じゃない程過密になってしまう。


「会場は今言った都市全域。建物の中も屋台があり、公園、商店街、学校からもそれぞれ許可を得ているわ」

「開催日時は八月九日土曜日。入場開始は午前十時から」

「今日から五日後ね。既に屋台の公募などは締め切っているわ」


「はい。今年は、どの程度屋台あるのでしょうか?」

柊がカップから手を離し、真っ直ぐ挙手をして言う。

「住民からクレームが来る程度ね」

「それ去年も言ってましたよねー」

似たような屋台がただひたすらに続き、それに伴って人も多くかる。祭りに意欲のない住民からしたらとんだ迷惑だ。


「推定予想人数は人口の六割。……およそ『6200万人』ね」

その言葉に全員の表情が一気に強ばる。この世界では、こんな大規模な祭りを毎年行っているのだ。


全国から人が集まり、交通網はごっちゃごちゃ。何をやってもクレームは殺到し、少し目を離すと各地で乱闘。

人口の六割が集まるので仕方が無いとも言えるが、なぜこんな祭りを作ったのかと毎年疑問に思う。


星煌は観測した風景を思い出し、肝を冷やした。今すぐにでも逃げ出したいが、彼等はそれを許してはくれないだろう。


「はーやっば。人が足りないどころじゃないっすよほんま」

「えぇ。老若男女全ての人、それに休みの委員会、連盟も参加すると思うわ」

皆の意識が祭りに集中するため、活動する意味の無い委員会も存在する。例えば図書委員会や鍛造委員会、休日に開催されるため教育委員会なども休みになるだろう。


「せめて開催期間を伸ばすとかさぁー、それか――」

「それは返って負担が多くなるし、最終日という概念を作ったら――」

「では、いっそ廃止というのはどうだ?」

「あなたねぇ、それをしたら―――」

挙手制が意味をなしていない。そこかしこから意見が飛び交い、より良くしようと、より楽にしようと頭を捻る。



一方時空間調査委員会は何の意見も出さずに、ただ飛び交う話を聞くだけ。

そんな事よりも、ただひたすらに顔を伏して寝る照井の話に夢中であった。

「ねぇ、先生寝てるよ? 起こす?」

心はテーブルに顔を伏せ、照井に目線を合わせる。その体勢で何故モノクルが壊れないのか。彼女は不思議でしょうがなかった。

「いつも寝てるだろ。今更起こしてなんの得がある」

諒は会議に飽きたのか、スマホを手に取りSNSを閲覧している。

星煌は両者どちらにも意識を向けず、ただ流れる言葉を頭の中で受け流すのみ。


「やーい過眠症」

「バカ」

「寝坊助ー」

「アホ」

「んな事しても起きないよ……」

隣から溢れ出る罵声に、無視出来なくなった星煌は2人を宥める。



「……任せてちょうだい」

「え?」

思わぬ人物が声を上げる。

声のする方を向くと、会議を進めていたはずの管は知らぬ間にペンを持っており、寝ている照井の頭に狙いを定めていた。




「!? 、 いっっっったぁ……」

ペンから出たとは思えない鈍い音。そと共に、夢の中に居た照井が目を覚ます。彼は反射的に頭を抑え、情けない声を出した。


「貴方ねぇ、参加するの初めてでしょう? 顧問ならしっかりと話を聴きなさい」

豪速球を繰り出した管は言う。大きく振りかぶってからの、命中。彼女が野球をやるなら、ポジションは絶対にピッチャーであろう。

「えぇー……、はぁーい。諒くん、代わりにメモとって」

「先生が起きたら検討します」

「もぉーしょうがないなぁ」

その言葉に照井はようやく観念し、ゆっくりと体を起こした。



「では、続きを説明するわね」

すっかり逸れていた話題も、ある意味照井のお陰で元に戻ったと言えよう。



「みんなに行って欲しいのは、祭り全体の警備。争いが起きたら仲裁に入り、トラブルが起きたら解決する」

「多少怪我人が出ても構わないわ。その辺は、救護委員会が何とかしてくれるでしょう」

全国民の約六割が訪れる中で、全ての警備をしなければならない。


「質問を良いか?」

「えぇ、どうぞ」

次はしっかりと手を挙げた凪葉の意に従い、管は発言を許可する。

「もし争いが発生し、仲裁する場合。どの程度まで危害を加えて良いのだ?」

元いた世界だとまず出ないであろう質問に星煌は目を見開く。だが、周りの人間は当たり前のように落ち着いて、驚く星煌とは対照的であった。



管は咳払いをし、少し考えたあとこう発言する。


「全治二ヶ月まで」

平然とした顔でキッパリと言った。


「承った」

「はーい」

それに周りの人間は何事も無かったかのように、平然と頷いて納得した。

この世界の殺伐具合。星煌が慣れようと試みても、慣れない。いや、きっと慣れてはいけないのだろう。



「警備エリアを全四つに分けるわ。まとまってもらった方が、きっと効率的に動けると判断したわ」

管はホワイトボードに各県を書き、エリアを囲むようにいくつかの丸を書いた。


「まず、千葉県西部を建築支部に」

「わかりました」

こういった警備も祭りに主催側で参戦するのも建築支部は初めてなので、比較的区域が小さいここに置かれたのは、両者どちらともにありがたいと感じる選択だろう。

『よしオメェら!! 今こそ俺らの魂を見せ』

神崎は静かにミュートボタンを押した。


「埼玉県を決闘連盟に」

「はい。任されました」

柊は二杯目の紅茶を淹れながら応える。


「神奈川県北部を時空間調査委員会に」

「はぁーい」

果たして四人で何とかなるのか。きっとならないが、何かあったら責任は全て人事管理連盟に押し付ければ良いと、照井と諒は考えた。



「そして最後に東京。ここは中心部なのも相まって、毎年警備が追いついていない」

「主に公安連盟に担当してもらうけど、他の人達も応援要請を受けたり、近くに行けるようだったら行ってあげて」

そのために公安連盟を囲うように委員会らを配置したのだろう。

「はい。善処します」

諒は頼まれたメモを取りながら最低限頑張りますの意を込めて応える。

「助かるー」

これから降りかかる仕事。事後処理。書類作成。佐藤は鬱気味になりながら感謝を述べた。


「そして、まぁ……いつも通り、ボランティアに環境委員会、取材に放送委員会が来ると思うわ。最悪そっちを頼りなさい」

祭りにゴミは付き物だが、環境委員会が入ればそんなものは無いに等しい。

毎年片付けも手伝ってくれるので、人事管理連盟はこの委員会を敢えて主催側に加えず、無償で手伝って貰う事で様々な経費の削減を実現している。

「機材ぶっ壊しても良いんすか?」

「修理費はこっちが負担するわ」

「うぇーい」

毎年デカイ機材をわらわらと引き連れてリポートする放送委員会。戦いは期待していないが、最悪中継で全国に恥を晒せば良いと白石は考えた。


「あぁ、あなた達はいつも通り交通警備をお願いね」

「はぃ……」

業務内容は普段と変わらない。ただちょっと、ちょっと交通量が多くなるだけ。天音は心の内でそう踏ん張りをつけた。


「だいたい今年もいつも通りやんな」

「えぇ。それに加えて去年より人数が増えたから、より楽になるはずよ」

時空間調査委員会とは違い、各委員会、連盟にはそこそこの人数が所属している。

「へ、へへぇ……嬉しいです……」

「交通の方は分からないけどね」

「へぁぇ……」

天音は情けない声を出した。人は割といるはずのに仕事量が減らない謎の仕事である。



「今日から五日後、祭りの前日には会場に集まってもらいます。泊まり込みになる委員会は後で申請の方をお願いするわ」

管が皆に書類を配り、その後に様々な注意事項を説明した。


照井は書類に落書きをし、心は諒と指スマをした。

決闘連盟は紅茶を嗜みつつ話を聞き、天音は眠気と葛藤した。

公安連盟は意外にも真面目に意見を飛ばし、神崎はチャットをオフにした。




余った書類を机にトントンと叩き、管は終わりの合図を告げる。


「会議はこれで終わりよ。後は各々準備をしておくよ」「おい、飯行こうぜー飯! 俺腹減った!」


「……元気があって何よりです」

途端に別の話題で盛り上がる公安連盟を横目に、管はため息を着きつつも掃除を開始した。



「何食うんですか」

「んなもんお好」「駅前のラーメン一択!!!!」

関西の魂が佐藤の声によりあっさりと否定される。

「良いですね、よしビリが奢りで」

そう言って白石は駆け出し、逃げるように目的地へ向かった。

「だーっずるい!」

「ちょ!逃げ足だけは速いのなんなん!?」

「くそーっ、無駄にスペックだけは良いんだから!」

出遅れた二人はビリにならないために素早く走る白石の後を追いかけた。



「と、言うことらしいです」

神崎は人数分の書類を机に乗せ、ミュートを解除した。


「『てめぇら祭りだ!! 今こそ、俺らの魂を見せつける時だぞ!!!!』」

「『だ~=# @ ☆=あ〜,+ー!』」

音量は最低の筈なのに、溢れ出る熱血男達の大声。


「……」


「ちょっと神崎くん? パソコン置いてってるわよ!」

書類だけを両手に抱えて帰ろうとする神崎。管は忘れ物を届けようとした。


天音は既にその場から姿を消している。これが現代の忍者であるのかもしれない。


「騒がしい奴らだ、まったく」

「まぁまぁ。はい、出来たてのお紅茶ですよ」

少し気分の曲がった凪葉を窘めるように、柊は良い茶葉を使った紅茶を淹れた。

「頂こう」

「貴方達も、それ飲み終わったら帰りなさい……」

忘れ物を届け終わった管は、会議が終わってもそこに居座ろうとする二人に忠告した。



「先生帰ろー」

やっと会議が終わり、伸びをした心は落書きをしている照井へと催促する。

「帰るかぁ」

「話、聞いてました?」

起きてはいたがどこか上の空だった照井を心配し、諒は会議のメモを渡す。



「んー? とりあえず折ればいいんでしょ? 骨」

そして飛び出る、過激な発言。

「はい」

「じゃあ大丈夫でしょ」

間違ってはいない。折る所にもよるが、基本的には全治二ヶ月以内である。


「帰りますか」

「かーえろかえろ〜」

「ねぇ今日何食べる? 私駅前の――」

そう言って四人はわらわらと会議室の外へ出る。

「……」

倫理観が大分欠如している。星煌はそう思ったが、同時にそれ今更過ぎる事に気付いた。

彼女は百年経ってもそれに慣れないだろう。諦めて、静かに三人の後を追った。






記録:記入 星煌

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