表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無題/日記  作者: 岸 星煌
一章『その言葉の真■と確かな芸術について』
4/21

Log_3

頭の中で小さな物語が紡がれる

登場人物は全員私で

その物語は、ただの日常である。


思考するのが好きだ。

議題はなんでも良い。漫画の考察、給料計算、脳内会議。


ただ……

「……あれ、何考えてたんだっけ」

壊滅的に、記憶力が悪いだけ。



不具合が無い?それはおかしいね

違和感を感じる日常_│



side 星煌


ジリリリリと、スマホから機械音が鳴り響く

カーテンの隙間から漏れ出る光と、横から鳴り響く不快な音で、目を覚ました

目に映った天井が見慣れていないのは、私が謎の地に連れ去られているのが現実だと教えてくれるには十分な証拠だった。


ここに来て大体一日とちょっと。

昨日は何もない、素晴らしい一日だった、と日記をつけるのが丸いくらいの、特に何もない……いや、私は証拠隠滅のため連れ去られたのだが。

まぁとにかく、そんな事を忘れるくらいには私の頭の中は眠い だるい 起きたくない その感情……いや、人間の本能ででいっぱいであった。


どうやら時空間なんたら委員会のメンバーはここで暮らしているらしく、昨日私は無駄にでかいくせに何も無い空き部屋を与えられた。

部屋の壁は白く、床はフローリングになっている、一般的な部屋、という感じだ。外見は学校っぽいのに

何も無い......と言っても、そこには木製の長机と椅子、それと申し訳程度の収納スペースが添えられていた。まぁ、ないよりマシ。というやつだ。使うかどうかはさておき、ね。


昨日は疲れからか、押し入れから引っ張りだした古い敷布団にくるまってすぐに寝た記憶がある。

だから今こうして起きたくない身体と起きなければならない頭が葛藤しているのである。そんな身体を気合いで起こす。

やはり人間、布団の力に抗うのは難しい……けど、やらなきゃいけないこともある。

その勢いのままドアを開け、部屋から出る。ドアノブがひんやりしている。少し目が覚めた。


まだ、時刻は6:45

朝と呼ぶのにふさわしい時間帯だ。

健康的に睡眠をとっているのか、それとも夜更かしからか、人気配は無い。夜更かしと長すぎる睡眠は子供の特権であるからね。まあ、生活音が聞こえないだけで実際は起きているのかもしれないが……

隣の心さんの部屋を通り過ぎ、顔を洗うために下にある洗面所へ向かう

私が与えられた自室は二階で、隣に心さん、諒さんの部屋と続き、その更に上に穹さんの部屋がある。

(寝る時二階まで行くの、めんどくさいな……)

……そんな問わず語り/脳内会話を永遠と繰り返えせるのは、もう目が覚めている証拠だった。


無駄に幅の狭い階段を下り、リビングを抜けたた先はもう目的地である。

一般的な家に付属している、何の変哲もない白い洗面台。

冷たい銀の蛇口は、ドアノブで冷えた手に追い討ちを加えるようだ。冷たい水を貯め、顔に浴びせる。髪まで濡れるのは、いつもの事だ。

感想は特にない。ただの日課だから。

強いて言うなら、蛇口を捻るタイプだった。

顔を拭き終わったら、後は皆が起きてくるのを待つだけだ。

なんせ、昨日は身の上話をしただけで、重要なことは何一つ話さなかったから、何をしていいのか分からないのである。


洗面所からリビングに移動し、ソファーに腰掛け、ぼーっとする。


......壁にかかった当番表を見て思い出した。そういえば、昨日諒から聞いた話によれば、家事は当番が決まっている、と。

食事は穹さん、買い物や洗濯を心さん、そしてゴミ出しや掃除機を諒さんがやっている、だっけか。

......まぁ、そんなことを思い出したが、あいにく私、は善の精神に駆られて何かをするような人間ではない。

今日が火曜だからと燃えるゴミをまとめて出してあげるような、ね。


「なんだ。もう起きてたのか」

ガチャリ。玄関の開く音がした。

どうやらもう諒さんはゴミ出しに行っていたらしい。(私が率先してやる必要もなかったな)

その気持ちは、少しの後悔と、安心感だった。


「諒さんも、朝はやいですね。ゴミ出しですか?」

「あぁ。面倒なのは、先に片付けた方がいい」

そう歩きながら向かいのソファーに座る。

「名前、呼び捨てでいいぞ。同い年だろ。あと敬語も外せ」

彼は指をさして私へと言ってきた。命令形だが、内容は優しいものだった。

「あ、あぁ。わかったよ。りょ……し、篠原」

「なんでそうなる……諒でいいから、わざわざ言わせんな。こんなこと」

「すみま……ご、めん」

名前呼びだと馴れ馴れしいかな、と思ったが、そんなことは気にしてなかった。


「……」

「……」

……会話が続かない。切り出すカードも、盛り上げる人も、気遣いの心も、ない。

普段は沈黙状態になっても気にしないが、それはあくまで知り合いや友達だけ。相手は出会って一日で屋根の下で暮らすことになった、ほぼ赤の他人だ。

「おい」

どうしたらいいか、とダラダラ汗を流して緊張してることに気づいたのか、あるいはただの気まぐれか。相手から話してくれた。

「は、はい」

「今、暇だろ?昨日は何も話せずに終わっちまったから。少し説明したいことがある」

「……助かります。ありがとう」

時刻は7:06 おはようと会話を始めるには、丁度いい時刻だった。


「昨日、俺達が所属しているのが時空間調査委員会だって話をしたよな?」

「その肝心な活動内容を話してなかった。」

たしかに。だから朝何をしようか迷ってたのか、私は。

自覚するのが遅くなった。あの日はとりあえず流されるまま過ごして、聞きたいことはほとんど聞けていなかった。


「分かりやすく言えば、あの穴についてだ。

お前、あの穴を通ってきただろ?」

「はい。心さんに運ばれました」

まあ、出来ればもう二度と通りたくないが。

「あの穴についてわかっているのは、正直ない」

「ないって、何も?」

「あぁ、何もだ。穴は、現れる時間は不規則で、大きさも違う。強いて言うなら、出てくる個数は基本的に1つ。あと……あの穴からは……そうだな、お前、ゲームはやるか?」

「まあ、人並み程度には……」

「よし。あの穴からは、敵が出てくる」

どうして急にゲームかとも思ったが、説明を聞けば、こちらの方が数倍分かりやすい。うん……


「……敵?」

「あぁ。アンデット 兵士 スライムといった魔物……そういえば、ロボットの時もあったな」

「つまり。時空間調査委員会の活動内容は、そういった敵を討伐。そして、穴の調査だ」

「あぁ、そうだ。穴はなるべく民間人にバレないよう…………どうした?私はいかにも絶望していますみたいな顔をして」

諒が私の顔を事細かに説明してくれる。お陰で皮を被るのも諦められた。


「…………た」


「終わった」

岸 星煌死亡RTAのスタートか?敵と戦う、って、こっちは体育の評定3のたかがの一般人だぞ?

筋力も平均以下。もちろん銃なんておもちゃでも使ったことがないし、剣や刀なんて武士じゃないんだから。新聞紙での代用ならあるけと……


「お前、もしかして戦うのとか無理?」

(「無理に決まってるだろ! はいどーぞ分かりましたで敵をバカスカ倒せるように見えるか!?」)

と言ってやりたい気持ちをぐっとこらえ、「はい。私の世界ではそういうの犯罪なんで」と答える。


「まあ、私のことは肉盾だと思ってもらって」

「いや、そんな外道な扱い、さすがにしないぞ……」

「悪いな、勝手な思い込みしてた。なんせ、俺らも何も分かってない。今は俺らで捌ききれてるが、この先民間人にも被害が出たら、と考えたら……勝手に期待してた。すまん」

「あぁ、いいんです。私こそなにもお役にたてず……」


言葉に棘があるような気もする、そんな人なんだなと思い込んでいたが、どうやら、ちゃんと人を思える優しい人らしい。

(……でも、本当に何も出来ないんだよな。手助けしてあげたいけど、武力関係はどうにも……)


「あの、そっち(討伐)はお力になれませんが、敵の解析とかなら、もしかしたら……」

「敵の?どうやって?」

「まあ簡単だけど、諒の後ろから写真撮ってプロファイリングして、なにか癖がないかとか観察して考察したり……まあ、守ってもらう前提の話ですけど」

「あぁ、なるほど。確かに、そっちの方には力入れたことなかったな。

心は倒し終えたらすぐ遊びに戻るし、穹先生は見てるだけで何もしないし……」

「随分と楽観的だ……」

「だろ?でも良かった。星煌みたいな協力的な奴が来てくれて」

名前呼びになっている。それぐらいしか力になれないが、無能だから家にいとけ、なんて言われなくて。


「じゃあ、ひとまずはそれで。写真は……あぁ、そうだ。昨日倉庫から見つけた、ノートがあるんだ。よかったら使ってくれ」

そういって五冊、ノートが棚から出てきた。

「ありがと、余ったら日記にでもするよ」

……日記なんて、付けた事ないけど。

まあ、この機に初めてみてもいいかもしれない。


「そうしてくれ。さっきも言ったが、穴は出てくる時間が不規則だ。一日に何個も出てくる日もあれば、一週間何も無い日もある。

今の所、出現した場合は連盟からのアラートがある。……この証明書に」

「え、そんな機能も?」

「そうだ。ビービーという警報とともに、急に震え出す。基本、ポケットに入れるかなにかした方が良いかもな。」

本当に不思議だ、この証明書……まあ、私のは不正に作られたやつだから、アラートなんて来ないと思うが。

「んで、そうして暇な日は自由にしてもらって構わない。もちろん、アラートが鳴ったら集まってもらうが」

「心はどっかに出かけてるし、穹先生はよく釣りに行ってる」

「へぇ〜……諒は?」

「まぁ、本読んだり、色々……外に出ることは少ないかな」

「なるほど。まあ、暇ってことね」

「否定はしない」

(もっと寝とけばよかったな……早起きはできるけど、好きな訳じゃないし)


そんな会話を続け、目を冷めてきたところでハッとする。

委員会のこと以外にも、知らないことが多すぎる。

なんせここは一応異世界だ。自分が適応しすぎているだけで、普通は情報収集をするものだ。


珍しく自主性を持ち、自分から問いかける。

「ねぇ、諒『ジリジリジリ!!』

……」


時刻は、7:30になっていた。

残念ながら、聞きたかったことはその音が消し去ってしまった。


「最低限は自分の身を守れるように、だ」

その発言は、先程から数分しか経っていなかった。

「いつあの穴が出てくるか分からない。だから、最低限の武器を買いに行くぞ」

こういうのは早ければ早いほどいいんだ。と、ひとりごとを言いながら支度をしている諒。

その姿になんだかデジャヴを覚える。不思議だ、彼の姿は数回しか見たことがないのに。


そもそも、武器はどこで買える?そういうの持ち歩いて、法律上大丈夫なの?とも思ったが、敵と戦うんだ。

そこら辺は、何かあるのだろう。と、聞くのはやめにした。

きっと、この世界のならでは常識なのだろう。武器屋が存在するのも、携帯しているのも。


「ええっと、お金は持って言った方がいい?」

「いや、先生の金があるから平気だ」

大丈夫らしい。こういうのって、結構値段張るんじゃないか?

(まあ、いいか)


「行ってきます。」

そうして出た2度目の外は、前よりも緊張しなかった。


――大通り

家の周りは草木しか無かったのに、少し歩いたら街の方に出た。

決して都会とは言えないが、車が走り、自転車が通り、人が歩いていた。

「そこの信号を右折したらすぐだ。色んな所に店を構えてるから、見つけやすいんだ」

だから、なんの店なのか教えて欲しかったけど、ここまで来たらもう見た方が早いから

「へぇ、有名なんですね」

とだけ返しておいた。



――鍛造委員会 神奈川県__店


「やあ、久しぶり! 何か買うかい?」

「そのつもりで来ました。今日は造ってないんですね。いっつも表にいないのに」

「ついさっきいいものが出来たんだ。今は休憩タイム、というやつでね」

そう話し込んでる2人を横目に、店内を見渡す。


眩しいほどの金属でいっぱいだった。刀、剣、ナイフ等、刃が付いたもので溢れ返っていた。

中には自分の背よりも高くて大きい大剣もあり、値段どうこうより扱える人がいないのでは?と、心配になった。


「やあ!キミが星煌ちゃん?」

「!?は、はい」

そうしていたら突然、諒と話してた相手に話しかけられた。

「うちの宝物、沢山見てくれてありがと」

「話は聞いたよ?武器が欲しいんだって?

そしたら、うちを頼るのは大正解! オマケも付けてあげちゃう!」

「あ、ありがとうございます……」

左手をピースして堂々紹介してくれる。随分情熱的な人だ。武器を宝物、と言っている辺り、相当大切にしているのだろう。さっき諒が言ってた言葉的にも、きっと手作りなんだろうな。


「私の名前は名河 染(ナガワ セン)よろしくね!」

「よろしくお願いします。名河さん」

手を差し出されたので、それに答えるよう、固い握手をした。

ツナギを着た、背の高い女の人。髪がベリーショートでかっこいいな。

「なあ、どう思う?こいつでも扱えそうなやつ。ある?」

「う〜ん。まあ、力が強くないんでしょ?なら、"振る"よりは、"刺す"方がいいかもね」

そう議論しながら、染さんは私の手に何かを差し出した。

「これ、持ってみて。重いから気を付けて」

そう手に載せられたのは、20Kgと書かれたボールだった。


「、ほんとに重いですね。これ」

ペットボトルの箱より少し重い程度だろうか。何に例えたとしても、重いのには変わりなかった。少なくとも、私には。

「うん。その程度だったら持てるね。握力はあんまりって聞いたけど、持つ力がある程度あれば平気だ」

「ごめんね、急に乗せちゃって」

そう私の両手に乗ったボールを、染さんは片手で軽々持ち上げ、レジ横の物置へしまった。

刀を鍛造する人だから、力あるんだな……。

いや、それくらいは持てないと話にならないか。

「うん、じゃあこれかな」

戻ってきた染さんの手には、1つの剣が握られていた。

「あぁ、これレイピア?決闘とかで使う……」

「そう、これなら他に比べて軽いし、扱いやすい。それに細いから、刺すのにも向いてる」

そう言って手渡された白銀に輝くレイピアは、他の武器よりも輝いて見えた。


「そして何より、星煌ちゃんによく似合ってる! ほら、このシルエット完璧だと思わない?! さすがウチ、センスがいい!」

「どうだ?持ってみた感想」

一人でキャッキャ騒いでいる染さんを無視し、諒は話しかけてくる。

「うーん、想像通りかな。思ったより剣先が長かったけど」

「そうだな。でも、相手からのリーチもとりやすいし、これは持ち手は重いが剣先の方は軽いから、ある程度防御もできるかもな」

「そうね! 相手の力に対応する、ってよりかは攻撃を受け流したり、弾いたりする方がいいかも」

一通り興奮し終えたのか、また諒と会話をし始めた。私にはついていけない話題を。


突き刺す、受け流す、弾く。

よくイメージはできないけど、心に留めておこう。


……この世界の人達はみな戦闘経験に長けているのか?不思議だ。

諒は戦ってるからある……名河さんも客の立場を考えたりするからある……のか?


「いや〜助かるよ。実はそれ、全然売れなくてさ、溶かして他のに再利用しようかなって思ってたから」

そう唸っていたら、相手がまたこっちへ話題を振ってくる。

「そうなんですか?こんなかっこいいのに?」

「! うん、かっこいいのにみ〜んな買ってくれなくてさぁ!」

意外だ。こういった武器は飛ぶように売れるのかと思っていたが、そうではないらしい。


「だから、それタダでいいよ。諒くんにはいつもお世話になってるから、お礼」

「え、いいんですか!?」

「へぇ?いらない武器を処理、じゃなくて?か?」

「はあ!? 違うし!! 私は、どの武器も心の底から愛してる!!」

「冗談だ。貴方の情熱は疑ったことない」

「助かるよ、ありがとさん」

冗談とか言うんだ……じゃなくて。

本当に良い方だ。心の底から感謝を送ろう。文字通り、心の中で。



「じゃ、またなんかあったら」

「はい。グリップのおまけも、ありがとうございました」

持つのが苦手なら、常に縛っておけば良いと言われて渡された手袋とグリップ。これで巻けば完璧だと言われた。

たしかに、理にかなっている。強いて欠点をあげるとするならば、ずっと手袋をしていると手が痒くなることだ。

「いいっていいって!じゃ、二人ともまたねぇ〜」


染さんに手を振って、帰路に着く。

専用の鞘も貰って、至れり尽くせりだ。

まあ、これを実戦で使う日なんて来ない方がいいが、練習で振るう程度なら使っても大丈夫だろう。

「わざわざありがとね、諒」

「別に。死なれるのはごめんだからな。帰ったら扱い方位は教えてやるよ」

気づけばもう、お昼時になっていた。


――時空間調査委員会本部/自宅

「ただい……」

「あーーずるい!! やっぱお出かけしてたんだ!」

「抜け駆けして仲良くなるなんて!! ずるいずるいずるいずるい……」

ダッシュで玄関に来たかと思ったら、すぐに諒の肩を持ちブンブン揺らし始める心。


「別に抜け駆けはしてないし、仲良くなるためじゃない。武器の調達に行ってただけだ」

「えー!! でも行きたかった! 悔しい!」

(悔しいなんだ……悲しいとじゃなくて)

それよりもお腹がすいた、朝ごはんも食べてないし。訓練なんかする前になにか食べたい気分だ。

とりあえず貰った剣を椅子に掛け、キッチンに行く。

「ねぇ、なにかご飯ある?担当は照井さんって聞いたけど……」


……

謎の沈黙が訪れる。まさか、何もないなんて言わないよね?

「あ〜……冷蔵庫、開けてみな」

「?う、うんわかった」

そう言われ開けた冷蔵庫は

おおよそ、"食べ物"と呼ばれる物は入ってなかった。

誰かの飲みかけのジュースや、一個だけ食べられた三個入りのヨーグルトは、あったが。

「……こんな何も無いことある? 電気代の無駄でしょ。これ」

「いや〜私たち、誰も料理できないからさ! 基本先生の金で来るデリバリーか、買い溜めしてるインスタント麺しかないよ!」

「私はそれが嫌だから、基本食事は外でするんだ、経費で落ちるし。仕事判定だから」


(……落ちるんだ)

もはや出たた感想はそれしか無かった。


いや、たしかに私も昼はインスタントで済ませたり、親が忙しい時は買って帰ってきたりするけど……さすがに毎日はなかったかな。私が作る日も多かったし。

なにか作ろうとも思ったけど、食材もないし、もうここまで来たらあるのに縋った方がよかった。めんどくさいし。

そう言って私は適当な棚を開ける。

そこには大量のインスタント食品があった。

「……どれが誰のとか、ある?」

「ない」

諦めが肝心だ、と意見が透けて聞こえそうな声色で返事をしてくれた諒、ありがとう。

「じゃあ、このカップ麺貰うね」

そう言って、私はケトルのお湯を沸かし始めた。



その後は、おやつ時に諒が剣の振るい方を教えてくれた。

やっぱり剣は重くて、疲れるけど。疲労困憊の最中最後に思いっきり振るった一撃は、「中々良い」

「遠慮するな、今の、覚えておけ」

と、褒めてくれた。やっぱり態度は冷たいけど、棘が無くなった。

心も付き合ってくれた。でも、中々相性が悪い。なぜなら心は見た目に削ぐわず大剣を振るい、細かな動きを中心としたこちらを全て蹴散らす勢いできたからだ。

でも、「楽しい!」と、笑顔で言っていた。楽しそうで、なによりだった。


そんなこんなで怒涛の二日目が終了した。今日は結局穴は出現しなかった。

でも、貴重な体験ができた。継続するのは苦手だが、自分の生死を分けるかもしれないので、さすがに真面目にやることにしよう。


(今日の日記は、こんなものか)

貰ったノートを閉じる。名前の無いそのノートは、日記というよりかは、遺書に近い。

だから、書き出しを


これは、私 (キシ) 星煌(セイカ)が体験した

今のところ、8割が非現実的で、2割が現実的な

ただの日記。あるいは遺書である。


にした。名前もついでに書けるし、一石二鳥と言うやつだ。

もう深夜だ。結局夜は帰ってきた照井さんがハンバーガーを買ってきてくれた。まあ、美味しかったから良いのだが。


……

「やっぱり、覗けばするんだよね」

メッセージや呟きを投稿するSNS。閲覧はできるが、書き込もうとするとエラーが発生してしまう。

まあ、SOSも出す気ないし、異世界に来ましたなんて承認欲求もないが。


……

そういえば、やっばり街並みも気になるな。あまりにも、"既視感がありすぎる"

買ってきてくれたお店も私の世界にあるし、街に出てたアニメの広告も、なんだか見た事あるやつだった。


…………

まあ、いいや。そんな事気にしても、どうしようもないし。

みんなも、私がいた地球の話なんて、多分興味無いし。

寝よう。体のあちこちが痛い。

……もっと詳しいことを考えるのには、情報が必要だから。



side ?


「あぁ、寝た」

「でもちゃんと日記書いてくれたから、及第点かな」

次█ █████。あ██たちより先に会う必要があるから、こっちから█████を仕掛けないと。

「"穴"、出してもいいけど。

そしたら行きずらいんだよな……」


「じゃあ、俺が会いに行ってくる?」

隣の██が話しかけてくる。

「ダメ、絶対お前告白とかするだろ」

「うん! 思考だけでもこんなに美しいのに、会えたらもうそれは!」

「あ!もちろん君が一番だから安心してね」

相███ず調子のいいやつだ。


「……まあ、次に出かける時になったらついでに会いに行くよ。お前はお留守番な」


種███ ██先、だけどね。


記録 記入 : 星煌

Q星煌さんのバイト先は?

A「スーパー。最近はセルフになって、やることが無くてよかったよ」

回答 : 星煌

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ